全日病ニュース

全日病ニュース

個人情報保護法改正を受けて研修の参加意欲高まる

【報告 2017年度 個人情報保護に関するアンケート調査報告】

個人情報保護法改正を受けて研修の参加意欲高まる

個人情報漏洩保険加入が30%を超える

個人情報保護担当委員会 委員 森山 洋

 2006年より個人情報保護法認定保護団体としての活動の一環として、会員病院における個人情報保護の取組み状況を把握し、経年変化を明らかにすることを目的に実施しているアンケートを、今年度も全会員施設病院個人情報管理担当者を対象に昨年8月に配布、9月末を回答期限として行った。
 2015年度に番号法、いわゆるマイナンバー法の施行に伴い、個人情報保護法も改正され(以下、法改正)、2017年5月に完全施行された。『医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス』(2017年4月14日通知、同年5月30日適用)も出されたところである。例年通り傾向等について考察し、報告する。
【調査方法】
 2017年度は会員病院の2,504(前年度比+20)に対して、回答施設数は719(前年度比+40)、回収率は28.7%(前年度27.3%)であった。12年連続して回答頂いた施設は7(前年度28、前々年度39)であった。配布方法は2017年以降、①データ送信によるPDF ファイル送信②メール利用③郵送④ FAX としている。調査票の回収状況は、表1の通りである。
【今年度の傾向についての考察】
 昨年同様、設問1の施設情報、設問2(1)〜(4)および設問3の組織的対応に関しては注目すべき変化は見られない。昨年、新設した「設問2(5)電子カルテ・オーダリングシステムの導入状況について」の結果は、①電子カルテ・オーダリングシステム共に導入済が55.5%(前年度52.6%)、②オーダリングシステムのみ導入の施設が12.1%(前年度14.1%)と導入率に変化は見られなかった。
 情報システム関連で気になったのは以前にも指摘した「2(6)自院情報システムのセキュリティ対策について」で、いまだ、⑥の対策を実施していない施設が41(3.6%)あることである(表2)。また、「2(7)個人情報の外部持ち出し制限実施内容について」では、比較的安価で導入できる⑥プログラムによるUSB 認識によるセキュリティ(登録済のセキュリティ付USBの利用)が設問を設定した2014年度以降15%程度を維持し、あまり進展していない( 表3)。USB、USB-HD の紛失事故等が頻発している現状では、まだセキュリティ意識が低いと言わざるを得ない。
 設問4の院内研修に関する設問では変化が見られなかったが、その他自由記述欄にて研修内容として、確認テストの実施、具体的事例研究、eラーニングの実施、院内巡視等、会員病院に参考となる意見を頂いた。来年度以降選択肢として増やすことを検討したい。
 次に設問5の院外研修参加については、興味深い結果が出た。「5(1)外部研修への参加の有無」で過去5年間30%前後であった参加率が66.7%へ跳ね上がった(表4)。これはやはり法改正への対応を目的としたものであろう。
 とすると設問2の組織的対応に変化がなかったことは、法改正について一定の理解の上で(設問9(1)の結果 表5参照)、変更の必要はないと判断したと推測できる。
 「設問6(1)個人情報漏洩への対応」として、保険への加入状況では、調査開始以来20%台であった加入割合が30.5%と30%を超えた。こちらも法改正への対応の一環と考えられる。一方、設問6(2)から設問7に至る個人情報保護に関する苦情受付数や金銭補償件数、相談件数、また、「設問8 開示請求に関する回答」にも注目すべき変化は見られない。
 最後に設問10(1)以下の当委員会の活動の認知状況に関しては、(1)研修会の認知度は70%超、参加率は徐々に向上し、複数回答ではあるが、ベーシック(37.9%)とアドバンスコース(12.2%)を合わせて50.1%と初めて半数を超えた。(2)以下の当会の個人情報保護認定保護団体としての活動内容理解やホームページの規定等事例活用に変化はなかった。
【まとめ】
 毎年このアンケートを通じ、個人情報保護法に関わる認識変化や各施設での管理体制整備経過を全体傾向として掴んできた。平成29年7月の仙台における医療マネジメント学会において、本報告に基づく口述発表も行った。法改正への対応も必要であり、マイナンバー法施行による環境変化もある。
 本報告を機会に、あらためて現場レベルで当委員会の管理者養成研修会参加や本アンケート結果等を参考にし、ぜひ自院の個人情報保護管理体制を見直す機会としてほしい。
 最後になるが今回のアンケート配布前には間に合わなかったが、法改正後への実務対応の参考となるよう、当委員会委員による「医療・介護における個人情報保護Q&A 改正法の正しい理解と適切な判断のために」(じほう2017/9)」を出版したのでぜひ活用願いたい。

 

全日病ニュース2018年3月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 第749回/2011年2月15日号

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2011/110215.pdf

    2010年12月18日 ... 2012年度改定の論点に外来リハ算定要件の見直しが浮上. 医療保険における維持期
    リハのあり方も焦点に. 中医協総会. 2月2日に開催された中医協総会に、. 事務局(厚労
    省保険局 ...... オーダリングシステム電子カルテな. どの医療情報システムを使用し、
    標準. 化されたデータを取り扱う場合、診療. 報酬上十分な評価が行われることを要 .....
    示」が前年比+5.2%増加したほか、両. 群ともに「HP(Home Page)に掲載」が. 増加
    した。「HPに掲載」について両群. を比較すると、連続提出群が+8.3%と、.

  • [2] 第704回/2009年3月1日号

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2009/090301.pdf

    医療情報システム安全管理ガイドラインの第4版まとまる. レセコン、電子カルテ
    オーダリングシ. ステム等増加をたどる医療情報システ. ムの安全な運用・管理を目的と
    した安 ..... 単独型・管理型臨床研修病院が単独で以下の事項を満たすこと。 単独型・
    管理型臨床研修病院として、必要な基準についてどのように考えるか. ○診療体制 ○
    症例数. ○指導体制 ○施設及び設備. 募集定員の設定方法(たたき台). 一般的な設定
    方法. 都道府県の募集定員. の上限と調整. 前年度募集定員. 次年度募集定員. 超過分
    の調整.

  • [3] 病院のあり方に関する報告書 (2011年版)

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/2011_arikata.pdf

    前年度比 2.6%増)と更に伸び過去最高を更新. した。このうち、年金は 49.5 兆円(52.7
    %)、医 .... 導入等の有効な搬送システムの構築等包括的な. 取り組みが欠かせない。
    厳しい財政状況が予想 ...... 電子カルテオーダリングシステム. は却って医師の作業量
    と時間を増やしている面. がある。病院に来て、患者を診る時間より書類. 作成に時間を
    取られるようになっており、これ. は本末転倒である。医師は医師でなければでき. ない
    こと、医師がやるべき仕事を優先して行え. るようになっている必要がある。 医師事務
    作業 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。