全日病ニュース

全日病ニュース

価格調整の実施はオプジーボなど3品目

価格調整の実施はオプジーボなど3品目

【費用対効果評価専門部会等合同部会】本格実施に向けた議論は波乱含み

 厚生労働省は3月7日の中医協の費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会(荒井耕部会長)に、医薬品などの費用対効果評価の試行的導入の評価結果を示した。対象の13品目のうち、価格調整が行われたのは抗がん剤のオプジーボ(小野薬品工業)とカドサイラ(中外製薬)、ステントグラフトのカワスミNajuta胸部ステントグラフトシステム(川澄化学工業)の3品目であることがわかった。
 4月1日適用の医薬品や医療機器の新価格はすでに公表されている。薬価制度の抜本改革や市場実勢価格とのかい離是正により、薬価は価格改定が行われているが、今回は新たに試行的な費用対効果評価も実施された。ただ厚労省は費用対効果評価の結果について、定性的な評価だけを示し、具体的な金額は明らかにしていない。
検討過程で技術的課題が浮上
 これまでの費用対効果評価の議論は、予想外の事態の連続だった。特に、厚労省の専門組織と企業の分析結果が大きく異なり、価格変動の小さい結果を採用することにしたため、当初の想定よりも価格調整される対象品目が少なくなった。国民への「支払い意思額調査」は実施を見送った。
 3品目の結果をみると、オプジーボとカドサイラは引下げ対象、カワスミNajuta胸部ステントグラフトシステムは引上げ対象となった。今後検証作業が行われ、その結果、今回と異なる結果が出れば、2018年4月1日に遡って、価格調整が行われたと仮定し、最終的な価格調整が行われる。
 オプジーボは、QOLで調整した生存年(QALY)を延ばすのにどれだけの費用がかかるかを分析した増分費用効果比(ICER)で、異なる結果が出た。
 カドサイラは、専門組織と企業が算出したICERがどちらも「1 千万円/QALY以上」だった。一般的に、費用対効果がよいとは判断されない水準である。オプジーボもカドサイラも、QOLは大きく向上しないが、重篤な疾患で生存期間が延長するという配慮規定に該当している。
 逆に、カワスミNajuta胸部ステントグラフトシステムは異なる結果が出たが、いずれも費用対効果が高いとの結果が示されたとしている。
 合同部会では、これらの結果を踏まえ、今後の検討の方針が話し合われた。試行的実施の検証を行いつつ、本格実施の議論も同時並行で進め、2018年度中に結論を得る方針が決まっているためだ。
 しかし、費用対効果の「よい・悪い」を決める金額をどこに設定するかの材料になる「支払い意思額調査」の実施に対し、日本医師会の委員が明確に反対を表明するなど、すでに波乱含みの展開となっている。
 支払側の委員からは、「厚労省の専門組織と企業で分析結果がまた異なったら、どう対応するのか」といった懸念も出て、定量的な規準設定や、今後の議論の進め方の優先順位の明確化を求める意見が相次いだ。
 厚労省は、本格実施に向けた議論の進め方として、◇試行的実施で明らかになった「技術的課題」への対応の整理を待たずに、検討が可能なものから、順に検討を行う◇ICERの評価方法等のうち、科学的な事項については、医療経済学等に関する有識者による検討を行い、中医協の議論に活用する─との方針を示している。
東日本大震災と熊本地震の特例延長
 同日、中医協総会(田辺国昭会長)は、東日本大震災と熊本地震の診療報酬の震災特例の取扱いを決めた。対象医療機関数が減り、個別の課題が明らかになっていることから、半年ごとに延長してきた特例を今回は1年の延長とする。状況の報告はこれまで通り半年ごとに求める。
 東日本大震災の特例対象は2018年1月時点で4医療機関。熊本地震では5医療機関となっている。
 建物が全半壊し仮設の建物で診療する医療機関があるが、移転先の造成工事が終わる時期はわかっており、特例を終了できる見通しがある。一方、退院困難な患者を抱え、退院先の見通しがなく、特例を終了できない医療機関もある。厚労省は対象医療機関が減ってきたことから、個別の医療機関の状況を把握しつつ、訪問など丁寧な対応を図り、特例の解消を目指す方針だ。

 

全日病ニュース2018年4月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 費用対効果評価の医薬品7品目、医療機器5品目を決定

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160601/news04.html

    2016年6月1日 ... ... 円、「カドサイラ」の主な適応症は「HER2陽性の再発乳癌等」で、加算率は10%、
    ピーク時予想売上高は170億円となっている。ただし「オプジーボ」は、昨年12月17日に
    「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能効果が追加されており、売上額が増え
    ていくことが予想される。 医療機器は5品目で、類似機能区分比較方式が3品目、原価
    計算方式で算定が2品目となっている。 具体的には、類似機能区分比較方式では、「
    胸部大動脈瘤」が適応症の「カワスミNajuta胸部ステントグラフトシステム」( ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。