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医師偏在対策や働き方改革で対応方針示す

医師偏在対策や働き方改革で対応方針示す

【厚労省・全国医政関係主管課長会議】医療法・医師法の概要も説明

 厚生労働省は3月9日、全国医政関係主管課長会議を開催した。武田俊彦医政局長は挨拶で、①医師偏在対策②医師の働き方改革③医療機関の広告規制の見直し─に言及。当面の医政局の対応方針などを示した。榎本健太郎総務課長は、各課の個別事項とは別に、今国会に提出予定の医療法・医師法改正法案の内容を説明した。
 武田局長は、地域枠を中心とした医学部の臨時定員増の入学者が順次卒業し、臨床研修を終え、地域医療に従事し始めている状況を踏まえ、「実効性のある医師偏在対策」が喫緊の課題になっていることを強調した。そのために、医療法・医師法改正法案を今国会に提出する予定であるとした。
 都道府県担当者に向けては、医師確保計画の策定など都道府県が中心になって医師偏在対策に取り組むことや、様々な会議体が並存していた状況を見直し、都道府県で関係者が議論する場として、地域医療対策協議会に集約化することなどを説明した。
 医師の働き方改革については、政府の働き方改革に伴う対応として、医師は他の業種と異なる働き方をしていることを踏まえ、来年度中に時間外労働の規制のあり方で、一定の結論を得るべく議論が続いている。
 武田局長は、「決して、医師の時間外労働の規制の話だけに終わらない。医師の働き方をめぐる様々な課題があり、多様な意見が出ている」として、問題解決の難しさをにじませた。
 一方、「医師の働き方改革に関する検討会」が2月27日にまとめた緊急的な取組みでは、現行制度の下で可能な医師の負担軽減策を盛り込んだ。武田局長は、「これらは医療団体と合意を得ており、医療機関に積極的な対応を促していく」と述べた。
 医療機関の広告規制の見直しについては、医療機関のウェブサイトを医療法の広告規制の対象としつつ、例外規定を設けて、患者や住民の利益を損なわないよう対応する枠組みが整えられた。一方、美容医療などの虚偽・誇大広告への苦情が増えていることなどを背景に、広告規制の見直しが求められたことから、厚労省は予算事業でネットパトロールを実施するなど、問題のあるウェブサイトは厳しく取り締まる姿勢を示している。
 武田局長は、規制の枠組みは決まったものの、「体験談や口コミ、ビフォー・アフターなど線引きが難しいものがある」とした上で、都道府県も窓口になるため、指導などの行政上の対応を適切に行っていくことを求めた。
医師偏在対策の効果は未知数
 榎本総務課長が、医療法・医師法改正法案の内容と法案作成に至る背景を含めて説明した。榎本課長によると、現在の医学部定員が維持された場合、2025年に人口10万人対医師数は290人でOECD加盟国の加重平均に達する見込みだ。
 しかし2012年で、最少の埼玉県は153人、最大の京都府は308人であるなど、都道府県格差は大きい。全体的に「西高東低」で、平均が232人であるのに対し、中央値が176人。大学医学部の所在地に医師が多い状況にある。
 医療法・医師法改正法案のポイントをみると、①医師少数区域等で勤務した医師を評価する制度の創設②都道府県における医師確保対策の実施体制整備③医師養成過程を通じた医師確保対策の充実④地域での外来医療機能の偏在・不足等への対応⑤地域医療構想の達成を図るための都道府県知事への権限追加─がある。
 注目されるのが、医師少数区域等で勤務した医師を評価する制度の創設だ。
 「医師少数区域」で一定期間勤務した経験を厚生労働大臣が認定し、その認定を受けた医師でなければ、省令で定める病院の開設者になれない制度である。
 ただ「医師少数区域」の設定や省令で規定する病院をどの範囲にするかなどは、今後の検討となっている。医師偏在対策としての効果も、これらがどう決まるかによるところが大きい。
 都道府県の医師確保対策では、医療計画における医師確保策の記載がばらばらで、格差があることを踏まえ、医師確保計画の策定を義務付ける。医師確保計画では、医師偏在の度合いに応じた医師確保の目標を立てて、その達成に向けた具体策を講じるとした。
 都道府県が医師確保の中心的役割を果たすことが制度改正のポイントであり、法的整備とあわせ、地域医療支援センターの機能強化を図るほか、都道府県と大学医学部・大学病院が連携し、医師派遣などを行うことを求めている。
 また、医師派遣が公立・公的病院に偏らない対応を講じる方針だ。
 地域の外来医療機能の偏在については、法整備としては、医療計画に「新たに外来医療に係る医療提供体制の確保に関する事項を記載する」にとどめた。都道府県知事が外来医療を協議する場を設けることも盛り込んだ。

 

全日病ニュース2018年4月1日号 HTML版

 

 

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