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医師臨床研修制度の報告書を大筋了承

医師臨床研修制度の報告書を大筋了承

【厚労省・医師臨床研修部会】2019年度都道府県別募集定員上限は1.12倍

 医道審議会医師分科会・医師臨床研修部会(桐野高明部会長)は3月7日、医師臨床研修部会報告書を大筋で了承した。報告書の内容に沿って、今後、臨床研修制度の見直しや地域枠の医学生への対応などを図る。基幹型臨床研修病院や第三者評価のあり方に関する考え方も明記した。2019年度の都道府県別募集定員上限も了承した。
必修分野を拡大
 臨床研修制度では、大都市への医師偏在の拡大を防ぐため、研修希望者に対する都道府県の募集定員に上限を設けている。全体の募集定員は、2015年度に1.2倍にした後、段階的に縮小し、2020年までに約1.1倍にする予定である。
 これにあわせ、2019年度は1.12倍とすることを了承した。予測だと、研修希望者1 万458人に対し、募集定員は1万1,713人になる。都道府県別では、京都府(▲5人)と佐賀県(▲2人)が2018年度募集定員上限を下回る見通し。
 報告書は「卒前卒後の一貫した医師養成」、「到達目標・方略・評価」、「臨床研修病院のあり方」、「地域医療の安定的確保」、「その他」の項目からなる。
 「到達目標・方略・評価」では、基本的な診療能力を身につけるため、内科・外科・小児科・精神科・救急・地域医療を必修分野とした。また、柔軟な研修が可能となるよう研修期間を従来の「月単位」から「週単位」に変更する。「地域保健」とされていた選択研修は、地域医療との混同を防ぎ、その趣旨を明確化するため、「保健・医療行政」とし、国際機関や行政機関、矯正施設、産業保健などでの研修も可能であることを明確化する。
 「地域医療の安定的確保」では、2020年に1.1倍とする予定の全体の募集定員の上限について、臨床研修医の都市部への集中をさらに抑制していくために、前年度採用者数を保障した上で、臨床研修病院の募集定員を2025年に1.05倍になるようさらに圧縮することにする。医師が少ない地域に配慮するため、地理的条件等の加算を増加させることも盛り込んだ。
 地域枠の医師に対しては、「地域医療への従事要件等が課されているにも関わらず、従事要件等に反している例がある」との指摘があることから、対応を図る方向だ。
 具体的には、◇各都道府県は従事要件が課されている研修希望者について、厚生労働省を経由して、臨床研修病院に伝える◇臨床研修病院が、従事要件等に反する研修医を採用している場合、制度から逸脱した程度に応じて、当該病院に対して必要な対応を行う─などを明記した。罰則に踏み込むことは避けたが、「厳しい対応が必要との意見があったため、速やかにその実態を把握すべき」との文言を加えた。
基幹型病院の管理体制を議論
 報告書の素案は前回の部会で議論され、大筋で了承されていた。同日は、新たに追加された「基幹型臨床研修病院のあり方」、「第三者評価」が議論になった。
 基幹型臨床研修病院については、「年間入院患者数3千人以上」が要件となっている。この要件の妥当性を再検討するとともに、3千人以上であっても、指導・管理体制に課題があると考えられる基幹型病院には、訪問調査と同様の仕組みを取り入れるべきとした。
 全日病副会長の神野正博委員は、「今後は都道府県が臨床研修病院の指定・募集定員に主体的に関わる方向になっている。明確な基準を設けないと、厳格に対応できないのではないか」と質問した。
 これに対し厚労省は、「都道府県が指定することになるが、質の担保のため大きな外形基準は国が定める。具体的な体制についても、国がガイドライン的なものを策定し、国と都道府県の協力体制で対応したい」と回答した。
 臨床研修病院の第三者評価については、積極的に検討を進める文言を追加した。「年間入院患者数に関わらず、第三者からの評価を受けることを強く推奨する」とし、「次回以降の見直しの際に、第三者評価を義務化することを前提とした検討を行うべき」とした。
 ただ神野委員は、第三者評価を行う機関を特定しているような表現であったため、文言の修正を求めた。

 

全日病ニュース2018年4月1日号 HTML版

 

 

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