全日病ニュース

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入院前の退院支援を評価、常勤等要件は緩和 医療介護連携は看取りなどできめ細かく対応

入院前の退院支援を評価、常勤等要件は緩和
医療介護連携は看取りなどできめ細かく対応

●ICUや有床診、診療実績データ
 特定集中治療室管理料に、多職種による早期離床・リハビリテーションの取組みを評価する「早期離床・リハビリテーション加算」(1日500点)を新設した。
 特定の職種よりもチームで行うことを重視しており、ICUのスタッフで行うことで構わないが、日本集中治療医学会のガイドラインを踏まえて、20分単位にこだわらずに、取り組んでほしい。
 特定集中治療室1・2の施設基準に、専門性の高い看護師の配置の要件を設けた。研修を終了した専任の常勤看護師を治療室内に週20時間以上配置する必要がある。研修内容については、今後疑義解釈で示す予定。経過措置があり、その間は特定集中治療室で6年以上の勤務経験のある看護師が配置されていれば、規定を満たしているとみなす。
 特定集中治療室においても、実績をしっかり評価していく方向にあり、DPCデータの報告の際には、患者の入退室時の生理学的スコア(SOFAスコア)を提出してもらうことにした。救命救急入院料1・3と脳卒中ケアユニット入院医療管理料は、「重症度、医療・看護必要度」の測定を要件に加える。
 褥瘡については、入院中の新たな発生を予防するため、入院時に行う褥瘡に関する危険因子の評価に「スキン─テア」を加える。ADL維持向上等体制加算のアウトカム指標である院内褥瘡発生率の基準は、「厳しい」との指摘を踏まえ、発生率を「1.5%未満」から「2.5%未満」に緩和するなどの見直しを行う。
 療養病棟では、褥瘡に関しアウトカム評価を取り入れる。これまでは「褥瘡評価実施加算」で、状態の確認を評価していたが、評価を2つに分けて、「DESIGN─ R」の実績点で評価して、3カ月連続で褥瘡の状態が悪化している場合は、低い点数の加算で算定する。
 有床診療所は、介護サービスを提供している有床診の高齢患者等の入院受入れの評価を新設するなど、基本的には、地域包括ケアモデル(医療・介護併用モデル)を意識した改定を行っている。
 データ提出加算の入院料への要件化では、今回対象が大きく広がったが、2019年3月31日までは経過措置がある(許可病床50床未満等の医療機関は2020年3月31日まで)。要件となる病床は、療養病棟も加わったため、「許可病床」に変更した。手間がかかることに配慮し、点数も上げた。また、「提出データ評価加算」(20点)を新設し、未コード化傷病名の割合が10%未満の医療機関のデータの質を評価する。
 短期滞在手術等基本料は、DPC対象病院である場合は算定不可とし、DPC / PDPSによる包括評価で算定することとする。ただし短期滞在手術等基本料2、3の手術等を行った患者は、「重症度、医療・看護必要度」の対象としないという規定はそのまま維持されるので注意してほしい。
●外来と入退院支援
 外来については、大病院と中小病院・診療所の役割分担を図る方向で、今回見直しを行っている。一般的な外来受診は「かかりつけ医」に相談することを基本とし、かかりつけ医機能の強化を図るため、地域包括診療料等の施設基準や小児かかりつけ診療料の算定要件の緩和などを行っている。地域包括診療料などを算定する医療機関の初診には、「機能強化加算」(80点)を新設した。地域包括診療料などを届け出ていれば、初診の患者全員に対し算定できる。患者の同意などの要件は設けていない。
 入退院支援は、全体として充実させた。入院前からの支援では、新たな評価を設けた。現行の「退院支援加算」は「入退院支援加算」に名称を変更するとともに、地域連携診療計画加算の算定対象患者の拡大や支援の対象となる患者要件の追加などを行った。
 退院時共同指導料は、医師や看護師以外の医療従事者が共同指導する場合も対象となる。自宅以外の場所に退院する患者も算定可能とする。
 入院前からの支援を行った場合の「入院時支援加算」(退院時200点)は、入院中の治療の説明や入院生活に関するオリエンテーションなどを入院前の外来で実施することなどを評価している。
●在宅医療
 在宅医療は、「在宅医療の提供体制の確保」と「在宅患者の状態に応じたきめ細かな対応」という2つの観点で見直している。
 「在宅医療の提供体制の確保」については、在宅療養支援診療所・病院を増やすことは、大体できているとの認識で、今後は在支診等以外でも訪問診療を行う医療機関を増やし、裾野を広げることが必要になる。「在宅患者の状態に応じたきめ細かな対応」については、在宅医療が必要な患者は複数疾患を抱えるなど医療ニーズが多様化・高度化しているので、それに対応する必要がある。
 地域包括診療料等は点数を2つに分けた。外来中心の医療機関で、外来を経て訪問診療に移行した患者数が10人以上であれば、高い方の点数を算定できる。在宅療養支援診療所以外の診療所の訪問診療では、他の医療機関との連携で24時間の往診体制と連絡体制を構築した場合の評価として、在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料に「継続診療加算」(216点)を新設した。複数疾患を抱える患者への対応では、主治医の依頼を受けた他の医療機関が訪問診療できるようにするため、在宅患者訪問診療料を見直した。
 在宅時医学総合管理料と施設入居時等医学総合管理料は、月2回以上の訪問診療を行っている場合の評価を適正化し、月1回の訪問診療を行っている場合の在支診等と在支診以外の医療機関の評価を充実させた。これも在宅医療の裾野を広げる観点での見直しである。また、併設する介護施設等に訪問診療する場合の在宅患者訪問診療料は、訪問と外来の中間的な診療形態であることを踏まえ、1日につき144点まで下げた。
 訪問看護も様々な見直しを行った。今後の超高齢社会を見据え、入院と訪問の両方ができる看護職員を増やしたいとの考えがある。主に訪問看護ステーションの療養費で多くの対応を行った。ステーションは福祉や介護との連携でも重要な役割を果たすことができるため、基本的には推進の方向で改定した。
●医療と介護の連携
 医療と介護の連携では、「看取り」「主治医とケアマネジャーの連携強化」「介護医療院・有床診地域包括ケアモデル」「リハビリテーション」の観点で見直しを行った。看取りに関しては、ターミナルケアに関連する診療報酬で、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」などを踏まえた対応を要件化している。
 主治医とケアマネジャーの連携強化では、例えば、特別養護老人ホームに入所する末期の悪性腫瘍の患者に訪問診療を実施する場合、これまでは看取りに関する評価は診療報酬と介護報酬のどちらか一方だけの算定だった。今回はどちらも取れる取扱いにした。ただし介護報酬の看取り介護加算の算定状況により、診療報酬・療養費の算定で一部異なる。また、末期のがん患者だと、ADLが急激に低下することがあること等を踏まえ、診療報酬と介護報酬の両者で、必要な情報提供や介護サービスを受けるための手続きを簡素化する対応を行う。
●介護医療院の取扱い
 介護医療院の診療報酬における取扱いは、診療内容や体制については介護療養型医療施設及び介護老人保健施設と同様となる。一方で「住まい」の機能も併せ持つため、在宅復帰・在宅移行では、「退院先」と評価され、在宅からの受入れでは「自宅」と評価される。医療提供も行う施設であることから、情報提供や共同指導で老人保健施設と同様の取扱いとなる。一方で、介護医療院のある医療機関は、総合入院体制加算を算定できないこととした。
●救急医療、AMR対策
 救急医療は、二次救急を充実させた。二次救急医療機関の重症救急患者受入れに対応するため、専任の看護師を配置する評価として、夜間休日救急搬送医学管理料に「救急搬送看護体制加算」(200点)を新設した。救急搬送以外の救急患者の対応で、専任の看護師が外来にいる場合を評価する院内トリアージ実施料は、100点から300点に上がる。救急搬送看護体制加算の専任の看護師は、院内トリアージ実施料での専任の看護師と兼務できる。
 小規模の医療機関が夜間に救急医療を実施している場合に、病棟勤務の看護職員が対応することに対して、入院基本料で配慮する。やむを得ない措置として、年6日に限り、病棟の夜間看護体制が2名を満たさなくなった場合の5%の減算規定を100床未満の病院に設ける。
 薬剤耐性(AMR)対策としては、抗菌薬を中途半端に使うと耐性菌が増えて、それまで用いていた抗菌薬の効果がなくなり、耐性菌が蔓延してしまう。
 抗菌薬を適正に使用するため、感染防止対策加算に「抗菌薬適正使用支援加算」(入院初日100点)を新設した。体制は感染防止対策加算と同じ人員で構わないが、業務として、微生物検査で耐性菌が見つかった患者に、抗菌薬の切替えを検討することなどを求める。また、小児の外来で、「小児抗菌薬適正使用支援加算」(80点)を新設し、抗菌薬が必要でないことの説明を行い、文書を提供した場合を評価する。
 医療安全対策加算に、医療安全対策地域連携加算を新設するとともに、既存の点数を見直した。
●チーム医療の推進や勤務環境の改善
 チーム医療の推進や勤務環境の改善は、過去の改定から継続して対応してきたが、今回も様々な見直しを行っている。これまでの取組みを充実させるとともに、常勤要件・専従要件、勤務場所の要件の緩和などがある。
 医師事務作業補助体制加算は、勤務医の負担軽減に効果のある取組みを計画に盛り込むことを要件とした上で、点数を全体として充実した。具体的な取組みでは、連続当直を行わない勤務体制や交替勤務制・複数主治医制の実施などがある。計画の達成は要求しておらず、計画に盛り込んだ取組みが達成できたかを検証してほしい。
 看護職員と看護補助者の業務分担・共同を推進するとともに、看護職員夜間配置加算の評価を新設した。「夜間16対1配置加算2」(30点)で、急性期一般入院基本料のうち、重症度の高い患者が一定割合以上入院する病棟で算定できる。ただし急性期一般入院料1では算定できない。
 常勤要件の緩和では、医師は小児科・産婦人科・精神科・リハビリテーション科・麻酔科などで、週3日以上かつ週24時間以上の勤務を行う複数の非常勤職員を組み合わせた「常勤換算」を可能とする。
 専従要件の緩和では、①チームで診療を提供する項目で、チームのいずれか1人が専従であればよいこととする(緩和ケア診療加算や外来緩和ケア管理料)②チームで担当する患者数が一定程度以下の場合は、いずれの構成員も専任であっても差し支えないこととする(緩和ケア診療加算や栄養サポートチーム加算)。
●DPC制度の見直し
 DPC制度は、2012年度改定から実施してきた調整係数の置き換えが完了し、今後の安定した制度運用を確保する観点から、医療機関別係数の再整理を行った。調整係数は廃止になったが、新たな激変緩和措置を講じる。ただし新たな激変緩和措置は2年に1度の改定年度のみの対応とする。
 基礎係数(医療機関群)は、これまでのⅠ群を「大学病院本院群」、Ⅱ群を「DPC特定病院群」、Ⅲ群を「DPC標準病院群」に名称変更した。さらに、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと序列のようになっていたので、今後の資料では、医療機関数が最も多い「DPC標準病院群」が前に来るように並べることにしている。
 機能評価係数Ⅱは、後発医薬品係数と重症度係数は廃止して、導入時からある6つの係数(保険診療、効率性、カバー、複雑性、救急医療、地域医療)を基本的評価軸に位置付けた。後発医薬品係数は、後発医薬品使用体制加算を機能評価係数Ⅰで評価することになっている。
 今後の課題としては、平均的な診療実態から外れて、診療密度が低く、平均在院日数が長いなど、DPC対象病院にふさわしくない病院については、退出を求める等の対応について今後検討する。

 

全日病ニュース2018年4月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 医療の質の評価・公表等推進事業

    https://www.ajha.or.jp/hms/qualityhealthcare/

    医療の質に対する関心の増大は世界的な趨勢であり、医療関係者は質の確保・向上の
    対応が社会的にも求められています。全日本病院協会では、医療の透明性、質の確保
    において、臨床指標を用いた評価が重要と考えております。2002年より主要24疾患
    に関する臨床指標と、病院全体の指標として転倒・院内感染症・抑制の3指標について、
    会員病院が自発的に参加してデータを収集・分析しホームページで公開するとともに、
    参加病院にデータを還元して継続的改善に資する診療アウトカム評価事業を実施してき
    ました。

  • [2] 急性脳梗塞患者に対する早期リハビリテーション開始率:医療の質の評価 ...

    https://www.ajha.or.jp/hms/qualityhealthcare/indicator/19/

    全日病(公益社団法人全日本病院協会)の病院運営支援事業「医療の質の評価・公表
    等推進事業」で選定した臨床指標「急性脳梗塞患者に対する早期リハビリテーション
    開始率」について。

  • [3] 褥瘡の発生率:医療の質の評価・公表等推進事業:病院運営支援事業 ...

    https://www.ajha.or.jp/hms/qualityhealthcare/indicator/30/

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    入院率 · □ 医療費 · □ 肺血栓塞栓症の予防対策の実施率 · □ 肺血栓塞栓症の発生
    率 · □ 褥瘡の持込率; □ 褥瘡の発生率; □ 65歳以上の患者における認知症の保有率
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