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2020年度以降の医学定員の臨時増員の取扱いを検討

2020年度以降の医学定員の臨時増員の取扱いを検討

【厚労省・医師需給分科会】5月に第3次中間報告まとめる

 厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」(片峰茂座長)は3月23日、2020年度以降の医学部入学定員の臨時増員の取扱いで第3次中間報告を5月にまとめることを了承した。冒頭、全日病副会長の神野正博委員は、「医師偏在対策の検証ができていないため、2020年度以降1、2年は現状通りというような暫定的な結論しか出せない」と主張。神野副会長の意見に複数の委員が賛同した。
 将来的に医師過剰の推計
 「医療崩壊」とも言われた地域の医師不足問題を解決するため、政府は2008年度以降、地域枠の設定を中心に、医学部の入学定員を恒久定員と臨時定員の両方で段階的に増やしてきた。
 2007年度まで7,625人だった恒久定員は、2010年度までに544人増員し、2016年度には東北医科薬科大学の100人が加わって、8,269人となった。
 臨時定員は2008年度以降段階的に増やしており、2016年度に993人になった。2008年度以降の恒久定員と臨時増員の増加数は1,637人になる。
 その結果、恒久定員と臨時増員を合わせると2016年度の入学定員は過去最大の9,262人となっている。
 さらに、都道府県の要望による2017~ 2019年度の追加定員がある。医師需給分科会の2016年の中間とりまとめでは、この追加定員の必要性は慎重に検討し、判断するとしている。
 現状では医師不足だが、今後の人口減少により、将来的に日本全体では医師数は過剰になると推計されている。2016年に同分科会が行った医師需給推計では、2024年以降に供給が需要を上回る見通しとなった。また、人口10万人に対する医師数は2025年に、OECD加盟諸国の加重平均に達する見込みだ。
 一方、日本全体で医師数が充足しても、医師が偏在しているために医師不足地域は解消しないという問題がある。厚労省は医師偏在対策を盛り込んだ医療法・医師法改正案を今国会に提出し成立を目指しているが、実際に対策が講じられるのは施行後となり、検証にはさらに時間を必要とする。
 さらに、政府の働き方改革に伴う時間外労働規制を医師にどう適用するかは、医師の需給に大きな影響を与える可能性がある。医師の時間外労働規制の方針は今年度中にまとまる予定だ。
 これらの不確定要素を残しつつ、同分科会は改めて需給推計を行い、その結果に基づき、2020年度以降の医学部入学定員の臨時増員の取扱いの結論を出す。医学部への入学を希望する学生のことを考えれば、早急に医学部定員を明らかにしておく必要があるためだ。
 不確定要素が多く暫定的な取扱いに
 神野委員は、医師の過不足を判断する上で不確定要素が多く、医師偏在対策の効果が検証できない状況であるとし、早急に2020年度以降の取扱いを決めなければならないとすれば、「暫定的に当面1、2年は現状通りとするしかない」と発言した。厚労省も現時点で将来的な方針を決めるのは困難であり、暫定的な結論となる可能性を認めた。
 委員からは、早急に医師数の養成数を減らすべきとする意見と現状の臨時増員を維持すべきとする両方の意見があった。
 医師養成数を減らす立場からは、「医師が増えると医療費が増えることも考える必要がある。医師数を増やせば、医師1人当たりの報酬が減ることも考慮される」、「臨増増員を減らすことを大前提に議論を進めるべき」などの意見があった。
 一方、養成定員を維持すべきとする委員からは「臨時増員を廃止すれば、地方の医療は崩壊する。医師の働き方改革の議論との整合性を図る必要がある」、「養成したすべての医師が期待通りに働くわけではない」などの意見があった。
 同分科会では、5月の第3次中間報告に向けて、改めて需給推計を行うため、その前提を検討していくことになる。女性医師や高齢医師・研修医の労働時間をどう考えるかが今後の論点となる。神野委員は、「需給推計の前提になる発射台の医師数が、医師不足の現状を追認していることに留意すべき」と指摘した。

 

全日病ニュース2018年4月15日号 HTML版

 

 

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  • [1] 研修会等、要望書および陳情・調査研究活動

    https://www.ajha.or.jp/about_us/50years/pdf/50years.pdf

    2011年3月31日 ... 方委員会に発展し、若手が集まって、「病院のあり方に関する報告書」を作成することが.
    できました ..... その一方で日本医師会との協調に努め、日本医師会をとおして、いかに
    会員で. ある私的 ..... は25名と増員した。 また、定款 ... 第4回臨時総会は、代議員会の
    次第どおり承認 ...... したが、総会は定員数が満たず開催とならなかっ. た。 ...... も考慮
    し、適切な新しい看護婦需給計画立案の ...... 名が厚生大臣表彰を受け、会長表彰は長
    年代議員. 会議長を務めた山田正明氏に特別功労賞、役員関. 恒久化.

  • [2] 第764回/2011年10月1日号

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2011/111001.pdf

    2007年4月1日 ... 9月22日に開催された社会保障審議会医療部会に、事務局(厚労省医政局総. 務課)は
    、検討 ..... 医療救護班活動に気仙沼市と同医師会から感謝状 ..... DPC評価分科会
    平成24年改定に向けた機能評価係数Ⅱの見直しについて」. 9月21日.

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