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専門医機構が厚労省検討会に専攻医採用状況を報告

【厚労省・医師養成あり方検討会】東京への一極集中に批判の声あがる

　日本専門医機構は３月27日に開かれた厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」（遠藤久夫座長）に、新専門医制度における専攻医の都道府県別の採用状況を報告した。委員からは、東京都の専攻医数が1,825人で初期臨床研修時の1,350人を大きく上回ったことから、「東京への一極集中が進んだ」との声があがった。
　同検討会は、新専門医制度がもたらす医師偏在を懸念して発足した経緯がある。このため、委員は専攻医の採用状況などの資料提示を機構に再三求めていた。今回報告を行った機構の松原謙二副理事長は「ようやく公表できるデータがそろった」と釈明したが、「データの提示がこれだけ遅れたことは不信感を生じさせた」との苦言が出た。
　機構が示した採用状況によると、３月５ 日までの登録者数は8,394人となった。東京が1,825人で最も多く、次いで、大阪が650人、神奈川が497人、福岡が451人、愛知が449人となっている。東京は臨床研修時の1,350人よりも475人増えた。専攻医全体の割合では、21.6％を占める。なお、東京の人口は全国の１割程度となっている。
　委員からは、「東京への一極集中は否定できない状況だ。人口比からみても、こんなにいらないはず。地方から東京に出たら戻ってこない医師は多い。初期臨床研修制度から東京への一極集中が始まっており、専門医制度でさらに拡大した」との意見が出た。その上で、「今は給料で差をつけているが、地方での医師勤務は定着していない。地域で働く医師を優遇する何らかの対策が必要」との提案があった。
　松原副理事長は、「東京に一極集中しているように見えるが、関東一円からの流入が多く、全国から集まっているわけではない。他の大都市でも似た傾向がある。今後、東京の基幹病院が近隣県に医師を派遣することを期待する。１年目でも診療科によっては３割ほどが他県で研修を受けるときいている。２、３年目には５割ぐらいまで高まる診療科も出てくるのではないか」と述べ、今後の動向を注視する姿勢を示した。
　東京への集中示すデータ提出
　同日の検討会には、奈良県知事の荒井正吾委員が独自データを提出した。機構が示した採用状況は、都道府県別の臨床研修２年目の登録人数と専攻医の基幹施設の登録人数を比べた場合の変動である。過去の都道府県別の専門医研修の人数との比較ではない。過去の専門医研修の人数は正確に把握できていないほか、診療科ごとに基準が異なり、一律に比較することが困難であるためだ。
　荒井委員が示したデータは、暫定的に、専門医研修時の人数を厚労省の３師調査（2014年）による医籍登録３～５年の医師数を用いて、今回の専攻医の都道府県別採用数と比較した。それによると、東京は３師調査で17.1％であるのに対し、新専門医制度は21.6％となり、東京への集中が拡大したことを示した。さらに、関東ブロックでみると、35.1％ から37.1％ に拡大した。基準が異なり、正確な比較ではないとしつつ、傾向としては妥当性があると説明した。
　また、新専門医制度では、東京、神奈川、愛知、大阪、福岡の５都府県に対し、過去５年の専門医研修の採用実績の平均を超えないという上限設定を設けている。松原副理事長はこの上限設定が守られているとのデータも示した。ただし過去の採用実績の基準が、診療科ごとに異なっている問題も指摘。一方、機構が今回示した採用状況は今後、経年的に同一の基準で把握できるデータであることから、データベースの作成を含め、データを蓄積し、必要に応じて制度を見直すとの見解を示した。
　５都府県に対する上限設定については、日本医療法人協会会長の加納繁照委員が、「大阪は上限設定で追加募集が早期に締め切られた。大都市は今後高齢者の増加で医療ニーズが増大するのに、専攻医が減ってしまった診療科もある。上限設定は東京だけに限定すべきではないか」と提案した。