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2017年度の病床機能報告制度の速報値を報告

2017年度の病床機能報告制度の速報値を報告

【厚労省・地域医療構想WG】定量的な基準設定には賛否両論

 厚生労働省は3月28日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(尾形裕也座長)に2017年度の病床機能報告制度の速報値を示した。全国の病院・診療所の報告で、医療機能別の病床割合は過去の傾向と変わらなかった。しかし厚労省は、医療機関が報告する医療機能と提供する医療の内容が異なる場合があると指摘。定量的な基準の検討を促した。これに対しては、委員から賛否両論があった。
 病院の病床機能ごとの病床数をみると、117万1,724床のうち、高度急性期は16万2,498床で13.9%、急性期は53万4,511床で45.6%、回復期は13万8,690床で11.8%、慢性期は33万6,025床で28.7%だった。2016年度は高度急性期が14.4%、急性期が45.8%、回復期が10.7%、慢性期が29.0%で傾向は変わらない。
 高度急性期がわずかに低下しているのは、特定機能病院の判断が要因だ。特定機能病院はこれまですべての病床を高度急性期として報告する病院が多く、「非現実的」と指摘され、是正を求める意見があった。その結果、報告を変更する特定機能病院が増えた。例えば、京都府立医科大学附属病院は2016年度にすべてを高度急性期としていたが、2017年度は33床のみを高度急性期、残りの844床は急性期とした。
逆に、すべての病床を高度急性期に戻した特定機能病院もある。
 病床機能報告制度では、提供している医療の内容も同時に収集していることから、厚労省は、選択した医療機能と実際に提供している医療の内容の関係を分析している。例えば、高度急性期・急性期と報告している病棟の医療の内容を調べている。
 その結果、「診療報酬を含む一定の項目に該当する重症患者の該当がない病棟」が約83%、「中心静脈注射や人工呼吸など一定の全身管理の項目の該当がない病棟」が約17%、「がん・脳卒中・心筋梗塞等への治療状況がない病棟」が約25%など、「急性期医療を全く提供していないと考えられる病棟」が存在することを示した。
 また、将来の病床の必要量の推計と比較すると、現状の回復期の病床は大幅に不足する結果となる。これについては、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟以外の現状の急性期で、回復期機能が担われていることを勘案し、平均在棟日数が22日超の急性期病棟や、救急患者の受入れ件数や手術件数が一定以下の場合は回復期と判断するなど、定量的な基準を検討することを促した。
 これに対し、「定量的な基準に反対する」との明確な意見があった一方で、賛成する意見もあった。全日病副会長の織田正道委員は、「病棟数が少ない中小病院では、実際は回復期の患者が入院していても、全体として急性期と報告せざるを得ない」と発言。その上で、極端な病棟を除く上で有用な場合があるとしても、定量的な基準を一律に設けるのは現場の実態に合わないと主張した。
 佐賀の調整会議の進捗を報告
 そのほか、同日のワーキンググループでは、佐賀と高知の地域医療構想調整会議の進捗状況が報告された。特に、佐賀における調整会議で、行政と医療関係者の意思疎通が円滑に行われており、公立病院の病床削減に至った経緯などが示された。佐賀で病院を経営する織田委員は、「公式の調整会議以外に何十回も懇談会などを重ねている。遠慮なく何でも言える人間関係を作ることが大事だ」と強調した。

 

全日病ニュース2018年4月15日号 HTML版

 

 

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    ②6年後の医療機能③2025年の医療機能(任意)─ を厚労省に報告している。医療
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