全日病ニュース

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オンライン診療や人生の最終段階の医療のGLで様々な意見

オンライン診療や人生の最終段階の医療のGLで様々な意見

【厚労省・医療部会】厚労省が最近の医政関連事項を報告

 社会保障審議会・医療部会(永井良三部会長)は4月11日、厚生労働省から医師偏在対策を盛り込んだ医療法・医師法改正案の閣議決定、オンライン診療や人生の最終段階の医療の決定プロセスに関するガイドラインなどの報告を受けた。委員からは、今後の具体的な対応に関して、様々な意見や要望が出た。
 厚労省が①医療法・医師法改正案②オンライン診療のガイドライン③検体検査の精度管理等の基準④人生の最終段階における医療の普及・啓発のあり方に関する検討会報告書⑤無痛分娩の実態把握と安全管理体制に向けた対応─を報告した。
 医療法・医師法改正案については、今年1月に概要を説明している。与党審査を経て閣議決定に至ったため、改めて報告した。特に変更点はなかった。
 委員からは、法案成立後の具体的な対応に関し質問が多く出た。特に、医師少数区域等で勤務する医師を評価する制度の創設に対して、効果的な医師偏在対策になるような制度設計が求められる一方で、医師少数区域等をどう設定するかをめぐって懸念が示された。
 改正案では、都道府県が医師数の多寡に関する指標に基づき、「提供される医療の種別ごと」に、二次医療圏単位で医師不足地域と医師多数地域を定めるとしている。
 これに関し委員から「医療の種別ごとに決めるなんてことは、我々は議論しなかった」との声があがった。厚労省は、「例えば、入院や外来に分けてという意味であり、具体的には今後検討する」と回答した。また、一律の指標で、医師不足地域や医師多数地域が決められることに対し、「これまでとは別の不公平が生じる可能性がある」など慎重な検討を求める意見が出た。
オンライン診療と診療報酬の関係
 オンライン診療のガイドラインについては、今回の診療報酬改定で新設したオンライン診療料等とガイドラインの関係をめぐり様々な質問があった。
 全日病会長の猪口雄二委員は、診療報酬改定の疑義解釈で、離島・へき地の緊急対応など遠隔医療が、オンライン診療料の施設基準を満たすことが示されたことを踏まえ、「ガイドラインでは、遠隔診療をオンライン診療に変更したが、診療報酬のオンライン診療は、遠隔診療を対象としていない」と指摘。
 両者の言葉の定義の整合性をとるよう求めた。厚労省からは、診療報酬のオンライン診療において、ガイドラインに則った対応を担っていると説明された。
 また、日本医師会の委員は、「診療報酬のオンライン診療料等では、対面診療を原則に要件を厳しくし、よいものになった。オンライン診療のガイドラインがそれを緩める方向に働かないよう、両者の関係をしっかり整理する必要がある」と述べた。
 検体検査の精度管理等については、検討会の検討結果が報告された。昨年の医療法改正で、検体検査に関し、医療機関が実施する検体検査の品質・精度管理の基準と検体検査の分類を省令で規定することになった。検討会が省令に盛り込む内容をまとめ、医療部会の了承を得たことで、6月に省令を公布し、12月の施行に向け、周知・準備を進める方向だ。
 具体的な省令の見直しでは、医療機関の基準として、①医師または臨床検査技師の責任者の配置②各種標準作業書・日誌等の作成③外部の調査を受けることや研修の実施など、精度確保のために努めるべき事項─を定めた。遺伝子関連検査・染色体検査に対しては、より厳しい基準を設けている。遺伝子関連検査・染色体検査の責任者を配置するとともに研修を義務化し、検査施設の第三者認定の取得は勧奨するとしている。
ACP普及に向けガイドライン改訂
 「人生の最終段階における医療の普及・啓発のあり方に関する検討会」の報告書については、ガイドラインの改訂とあわせた説明が行われた。
 委員からは、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)を国民に浸透させ、関係者が人生の最終段階の医療を繰り返し話し合うことは大事だが、死について普段は考えたくない。入院や介護保険施設等への入所の際に文書を渡し、考える機会にすればよい」、「義務にはできないが、後期高齢者医療制度の被保険者(75歳)や介護保険制度の第1号被保険者(65歳)に達する年齢が、意思表示のよい機会になる」などの意見が出た。
 猪口委員は「終末期医療に対する国民の理解は進んでいると感じる」と述べた上で、「『終末期』をいう言葉を使ってはいけないのか」と質問。厚労省は、「2017年にガイドラインの名称を『終末期』から『人生の最終段階』に変更した。
 最期まで尊厳を持って生きるということを強調した結果と聞いている。『終末期』という言葉を使ってはいけないということはない。ただ行政的には『人生の最終段階』という言葉を使うこととなる」と回答した。
 無痛分娩の実態把握と安全管理体制に向けた対応については、無痛分娩を行った母児の死亡や障害が、繰り返し報道されたことを踏まえ、昨年7月に厚生労働科学特別研究「無痛分娩の実態把握および安全管理体制の構築についての研究」による提言が示された。
 厚労省は提言の内容を紹介するとともに対応策を示した。無痛分娩は、麻酔によって陣痛の痛みを和らげ、分娩する方法で、陣痛の痛みを緩和するため、一般的には、硬膜外麻酔を用いる。報道された7例中4例が「脊髄くも膜下麻酔」だった。
 提言では、◇無痛分娩を熟知した専門職の配置◇無痛分娩取扱い施設の診療体制などのウェブサイトでの公開◇施設リストなどのウェブサイトでの公開◇関係学会・団体による「無痛分娩に関するワーキンググループ」の発足─などを掲げた。厚労省としては、提言内容を関係者に周知するとともに、母子健康手帳への記載や予算事業の周産期研修で産科麻酔研修を追記するなどの対応を行うとしている。

 

全日病ニュース2018年5月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] オンライン診療でガイドライン案を議論|第914回/2018年4月1日号 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180401/news04.html

    2018年4月1日 ... オンライン診療ガイドライン案を議論|第914回/2018年4月1日号 HTML版。21
    世紀の医療を考える「全日病ニュース」 ... オンラインの通信機器のセキュリティに関して
    は、医師と患者・家族それぞれの状況に応じたケースを例示している。

  • [2] 2018年4月1日号 ヘッドライン:全日病ニュース

    https://www.ajha.or.jp/news/summary/20180401.html

    2018年4月1日 ... 医師偏在対策や働き方改革で対応方針示す: 医療法・医師法の概要も説明. <厚労省・
    ガイドライン作成検討会> オンライン診療ガイドライン案を議論: 情報機器の
    セキュリティ環境を例示. <厚労省・ ... 医療法及び医師法改正法案の概要.

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2018年3月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2018/180301.pdf

    2018年3月1日 ... た診療に関するガイドライン作成検討. 会」(山本隆一座長) ... 展に伴うオンライン診療
    の拡大に備え. る。 医師法第20条 ..... 行する。 【資料】医療法及び医師法改正法案
    概要(検討中の内容)※1月24日社会保障審議会医療部会資料から ...

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