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2020~2021年度の医学部臨時増員は現状通り

2020~2021年度の医学部臨時増員は現状通り

【厚労省・医師需給分科会】2033年に医師約36万人で均衡

 厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会(片峰茂座長)は4月12日、2020~ 2021年度の医学部入学定員の臨増増員の取扱いは、暫定的に現状通りとすることで概ね一致した。また、医師需給推計の結果を示し、医師以外の他業種と同様の時間外労働規制を適用した場合は2033年に医師の需給が均衡し(医師数約36万人)、それより緩い規制では2028年(医師数約35万人)に均衡し、それ以降は医師が過剰になるとした。
 医学部入学定員は、医師不足問題に対応し、過去10年間で地域枠を中心に増やしてきた。現在は過去最大の9,262人になっている。しかし日本全体でみれば、今後の人口減少などにより、医療ニーズは減少し、医師は将来的に過剰になる見込みだ。このため同分科会は、医師需給推計に基づき、臨時増員を縮小させることの是非を検討している。
 しかし、医師偏在は解消されず、医師の働き方改革の行方も流動的な状況にある。医師偏在対策は、近く国会で審議される予定の医療法・医師法改正法案の施行状況を検証する必要があり、医師の働き方改革は厚労省検討会の結論が来年3月に出される。医学部受験者に配慮すれば、入学定員は実施の2年前に決めておく必要があり、見直すとすれば、最短で2022年度以降にする必要があるとの結論になった。
 その上で、「現状で、すでに過去最大級の医学部定員の増加を行っていることを踏まえると、医師偏在対策、医師の勤務時間の適正化等が進むと前提すれば、マクロの医学部定員について、さらに増員する必要はないのではないか」との論点を提示。賛成の意見が相次ぎ、暫定的に2年間は現状通りとすることで了承を得た。
 また、2022年度以降の取扱いに関して、「臨時定員を減らしていくことを前提に、議論を進めるべき」との意見が相次いだ。さらに、日本医師会の委員が、「臨時増員は地域枠を中心に増やした。臨時増員がなくなると、地域枠もなくなる。地域の医師偏在を考えれば、恒久定員に地域枠を組み込むことを検討すべき」と発言した。これに対し、異論は出なかった。
医師需給推計の結果を示す
 新たな医師需給推計の結果が公表された。基本的には、2年前の需給推計と同様の手法を用いたが、医師の労働時間などの設定において、直近の実際のデータを用いたため、より精緻な推計となった。労働時間については、医師全体の週平均51.42時間を基準に、性別年齢階級別の比を用いた。例えば、男性30代は1.21だが、女性の40代は0.84となる。女性の労働力率のいわゆるM次カーブが示されており、20代は1.15、50代は0.87で、いったん減少した後に若干上昇する。
 需給推計の結果をみると、需給が均衡する時点は、労働時間を週55時間程度に制限する需要ケース①で2033年(医師数約36万人)、週60時間程度に制限する需要ケース②で2028年(医師数約35万人)となった。それ以降は、医師の供給が医療ニーズを反映した需要を上回る。ケースにより需要は変わらないが、医師の労働時間が減ると、必要となる医師数は増え、供給の変化で均衡年度が後ろにずれることになる。
 なお、2028年は2020年度の医学部入学者が卒業し、臨床研修を終了する時期に当たる。
 労働時間は、国会に提出されている働き方改革関連法案の時間外労働規制を仮定した。週55時間は、他業種に適用される時間外労働規制(週15時間、年間720時間)である。週60時間はそれより緩くしており、月換算だと80時間の時間外労働で、労災認定の目安になる水準となっている。
 推計においては、現状で上限に満たない労働時間の医師の労働時間はそのままで、上限を超える医師の労働時間を減らすという調整をした。
 また、医師から他業種へのタスクシフティングに関して、需要ケース①では、2040年までに医師の労働時間が7%、需要ケース②では、2年程度前倒しし、10%減少することを見込んだ。
 そのほか、外来の受療率や精神病床の入院需要も、近年の動向を踏まえ、一定の変化率の幅を前提として、推計に織り込んでいる。
 医師の需要推計において、臨床医の想定必要数をみると、慢性期を「1」とした場合、回復期を「1.5」、急性期を「2.7」、高度急性期を「4.7」とした。
 医療資源投入量による推計は用いず、病床機能報告制度で病院が報告した医療機能別の病院全体の医師数を病床数で割り、比を算出した。

 

全日病ニュース2018年5月1日号 HTML版

 

 

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    の ... その中で、医学部の定員は現状の9,262人を維持するとしつつも、今後3年間の
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