全日病ニュース

全日病ニュース

高齢者施設における医療ニーズの対応方法で調査研究

高齢者施設における医療ニーズの対応方法で調査研究

【高齢者医療介護委員会】医療機関・医療職との連携が重要な要素

 「高齢者施設等における医療ニーズ対応のあり方に関する調査研究事業」の報告書がこのほどまとまった。
 報告書では、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム、軽費老人ホーム、養護老人ホーム、認知症グループホームといった高齢者向けの住まいにおける医療ニーズ対応の実態を把握するとともに、人員配置等の差異が利用者の受入れに及ぼす影響について分析。高齢者施設における医療提供体制について提言している。2017年度老人保健事業推進費等補助金による調査研究事業として実施した。
 調査研究の実施に当たっては、高齢者医療介護委員会を中心に事業検討委員会を組織し、全国の高齢者施設4,000施設を対象にアンケート調査を実施した。調査は、2017年12月に実施し、1,065施設から回答を得た(回収率26.6%)。また、医療ニーズ対応において優れている施設を対象にインタビュー調査を行った。
 アンケート調査では、認知症に係る状況や医療的処置の必要性などの状態像について、新規の入所・入居が困難であるかを質問した。アンケート調査の結果から、状態像別の受入れの可否に関する施設類型間の比較を行い、のように整理している。

 また、状態像別に受入れ困難となる理由を分析した。中重度の認知症や認知症に伴う行動・心理症状、認知症以外の精神疾患を有する入所者・入居者については、「対応にかかる業務負担の大きさ」を挙げる施設が多かった。
 一方、医療的な処置がある入所者・入居者については、「看護師の不在」を挙げる施設が多かった。
 そのほか、緊急の訪問看護を行う機関・事業所がある施設の方が新規受入れが可能な施設の割合が高いことがわかった。また、夜間・休日の急病人の発生時に医師への連絡が取りやすい施設であることや健康状態の変化が生じた際に医師への相談ができるなど、医療機関・医療職と緊密に連携している施設の方が新規受入れが可能な割合が高い傾向がみられた。
 調査結果から、医療ニーズを有する高齢者を受け入れるに当たり、施設に医療職が配置されていることがきわめて重要な要素となっていることが明らかとなった。しかし、少子高齢化に伴って職種によらず人手の確保が困難となる中で、「医療職の配置を増やす」という選択肢は、自己負担が大きな介護付き有料老人ホームを除き、とりづらいのが実情だ。
 このため報告書は、それ以外の方法で医療ニーズを有する高齢者の受入れを可能とする方法を構築する必要があるとし、訪問や相談を提供する医療機関を地域で確保することが重要な選択肢になると提言している。
 また、規模の大きい施設の方が新規受入れの可能な施設が多いことや、看護職員の「多さ・少なさ」よりも、「有無」の方が重要な要素となっていることがわかった。
 これらのことから報告書は、1人以上の看護職員を配置し、かつその看護職員が一定人数以上の医療ニーズに対応する体制を構築する方がより効率的な対応となることを指摘。施設の大規模化が有効であると提言している。

 

全日病ニュース2018年5月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 平成29年度老人保健健康増進等事業 <高齢者施設等における医療 ...

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/other/180410_9.pdf

    高齢者施設等における医療ニーズ対応のあり方に関する調査研究事業>. <公益社団
    ... 近年、高齢者人口の増加、特に家族介護力の低い高齢の単独世帯や夫婦のみの世
    ... 新規の入所者・入居者の受入が困難となる理由として、中重度の認知症認知症に.

  • [2] 医療ニーズを有する高齢者の実態に関する横断的な調査研究

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/other/140414_6.pdf

    護療養型老人保健施設)、介護療養型医療施設、医療療養病床を有する病院を対象と
    するアンケート調査. (調査基準日:2013 ..... また、介護療養型老人保健施設
    受け入れている要介護者や認知症高齢者の状態像は、介護老人保健施. 設よりも
    むしろ介護 ...

  • [3] 報 告 書

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/other/180410_8.pdf

    特定施設でないサービス付高齢者向け住宅 …住宅型有料老人ホームと比べ、認知症
    に関する受入. れ能力はやや低く、医療的な処置に関する受入能力は同程度. ・疾患や
    既往歴に関する受入れ能力は、施設区分間の差は小さい. 図表1. 入所者・入居者の
    新規 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。