全日病ニュース

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2040年でも医療・介護費用は持続可能な水準

2040年でも医療・介護費用は持続可能な水準

【社保審・医療部会】医療福祉分野の人材確保は大きな課題

 厚生労働省は6月6日の社会保障審議会・医療部会(永井良三部会長)に、2040年を見据えた社会保障の将来見通しの結果を報告した。厚労省は、高齢者人口の増大などにより医療・介護の給付費は伸び続けるが、対GDP比でみると、2040年度で12%程度であり、持続可能な水準であるとの認識を示した。一方、医療福祉分野の就業者の確保は大きな課題で、特に介護分野の人材確保に対する懸念が相次いだ。
 社会保障の将来見通しでは、高齢化がピークに達する2040年までの給付費を推計した。医療・介護費用は、2018年度で約50兆円。それが2040年になると社会保障・税一体改革による医療機能の分化・連携などによる1.6兆円程度の適正化を織り込んだ上で、92.5兆~ 94.3兆円と2倍近くの増加となる。しかし対GDP比でみれば、2018年度の8.8%から、現状投影ベースでも改革実現ベースでも11.7 ~ 12%にとどまる。
 厚労省は、社会保障の充実した欧州の国々と比べても、「どの国も経験したことのない大変な数字というわけではない」と説明した。経済が期待通りに成長することを前提としつつも、給付費の増大は対応可能な範囲に収まることを示した形だ。委員からは同調する意見が出る一方で、現状の医療・介護費用が国債で賄われていることを強調し、負担と給付の見直しが不可欠との意見が出た。
 同時に推計結果が示された医療・介護の就業者数の見込みに対しては、危機感を表明する発言が相次いだ。特に、介護分野の人手不足への懸念が多かった。さらに、「東南アジアも少子高齢化が進んでおり、日本に来てくれるとは限らない」など、外国人労働者に過度な期待はできないとの指摘があった。
 推計ではICTなどの活用で労働生産性を上げれば、一定程度必要数を減らすことが可能であることを示している。委員からは「日本の産業構造全体に与える影響も大きい。見方を変えれば、それだけニーズのある成長産業だ」、「他の産業を考えると、医療福祉分野にそれだけ人を投入するのは難しい」といった意見があった。
 また、同日の医療部会に医療放射線の適正管理に関する検討会の検討状況が報告された。
 日本の医療被ばくの線量は世界の中で高いことから、「合理的に達成可能な限り被ばく線量を最適化」する必要があるとした。具体的には、被ばく線量の高い検査の線量の記録や医療従事者の研修の義務化などを検討している。全日病会長の猪口雄二委員は、「有害性だけを強調すると適切な検査が妨げられるおそれがある。正確なデータを基に、検討を進めてほしい」と要請した。

 

全日病ニュース2018年6月15日号 HTML版

 

 

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    https://www.ajha.or.jp/news/summary/20180601.html

    2018年6月1日 ... 社会保障の将来見通し> 2040年の医療・介護費用は92.5~94.3兆円に: 就業者数も
    シミュレーション. <国会審議> 医療法等改正案を参議院で可決、共産党は反対: 12
    項目の附帯決議を付す. <厚労省・医療介護データ解析基盤に関する ...

  • [2] 「病院のあり方に関する報告書」(2011年版)

    https://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2011/01.html

    経済・社会活動を担う中核である生産年齢人口(15歳以上65歳未満人口)は、1996 年
    以降減少、労働力人口(就業者と完全失業者 ... 社会保障国民会議の2025 年度医療
    介護費用の財政試算では、シナリオによって差異はあるものの、2007年の41兆円(
    医療 ...

  • [3] 日本の医療・介護を考える ~(社)全日本病院協会の取組み

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/080329_iryou.pdf

    泉政権以来,自民党政権の方針は社会保障全体を見直すといいながら,国民 ・ 医療 ...
    減しており,具体的には,国が支払う費用(給付費)を減らすため皆さんの自己負 ...... で
    てきたうえに,介護施設で就業する看護師も増え,その需要が伸びているため,.

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