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ホーム全日病ニュース(2018年)第920回/2018年7月1日号都道府県支部の質問に答え、全日病の考え方を説明...

都道府県支部の質問に答え、全日病の考え方を説明

都道府県支部の質問に答え、全日病の考え方を説明

【支部長・副支部長会消】消費税問題や医師偏在、医師の働き方など15項目

 全日病は6月16日の定時総会終了後に支部長・副支部長会を開き、事前に各都道府県支部から寄せられた質問に対し、執行部が答えた。質問は、診療報酬・介護報酬や医師不足・偏在問題、医師の働き方、地域医療構想など15項目に及ぶ。司会の猪口正孝常任理事が質問事項を読み上げ、会長・副会長が全日病の考え方を説明した。執行部の説明に対し、支部長・副支部長から意見や要望を含め多くの発言があり、時間を延長して活発な議論を交わした。猪口会長は、「初めての試みとして実施したが、有意義な支部長・副支部長会となった。年に1回程度、こうした形で企画したい」と述べた。執行部の説明要旨は以下のとおり。

 <診療報酬、介護報酬について>

 1. 診療報酬における許可病床数200床未満制限について【埼玉県支部】
猪口会長
 許可病床数ではなく、一般病床の200床という基準の方がよいのではないかという質問だが、一般病床といっても急性期のみを表すものとはなっていない。地域包括ケア病棟や回復期リハ病棟は、一般からも療養からも行ける。一般病床という括りでは縛れないので、今回、許可病床ということで統一されることになった。

 2.急性期一般入院料2、3における7:1届出実績の制限について【埼玉県支部】
猪口会長
 今回、新設された急性期一般入院基本料は、過渡期的なものであることをご理解いただきたい。実績に応じて選べることが本来のあり方だが、7:1入院基本料の財政的な影響をみる必要もあり、今回はこうせざるを得なかった。先日の中医協で、入院医療分科会に診療情報・指標等ワーキンググループが設置されることになった。
 さまざまなデータを整理し、重症度、医療・看護必要度を精緻化する作業を行うことになるので、早ければ次の改定で、入院医療の評価体系は大きく変わる可能性もある。

 3.病院勤務の介護職員(看護補助者)に対する処遇改善手当支給対象化について【埼玉県支部】
猪口会長
 医療療養と介護療養がある病院では、介護療養にしか手当がつかないが、職員のローテーションもあり同じ条件にすると、医療療養では完全な持ち出しになってしまう。介護職員の不足対策からはじまった補助金なので介護施設に限られてきた経緯があるが、改善に向けて提言していきたい。

 4.地域別の診療報酬の設定について【東京都支部】
猪口会長
 高齢者医療確保法第14条で、地域ごとの診療報酬の定めを行うことができるという規定がある。地域別診療報酬の活用例として、「特定の病床が過剰な地域では入院基本料単価の引下げ」があり、注意が必要だ。奈良県知事がこの規定を適用して診療報酬単価を下げたいと言い出している。しかし、医療保険部会では、「国民皆保険の趣旨からその妥当性や実効性を慎重に検討すべき」という意見があり、法律の規定はあるが、簡単には実現しないだろう。都道府県単位で決められることではなく、国としてどうするかを考える必要があり、実現の可能性は低いと思っている。

 <消費税について>

 5.平成31年10月に消費税10%への引上げが予定されているが、医療機関の対応はいかに?【北海道支部】
 6.消費税対策について、会員へ向けてわかりやすい資料が欲しい【栃木県支部】
猪口会長
 非常に難しい問題である。控除対象外消費税の問題は、施設によって違いがあり、大型の急性期病院ほど負担が大きい。財務省は、診療報酬で十分に補填しているというが、実際には病院種別によって補填状況は大きく異なる。
 平成30年度税制改革大綱では、「平成31年度税制改正に際し、税制上の抜本的な解決に向けて総合的に検討し、結論を得る」としている。これは、税制によって解決する意味と読める。抜本的解決に向けて、間もなく病院団体の話し合いがはじまる予定だ。夏にかけてまとめていくことになるが、いずれにせよ業界の見解を一致させる必要がある。診療報酬で補填するかどうかは、決まっていないが、中医協の消費税に関する分科会ではデータを整備する作業を進めている。

 <医師不足・偏在、専門医制度>

 7.医師の偏在と臨床研修制度・専門医制度について【秋田県支部、山梨県支部、高知県支部、大分県支部】
 8.医療法・医師法改正案について【鹿児島県支部】
神野副会長
 強力な医師偏在対策が実行されなければ、医師養成は減らすべきではないというスタンスで対応している。
 国会で審議中の医療法・医師法改正案は、2019年4月1日の施行だが、地域医療対策協議会と専門研修に係る事項は公布日が施行日となっている。日本専門医機構等に対し、偏在対策を促す権限が創設されるので、ここに各都道府県の実情に合わせて全日病の主張を入れていくことが大切である。

 9.人材確保事業について【栃木県支部】
織田副会長
 人材紹介会社が医療界に入ってきたのは10年ほど前で、ネットの普及に伴い広範に利用されるようになった。業界の自主ガイドライン策定を働きかけ、医療系紹介協議会ガイドラインが策定された。同協議会には大手の22社が加入しているが、人材紹介会社は200社を超え、埒が明かない。
 四病協と日本医師会の働きかけで、今年1月に職業安定法および指針が改正され、求職者・求人者が適切な職業紹介事業者を選択できるようにするため、事業者に紹介実績に関する情報提供を義務付けることとなった。厚生労働省の人材サービス総合サイトに情報が掲載されている。また、指針の改正により、短期間で転職するよう求職者に勧奨し、繰り返し手数料収入を得ることを防止することになった。
 どれだけ改善するかわからないが、厚労省のサイトに掲載されている業者は比較的安心できるのではないか。

 10.歯科医師による医科麻酔の実施について【東京都支部】
猪口会長
 麻酔科医の不足は深刻だ。 歯科医師は全身麻酔をかけられるので、医科の麻酔で活用してはどうかという話があり、数年前に日病協で厚労省に要望したが、麻酔科学会から強い抗議があり、進まなくなった経緯がある。歯科医師の研修ガイドラインがあり、一定の要件を満たせば、麻酔科医が歯科の麻酔医を教育する目的で実施できるケースがある。今後、規制が緩和されることを期待している。

 <働き方改革について>

 11.働き方改革について【大分県支部】
 12.医師の働き方改革に伴う労基署の立ち入り調査について【和歌山県支部】
猪口会長
 政府が2年ほど前から働き方改革の取組みをはじめ、労基署が厳しく指導するようになった。昨年3月の働き方改革実行計画では、医師については応召義務等の特殊性があることから、時間外労働規制の対象とはするが、改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用することとし、具体的な規制のあり方は2年後を目途に結論を得ることになった。これにより、厚労省に「医師の働き方改革に関する検討会」が設置され、来年3月までに結論をまとめることになっている。
 今年2月に中間論点整理と緊急的な取組みが示された後、議論は一時中断している。現在、日本医師会や四病協が医療側の提言をつくっているところである。論点としては、①医師の自己研鑽をどうみるか、②当直を時間外労働とみるかといった点がある。
 働き方改革の議論をしている最中なので、労基署の立入調査は抑制するよう求めているが、情報提供があった場合には立入調査に入らなければならない規則になっている。

 <地域医療構想について>

 13.地域医療構想について【栃木県支部】
織田副会長
 昨年12月の地域医療構想の進め方に関する議論の整理では、公立病院・公的病院は改革プランを策定して調整会議で協議することになっているが、ほとんど進んでいない。公立病院・公的病院については、公立・公的でなければ担えない分野に重点化することが求められているが、病床機能報告の6年後の病床機能をみると、公立・公的病院は回復期機能に移行する傾向がみられる。今後、調整会議で議論することになるが、公私の役割分担を強く主張する必要がある。
 14.地域医療介護総合確保基金について【栃木県支部】
織田副会長
 今年度の総合確保基金は、医療分934億円が予算化されている。基金を受けるためには、調整会議で認められなければならない。調整会議は、年4回の開催がイメージされているが、3回目が重要で、次年度の基金の使い方を議論することになる。配分の方針としては、再編・統合の事業を優先することになっている。
 今年度から新たに医療機関の事業縮小に要する費用が基金から出ることになった。不要になった医療機器の処分や早期退職金制度にも基金が使えるので、詳しくは各都道府県に問い合わせてほしい。

 <公私格差について>

 15.公立病院の補助金について【長崎県支部】
猪口会長
 公立病院には、地方公営企業法に基づいて約8,000億円の補助金が出ていて、民間と大きな違いがある。  長い歴史のあることであるが、こうした事実があることを認識して取り組みたい。

 

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