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在宅医療で都道府県が取り組む事項を整理

在宅医療で都道府県が取り組む事項を整理

【厚労省・在宅医療WG】4県から先進事例を報告。横展開目指す

 厚生労働省の「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(田中滋座長)は6月27日、在宅医療を充実させるために都道府県が取り組むべき事項を整理した。データ分析による「見える化」や人材の育成・確保などで、明確な目標を定め、増加する在宅医療の需要に見合う体制整備を目指す。

 在宅医療の体制整備は急務
 2018年度から新たな医療計画や介護保険事業計画が開始され、在宅医療に関する目標も盛り込まれているが、充実のための具体的な方策は十分ではないと指摘されている。一方、高齢化による自然増や、長期入院患者の在宅への移行で、今後、在宅医療の需要は増大すると見込まれており、体制整備が急務の状況にある。
 厚労省は同日、先進事例として、島根県、鹿児島県、富山県、滋賀県(大津市)からヒアリングを行うとともに、都道府県が取り組むべき事項を示した。事項は、◇都道府県全体の体制整備◇取り組み状況の見える化(データ分析)◇提供体制の整備◇人材の確保・育成◇住民への普及・啓発─に整理。委員から異論はなく、概ね了承を得た。
 都道府県全体の体制整備では、本庁の医療政策部局や介護保険担当部局の役割分担の明確化や年間事業スケジュールの策定をあげた。委員からは、「逆に、役割分担が明確化されすぎていて、連携が十分でない状況が起きている」との指摘が出た。
 市町村の地域支援事業に対する支援体制整備を求める意見もあった。市町村は介護保険の実施主体だが、医療との関わりが少ないため、医療・介護連携で都道府県の支援が重要としている。
 データ分析では、地域ごとの在宅医療の資源やニーズを把握する。富山県の報告では、在宅医療に関連する診療報酬項目の算定状況を指数化するなど、様々な在宅医療の指標をデータで示した。担当者は「データ自体はすでに公表されているもの」と説明。厚労省は、都道府県が公表データに基づく分析を行い、地域の課題を明らかにし、目標設定を促す考えだ。
 情報共有の観点からは、市町村や関係団体との連携を求めた。個別の医療機関や訪問看護ステーションの調査も項目に盛り込んだ。同日の議論では、訪問看護ステーションの数を増やすことが在宅医療の充実に重要との意見が相次いだが、同時に「一定の規模を備える必要がある」との指摘もあった。
 提供体制の整備では、◇入退院ルールの策定、運用◇後方支援病院等との連携ルールの策定、運用◇急変時の患者情報共有ルールの策定、運用─を明記した。大津市は、「入院から退院までの間、病院とケアマネジャーが連携するための共通のルールを作り、『連携もれゼロ』を目指す」と報告した。鹿児島県も入院退院支援などで明確なルールを定め、運用しており、「退院調整もれ」の割合なども把握している。
 また、後方病院の役割に対しては、委員から、「地域により、後方支援だけでなく、積極的に在宅医療に取り組むことが必要」との意見が出た。
 人材の育成・確保では、医療従事者への普及・啓発事業やスキルアップ研修の支援、多職種連携に関する会議や研修の支援をあげた。島根県は、医療介護総合確保基金を活用し、郡市医師会に連携推進コーディネータを配置し、市町村などと連携する事業を紹介した。
 最後に、人生の最終段階における医療・ケアの意思決定支援に関する普及・啓発を課題とした。ACP(アドバンス・ケア・プランニング)への取組みとともに、がんの緩和ケアの体制整備などが重要との指摘があった。
 また、厚労省は、都道府県の在宅医療の充実に向け、保健所の役割を強調した。具体的には、◇所管区域の医療に関する情報の収集・管理、分析◇救急医療における関係機関との調整◇医療機関の機能分担と連携、健康危機管理の拠点としての企画や調整─などを列記した。
 厚労省はこれらの対応について、地域により事情が異なるため、地域の特性に合わせた柔軟な対応を求めるとしている。

 ICTの活用に期待
 全日病副会長の織田正道委員は、地域で在宅医療に取り組む医師数が十分でないことを踏まえ、「2018年度診療報酬改定でオンライン診療料等が新設された。オンライン診療を活用すれば、在宅医療の充実に資する」と述べ、ICT活用による効率化や負担感の軽減に期待を示した。

 

全日病ニュース2018年7月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2017/170403_3.pdf

    2017年3月31日 ... 5疾病・5事業及び在宅医療の医療体制構築に当たっては、当該制度により都道府県.
    に報告された医療機能情報を活用 ...... は、「がん診療連携拠点病院等の整備について」
    (平成26年1月10日付け健発0110. 第7号厚生労働省健康局長 ...

  • [2] 在宅医療と介護の整合性を図るための指標を議論|第877回/2016年8 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160815/news04.html

    2016年8月15日 ... 在宅医療と介護の整合性を図るための指標を議論|第877回/2016年8月15日号
    HTML版。21世紀の医療を考える「全日病ニュース」 ... その結果、在宅医療等で追加的
    に対応する患者数は30万人とされ、そのニーズに対応する医療・介護の提供体制整備
    が課題となっている。 ... このため厚労省は、「在宅医療・介護連携推進事業」を計画に
    位置づけ、都道府県による市町村への支援を充実させることを提案した。

  • [3] 「病院完結型」から「地域完結型」医療への変化・対応を訴える|第807回 ...

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    2013年8月15日 ... (2)都道府県の役割強化と国保保険者の都道府県移行地域の実情に応じた医療提供
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