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外来機能(入退院支援)、在宅医療・訪問看護(看取りを含む)、
人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するGL

外来機能(入退院支援)、在宅医療・訪問看護(看取りを含む)、人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するGL

【診療報酬改定シリーズ 2018年度改定への対応⑥】医療保険・診療報酬委員会 委員 杉村洋祐

 2018年度改定における外来機能、在宅医療・訪問看護、ターミナルケアに関する改定内容を確認したい。
 外来医療については、かかりつけ医の機能の充実および情報共有、情報提供、連携等に関する評価が主な対応だったと言える。まずは、かかりつけ医機能の充実として、初診料の機能強化加算が新設された。地域包括診療加算、地域包括診療料、在宅時医学総合管理料(在支診、在支病200床未満)等の、かかりつけ医機能に係る施設基準の届出を行っている医療機関において、初診時に専門医療機関への受診の要否の判断等、より的確で質の高い診療機能を評価する観点から新設されたものだ。健康診断の結果等の健康管理に係る相談、保健・福祉サービスに関する相談および夜間・休日の問合わせへの対応を行っていること、そしてそのことを施設内に掲示することが要件となっていることは忘れてはいけない。
 また、2014年度改定で新設された、地域包括診療料と地域包括診療加算の施設基準の緩和も行われた。「高血圧症」「脂質異常症」「糖尿病」「認知症」のうち複数の疾患を持つ患者が対象で、療養上の指導や服薬管理、在宅患者への24時間対応等を行うことで算定する診療報酬である。常勤医2名以上の配置要件を、常勤換算で2名以上(うち1名以上が常勤医)に変更、さらに在宅療養支援診療所以外の診療所が算定することを想定し、在宅患者への24時間対応の基準もそれぞれ緩和した。このことで、かかりつけ医機能が充実するかは疑問ではあるが、算定しやすくなったことは事実である。

 認知症診療における連携を評価
 情報共有、情報提供、連携に関しては、認知症サポート指導料、認知症療養指導料2・3がそれぞれ新設されている。認知症サポート指導料については、地域において認知症サポート医が行う、かかりつけ医への指導・助言について評価したものであり、認知症療養指導料2・3については、その指導・助言を受けた、かかりつけ医が行う認知症患者の医学管理等についての評価である。まさに連携した双方が算定できる内容となっている。
 さらに、がん患者の治療と仕事の両立に向けた支援の充実として、療養・就労両立支援指導料、相談体制充実加算も新設された。がん患者の治療と仕事の両立の推進等から、主治医が産業医から助言を得て、患者の就労の状況を踏まえて治療計画の見直しや再検討を行う等の医学管理を行った場合の評価で、相談体制充実加算については、専任の看護師等が、がん患者に対し就労を含む療養環境の調整等に係る相談窓口を設置した場合も併せて評価された。そもそも、医師、看護師の人材が不足している地域では、なかなかハードルの高い診療報酬ではあるが、連携強化を強く意識した診療報酬である。
 さらに、同一医療機関内での連携では、入院時支援加算が新設され、入院を予定している患者が入院後にどのような入院生活や、どのような治療過程を経るのかをイメージし、安心して入院医療を受けられるよう治療の説明、入院生活に関するオリエンテーション、服薬中の薬の確認、褥瘡・栄養スクリーニング等を、入院前に実施し支援を行った場合に算定する。入院医療の加算ではあるが、外来で実施したことに対する評価である。
 そして入退院時の連携に関するこれまでもあった診療報酬のうち、入院医療機関等が連携先の機関と特別の関係にある場合も、算定できるように見直しも行われた。一つの例として、退院や、在宅療養を行うに際しカンファレンスや共同で指導にあたった場合に算定する、在宅患者緊急時等カンファレンス料や、退院時共同指導料等の要件に、特別の関係にある訪問看護ステーション等も加えられたことは、収益の観点からだけではなく、実績に対する評価として明確に位置付けられた。

 在宅医療の評価
 訪問診療等の在宅医療についても、多様な在宅医療のニーズへの対応として様々な評価がなされている。その一つに、在宅時医学総合管理料等を算定する患者に対して、患者の状態に応じたきめ細かな評価とするため、要件に該当する患者に対し包括的支援加算が新設された。要件の一例をあげると、要介護2以上に相当する患者、認知症高齢者の日常生活自立度でランクⅡb以上の患者等である。当該管理料を算定する患者であっても状態は様々であり、いわゆる重度の患者に対する対応が評価された形だ。
 また、適切な往診の推進、看取り期の患者に対する往診の評価として、算定要件に、患者または家族等の看護・介護に当たる者が、「保険医療機関に対し電話等で直接往診を求め、当該保険医療機関の医師が往診の必要性を認めた場合に、可及的速やかに」の一文が追加され、往診料の算定が可能である旨を明確にした。この追加された「可及的速やかに」の解釈については、2018年5月25日疑義解釈(その4)で、「往診は、患家等からの依頼に応じて、医師が往診の必要性を認めた場合に行うものであり、往診の日時についても、依頼の詳細に応じて、医師の医学的判断による」とされた。当然と言えば当然の回答ではあるが、曖昧と言えば曖昧だ。さらに、緊急往診加算の要件に「医学的に終末期であると考えられる患者」も対象に加えられた。

 人生最終段階における医療
 今回の改定で、入院医療にも加算等の算定に要件化されていて、在宅医療等に限った内容ではないが、国民の希望に応じた看取りの推進として、ターミナルケア等に関連する報酬において、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等を踏まえた対応が算定要件に盛り込まれた。このガイドライン等の内容を踏まえ、患者本人およびその家族等と話し合いを行い、その意思決定を基本に他の関係者とも連携の上対応することとされた。
 「人生の最終段階における医療・ケアの決定」という表現に対し、「看取りの同意書」を取る必要があるのかと疑問に思った方も多いようだが、決してそういった趣旨ではなく、人生の最終段階でどのような医療を受けたいか、自分らしく生きるためにどうするべきか、どういった支援を受けたいかなどについて話し合うということだろう。例えば、症状が回復不能と考えられる状態になった場合に、どのような医療を希望するか、回復の見込みがなく死期が迫った場合の人工呼吸器装着や、蘇生処置を受け延命を目的とした治療を希望するか、苦痛を和らげる治療(緩和ケア)を希望するかなどだ。当然、現時点で決められないといった思いも、話し合った結果と言ってよいはずであり、前述した「看取りの同意書」もその一つである。

 

全日病ニュース2018年8月15日号 HTML版

 

 

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    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180401/news08.html

    2018年4月1日 ... 一般的な外来受診は「かかりつけ医」に相談することを基本とし、かかりつけ医機能
    強化を図るため、地域包括診療料等の施設基準や小児かかりつけ診療料の算定要件
    の緩和などを行っている。地域包括診療料などを算定する医療機関の ...

  • [2] 介 護 保 険 最 新 情 報 Vol.368 平成26年3月31日 厚生労働省老健局 ...

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2014/140403_2.pdf

    2014年3月31日 ... 常勤医師3名以上を確保していないが、看取り等の実績を有する在宅療養支援診療所・.
    病院を評価. ・ 在宅療養支援診療所・病院以外の医療機関による在宅医療の実施を
    評価. ② 在宅患者の急変時の受入れを行う後方病床の評価. ③ 機能 ...

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年2月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160215.pdf

    2016年2月15日 ... 目的は常勤換算医師数の推計であり、. 超過労働 ... 医. 師の絶対数不足に対しては
    医学部定員. 増の効果が現れてくる。現在の医師不. 足の本質は医師の地域・診療科の
    偏在. であり、 .... このほか、退院支援の整理・強化、かかりつけ医機能の普及、在宅
    医療の拡充とその ..... 在宅医療における看取り実績に関する評価(以下は.

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