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在宅復帰率とその他施設との連携

在宅復帰率とその他施設との連携

【診療報酬改定シリーズ 2018年度改定への対応⑦】医療保険・診療報酬委員会 委員 杉村洋祐

 2018年度改定において、急性期一般入院基本料・入院料1(以下「入院料1」という。改定前の7対1入院基本料に相当)については、在宅復帰率から在宅復帰・病床機能連携率に名称の変更が行われている。併せて要件についても見直されており、回復期リハビリテーション病棟入院料(以下「回リハ」という)や地域包括ケア病棟入院料(以下「地ケア」という)、療養病棟入院基本料(以下「療養病棟」という)でも、それぞれ見直しが行われている(図1)。

 在宅復帰率のこれまでの経緯
 そもそも在宅復帰率は、2014年度改定において導入された施設基準であるが、回リハや、2014年度に廃止となった亜急性期入院医療管理料では、「退院患者のうち、他の医療機関へ転院した患者を除く者の割合」という表現で以前から導入されていた。勿論、2014年度以降の在宅復帰率の要件とは異なってはいるが、いわゆる在宅等へ退院していただくことを目指す施設基準である(図2)。
 2014年度改定において、その施設基準が7対1入院基本料にも導入されたわけだが、通知等が示され、内容が明確になるまでは緊張感を持って中医協等の議論に注目していたのではないかと思う。2014年1月29日の中医協総会で示された、「個別改定項目について」という資料があるが、その中に次のような記載がある。「退院患者のうち、自宅、回リハ、地ケア(入院医療管理料を含む)、療養病棟であって在宅復帰機能強化加算を届け出ている病棟、居住系介護施設又は、介護老人保健施設であっていわゆる在宅強化型に退院した者の割合が○○%以上であること」。
 ○○%は75%である。
 この時点では居住系施設にはいったい何が含まれるのかが明確にされていなかったが、7対1入院基本料を算定している医療機関でも比較的高齢者を対象としているような場合は、75%以上を維持する上で重要と考えられ、注目していた医療機関は多かったように思う。
 この2014年度改定での在宅復帰率は施設基準として何を目指したのか、7対1入院基本料を算定する病床を削減するために導入されたことも否めないが、在宅等へ向けた流れを作ろうとしたこともまた事実だと思う(私見)。
 その後、2016年度改定では、在宅復帰機能強化加算を届け出ている有床診療所も自宅等に追加され範囲が広がる一方で、割合が80%に引き上げられた。この引き上げは、2014年改定当時に75%で設定された割合を多くの医療機関が大幅に超えクリアしていることもあり、より自宅等への退院を推し進めるため引き上げられたものと考えられる。ここでも、7対1入院基本料を算定する病床の削減をするために引き上げられたことも否めないところである。

図2 2014年度診療報酬改定の特徴−大きな流れを示した⁈−

 転院先の対象が拡大
 さて、2018年度改定だが、冒頭述べたように、入院料1については、在宅復帰率から在宅復帰・病床機能連携率に名称の変更が行われているが、そもそもの考え方が変わった印象だ。割合を算出するための分子と分母についてだが、入院料1については、急性症状等により他の医療機関へ転院した患者以外は分子に入れて良いことになる。具体的には、いわゆる機能強化型の療養病棟、有床診療所、介護老人保健施設以外への転院等は、これまでは分子に入れることができなかったが、これら全ての施設に転院しても分子に入れて計算することができるようになった。名称通り、在宅復帰・病床機能連携率だ。
 入院料1を算定する医療機関からみれば、機能強化型の施設に転院させるも、そうでない施設に転院させるも手間は同じで、在宅復帰・病床機能連携率だけの視点で見た場合、どの機能の介護老人保健施設等に転院となっても何も変わらないのである。さらに、分子に介護医療院も含まれた。介護医療院については、転換後も病院、診療所の名称で運営することが認められているようだが、在宅復帰・病床機能連携率では居住系介護施設等に含まれる。

 回リハと地ケアの在宅復帰率
 回リハと地ケアの在宅復帰率について、先ずは、回リハだが、改定前は入院料2が60%以上だったところを地ケアと同様に70%以上とし統一した。さらに分母から除外する患者も、「転棟患者(自院)・急性増悪で転院した患者」を「一般病棟への転棟転院した患者」に改めた。分子には有床診療所(介護サービス提供医療機関に限る)も介護医療院と併せて含まれることになり、地ケアと統一された。
 地ケアの変更は、分子から、いわゆる機能強化型の療養病棟、有床診療所、介護老人保健施設が除外された。療養病棟や介護老人保健施設との連携で在宅復帰率の割合を維持していたような場合は痛手だろう。

 患者のために必要な連携を進める
 施設基準を維持することをきっかけとして、様々な施設と連携を強化してきた医療機関は多いと思われるが、患者にとっても選択肢が増えサービスが向上して来たともいえる。今回の改定により施設基準を維持するために必要な連携を取らずに、サービスを低下させるようなことや、連携先である機能強化型の介護老人保健施設等からみても、改定前と同様の連携を維持できるのかは不透明であるがそのような状況を作ってはならない。今後の調査等を注目する必要はあるが、患者、利用者の立場に立ち、必要なサービスを受けられるようにこれまでと同様に連携を進めて行かなければならないと感じている。

 

全日病ニュース2018年9月1日号 HTML版

 

 

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