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病院が認定事業者に患者の医療情報を提供

病院が認定事業者に患者の医療情報を提供

【次世代医療基盤法】大量データの収集で研究開発を促す

 次世代医療基盤法が5月に施行されたことを受けて、患者の医療情報を医療分野の研究開発に役立てるための準備が進められている。内閣府の健康・医療戦略室は、このほど、関係者に対して施行に向けた準備状況を説明した。情報提供に当たり患者の意向を確認する医療機関においても対応を検討する必要がある。

 年内に事業者を認定の見込み
 次世代医療基盤法は、正式名称を「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」といい、昨年5月に成立・公布された。今年4月には匿名加工医療情報に関する基本方針が閣議決定され、5月11日に施行された。施行通知やガイドラインも示されている。情報の匿名加工を行う事業者は年内に申請・認定される見込みで、来年度から研究機関などへの匿名加工医療情報の提供が始まる予定だ。

 医療情報活用の仕組みを構築
 政府は、産官学が多様な目的で健康・医療・介護データを活用できる体制整備を目指して取組みを進めている。次世代医療基盤法は、医療情報連携ネットワークや個人単位の医療IDの付与などとともに、情報活用基盤構築の一環と位置づけられている。
 NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)により、レセプト情報は一元的に収集される仕組みが構築されているが、これらは診療行為のインプット情報。問診内容や検査結果、治療予後など、診療行為のアウトプットに関する情報を収集する仕組みは進んでいない。
 医療ビッグデータを活用した研究開発に期待が高まる中で、質の高い大規模な医療情報をめぐる国際的な競争が激しくなっているが、日本はこの分野で出遅れているのが現状だ。医療機関が民間主体であることや医療保険制度が分立していることもあり、データが分散していることが課題とされている。次世代医療基盤法の狙いは、大学などの研究機関や製薬企業が大規模に医療情報を収集し、新たな医療技術や治療成績の評価に結びつけることにある。
 一方、医療に関する個人情報は厳格な保護が求められる。2017年の個人情報保護法の改正により、病歴等の医療情報は、「要配慮個人情報」に位置づけられ、いわゆるオプトアウトによる第三者提供が禁止された。医療情報を第三者に提供する場合は、氏名や住所など個人を特定する情報を除去し、個人を特定できないよう匿名加工する必要がある。匿名加工された医療情報は、個人情報ではなくなり、第三者に提供できる。
 次世代医療基盤法は、医療情報の匿名加工を行う事業者を認定することによって、匿名加工された医療情報を安心して円滑に利活用することが可能な仕組みを整備するものだ。認定事業者は、高い情報セキュリティを確保し、十分な匿名加工技術を有するなど、一定の基準を満たし、医療情報の管理や利活用のための匿名化を適正かつ確実にできる事業者を認定する。

 情報提供の流れ
 医療機関は、あらかじめ医療情報の提供について患者に通知し、本人が提供を拒否しない限り、認定事業者に医療情報を提供することができる。
 具体的なイメージでは、医療機関は受診時に書面で、医療情報の提供について通知し、30日を目安に必要な期間を置いて、停止の求めがなければ、認定事業者に医療情報を提供する。通知は、書面で行うことが基本で、文書のひな型が近く示される予定だ。
 患者の情報を認定事業者に提供するかどうかは、医療機関の任意とされている。患者は、情報提供の停止を求めることができるほか、すでに提供された情報の削除を依頼することもできる。認定事業者は患者からの問い合わせの窓口を設置する必要がある。
 法施行前は、患者の情報を匿名化して第三者に提供する場合、医療機関が匿名加工に関する義務を負っていたために、医療機関の負担が大きく、医療情報活用の妨げとなっていた。それが、次世代医療基盤法により、◇匿名加工情報の責任は認定事業者が負う◇多数の医療機関の医療情報を収集し、匿名化する◇国が匿名加工の能力を有する事業者を認定する仕組みになった。
 医療情報の利活用の仕組みをつくることにより、①大規模な研究の成果としての最適医療の提供②異なる医療機関や領域を統合した治療成績の評価③最先端の診療支援ソフトの開発④医薬品の安全対策の向上─などの成果が期待される。

 認定事業者の基準
 認定事業者は、①組織体制②人員③情報④事業計画・事業運営⑤セキリュティ(安全管理措置)を考慮して、認定する予定だ。
 組織体制では、事業を安定的・継続的に行う体制とあわせ、公的主体による公衆衛生や研究開発の取組みに協力することを求めている。人員は、大量の医療情報を収集・管理し、匿名加工を実施する高度な専門性の確保が必要となる。集める情報は、診療行為のアウトカムを引き出すため、複数の医療機関から集めた100万人単位の規模でなければならない。セキュリティ面では、徹底した管理を求める。データを取り扱う場所で徹底した入室管理を行うとともに、基幹業務系と情報系システム、インターネットからの分離などが求められる。

 医療機関のメリットが課題
 事業計画・事業運営においては、収支の安定が不可欠だ。認定事業者は、研究機関や製薬企業など情報利活用者から、情報収集加工コストに適度の利益を上乗せして収入を得る。一方、医療機関が認定事業者に医療情報を提供する際は、コストを超えた情報の対価を得ることはできないという整理になっている。患者に対する金銭の提供も想定していない。
 このため現状では、医療機関にとってメリットは少ないとみられる。内閣府は、医療機関が積極的にこの仕組みに参加する環境をつくることが課題と認識しており、医療機関と認定事業者が、医療情報提供だけでなく、それ以外の領域でもICT利活用の協力関係を築き、お互いに利益を得られる関係ができれば、普及するのではないかとみている。

 

全日病ニュース2018年9月1日号 HTML版

 

 

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  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2017年7月1日号)

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