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地方都市の地域密着型病院としての地域連携

地方都市の地域密着型病院としての地域連携

【シリーズ●地域密着型病院と地域連携①】救急搬送から在宅医療・介護まで幅広い連携体制を構築

医療法人社団永生会 理事長 安藤高夫

 地域包括ケアシステムの中で住民のニーズに応えていくには、医療・介護の関係機関との連携が不可欠。地域密着型病院における地域連携を考えるシリーズの第1回は、東京都八王子市を拠点とする永生会です。救急医療から医療介護の連携まで、地域とのかかわりの中で実践している多彩な取組みを安藤副会長に報告していただきました。

はじめに

 永生会は、東京都八王子市を地盤とする医療介護福祉複合体である。八王子市は東京都の西南部に位置し、人口は約58万人、うち65歳以上人口は約14万人で高齢化率は約24%と全国比よりやや低い。医療機関の状況をみると、病院が38 ヵ所(うち大学病院2ヵ所、二次救急7ヵ所)、診療所が329 ヵ所(うち在宅療養支援診療所29ヵ所)となっている。高度急性期、急性期、回復期、慢性期が比較的バランス良く供給されている。
 永生会は二次救急指定の南多摩病院(7:1DPC)、回復期・慢性期の永生病院(10:1非DPC、地域包括ケア、回復期リハ、医療療養、介護療養、障害者、精神科)、今年4月に永生病院の老朽化による一部移転で開設したみなみ野病院(回復期リハ、医療療養、一般病棟(緩和ケアに転換予定))の3病院を擁する。他に、クリニック2ヵ所、老健施設3ヵ所、グループホーム1ヵ所、訪看ステーション5ヵ所、居宅介護支援事業所3ヵ所、訪問介護1ヵ所を有し、「医療と介護を通じた街づくり・人づくり・想い出づくり」を理念に、地域包括ケアシステムの構築を目指している。

急慢連携

 八王子市では2010年に「オール八王子」を合言葉に、大学病院、救急病院、回復期・慢性期病院、精神科病院、老健施設、医師会、薬剤師会、地域包括支援センター、八王子消防署の他、老人クラブや自治会等も参加する「八王子市高齢者救急医療体制広域連絡会(八高連)」が設立された。その背景には、救急搬送時間の延長、搬送先が見つからない選定困難事例の増加、市内から離れた急性期病院への度重なる搬送等の問題意識があった。
 救急搬送での高齢者特有の問題に「病状の伝達困難」があり、八高連は新たな「救急医療情報シート」を作成し、記入事項として、氏名や生年月日、治療中の病気、服用薬、かかりつけ医、緊急連絡先等の一般的なものに加え、「もしもの時に医師に伝えたいこと」という延命についての欄を設けた。これにより、救急隊が内容を医療機関に伝えることで、搬送時間短縮や、患者が望まない治療を回避することにつながっている。
 消防救急を代替しその負担を軽減する新たな救急搬送の仕組みづくりに向けて、東京都葛飾区、町田市、八王子市、北区、江戸川区では病院が所有する「病院救急車」を活用し、救急搬送する取り組みを行っている。病院での治療が必要とかかりつけ医が判断し病院救急車の出動を要請した場合、南多摩病院の病院救急車が自宅や高齢者施設に駆けつけ、看護師と救命救急士が必要な措置を行いながら、あらかじめ決められた病院に搬送するものである。
 病院救急車の運用により見込まれる効果は迅速な医療機関への搬送、地域内完結の地域包括システムの構築、急慢連携・医療介護連携の促進、消防救急の負担軽減、消防組織に属さない救急救命士の職場づくり、大規模災害発生時の救助・医療対応力の向上等、非常に多岐にわたる。
 八王子市には、高度急性期病院が東京医大八王子医療センターと東海大学八王子病院の2病院あるが、両施設とは戦略的な連携を取っている。医療センターには、毎週木曜日に院長と看護部長、MSWが訪問し、医療センターより永生病院に転院された患者の経過報告、永生病院より医療センターへ転院された患者の経過確認、転院待機中の患者の現在の病状と待機状況の確認、医療センターより永生病院への転院患者の選定、永生病院より医療センターへ紹介患者の相談、といった肌理細かな対応を行っている。また、東海大学八王子病院についても、2週間毎の金曜日、副院長と看護副部長、MSWが訪問し、神経内科の患者を中心に東海大病院より永生病院への転院患者の選定、各科への紹介元拡大等を実施している。このような流れもあり、高度急性期病院と近隣の地域密着型病院との連携が八王子市周辺では広がっている。
 なお、今年4月から、東京医大八王子医療センターと永生病院、みなみ野病院の間をシャトルバスでつなぎ、患者の利便性向上も図っている。

病診連携

 市内の24時間対応の在宅療養支援診療所が中心となり、ICTを活用した多職種連携支援ネットワーク「まごころネット八王子」を立ち上げた。医療クラウド上に在宅患者の基本情報、医療情報、経過記録等を登録し、かかりつけ医、訪問看護師、薬剤師、歯科医師、ケアマネジャー等の多職種間で情報共有やコミュニケーションを図ることができる仕組みになっている。
 患者が救急搬送された場合に受入病院側ではICカードでアクセスして患者の診察履歴を確認することができ、病院救急車内でも患者がICカードを持っていればパソコンからまごころネットにアクセスすることで、迅速な診療情報の収集が可能になる。
 近年、ACPの啓蒙やいわゆる高齢者のリビングウイルを尊重して診療方針を決定していくプロセスの重要性が広く認知されてきている。医療費の無駄使いを抑制するためにも重要な課題である。これらのプロセスの策定には多くの手間と時間を要する。救急患者を受け入れる際には、慢性期病院にてACPに基づいた「まあまあ型」の医療提供ができる準備を行っておく必要がある。いわゆるDNRでなければ救急患者を受けないといったようなハードルを設けることは避けるべきであり、慢性期病院の特長を活かした多職種連携のカンファレンスによってACP の実践や見直し等を行い、医療を提供することが重要であると考えている。
 在宅患者の支援のために行っている工夫としては、急性期の南多摩病院における訪問診療がある。南多摩病院の各科専門医が訪問診療に参加することにより、必要な時に内科、外科、泌尿器科、皮膚科、形成外科等の医師が訪問診療を実施し、様々な医療ニーズに対応できる体制の確保を行っている。
 在宅から受け入れる際の工夫としては、在宅患者が緊急ショートステイを利用する際には、紹介状がなくても利用可能な取り組みを行っている。
 さらに、在宅や高齢者施設からの救急のニーズの高まりを受けて、一昨年、地域包括ケア病棟を開設した。急性期治療を終えた患者の受け入れと、地域の在宅医や介護施設のサブアキュートの受け入れに努めている。

医療介護連携

 永生会は八王子市内で多数の介護事業所の運営を行っており、地域連携を進めるうえでは、医療とこれらの介護事業所との法人内連携や地域住民との連携が不可欠となっている。
 法人内連携を強化するために定期的に「永生井戸ばた会議」を実施している。ここでは地域連携室がマスターを務め軽食やアルコール等の飲み物を提供し、各施設から職員が参加し、様々なテーマに関して組織の枠を超えて語り合う場としている。
 また地域住民との連携を強化するために、地域の方々が自由に参加できる「永生ケアカフェ」を定期的に開催している。ここでは「日常のちょっとした相談」「ケアに関する新しいアイデア」をカフェのようなリラックスした空間でおしゃべりしよう!というコンセプトで運営がされている。
 この他、地域の医療関係者向けに「多摩医療経営・政策塾」を開講することで、地域の医療機関関係者のリテラシー向上を図るような機会も提供している。
 さらに地域でのイベントに際しては、永生会のブースを展開し、地域住民とのふれあいや啓蒙の場として積極的に参加している。
 医療介護連携と地域連携として永生会が重視しているものとしては、「永生会在宅総合ケアセンター介護旅行」が挙げられる。これは2006年より年に1~2回の頻度で開催されており、横浜中華街散策、野球観戦ツアー、河口湖温泉ぶどう狩り、東京下町散策など様々な企画が立てられている。永生会全事業所支援の下で、医師、看護師、リハビリスタッフ等と利用者とその家族が、車椅子の使用できるバスをチャーターして介護旅行を行っている。例年好評で法人内連携と地域連携の結晶である。

今後の展望

 今後の地域医療を考えると、2025年から2040年にかけて、後期高齢者が多数亡くなる多死時代が到来する。個々の高齢者のリビングウイルの希望に寄り添う形での看取りの方法が、重要となる。医療ニーズのあまりない高齢者の方たちを施設の中で看取っていくために、医療法人の強みを活かして居住系施設を運営していくべきと考えている。
 また、医療ニーズのあまりない高齢者の方たちが、自宅や施設の中でもともとの慢性疾患の急性増悪で病院へ救急搬送される場合等には、「とことん型」の急性期病院ではなく、「まあまあ型」の急性期以降の病院への搬送を第一に考えるべきであろう。慢性疾患の経過の中で想定される合併症を生じた場合は慢性期病院への搬送が望ましい。むろん、外傷等の予期しない合併症が生じた場合には急性期病院への搬送が優先されることはもちろんである。
 まだまだ乗り越えなくてはならない課題も多い。永生病院は療養病床を主体としたケアミックス病院であるが、急性期病院からの医療ニーズの高い早期転院患者や医療介護ニーズの高い重介護者など様々な方が入院している実態がある。しかし、看護配置は20:1と急性期病院に比べて低く、マンパワーは不足している現状である。
 せん妄や認知症の対応に関しても様々な取り組みを行い、身体抑制を実施しない病院も多く存在している。こうした状況下、救急患者の受け入れを常時行っていくことが難しいのも現実である。
 これは国に対する提言になるが、身体抑制実施率の基準や緊急入院受け入れ率等の基準を設定して、基準を満たせば加配人員に対する予算を付けるなど、救急に力を入れる病院を支援していくことが、医療政策上も求められているのではないだろうか。
 永生会のある八王子市はこれから高齢化が本格化する。永生会の持つ在宅機能を活用するとともに、周囲の医療機関や居住系施設と連携を図り、住み慣れた地域で可能な限り在宅療養を継続する地域包括ケアシステムの推進に貢献することを目指していきたい。

 

全日病ニュース2018年9月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 慢性期の医療について(PDF)

    https://www.ajha.or.jp/guide/pdf/070911.pdf

    急性期病院. 回復期リハ. ビリテーシ. ョン病院. 療養型病院. 亜急性期病床. 【医療療養】
    . 【介護療養】. 亜急性期医療. 慢性期医療. 慢性期医療を提供する病院は、病気の治療
    をし、リハビリテーションに. より自立支援をする場です。高齢者が暮らす生活空間とは ...

  • [2] 第733回/2010年6月1日号

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2010/100601.pdf

    回理事会・第2回常任理事会は4月に入会を申し込んだ10名の入会を承認。 ... しかし、
    現在の全日病は、委員会と支部を基礎にした組織活動、データ(現. 状分析) ...... 1972
    年に創立された医療法人社団永生会は、東京都八王子市に永生病院、南多摩病院、 ...
    1961年に開業した永生病院(628床)は、一般病棟、回復期リハ病棟、医療療養病棟、
    ... 永生病院は、また、慢性期医療の臨床指標開発を進めるTQMセンター、リハビリ
    テーシ.

  • [3] 病院のあり方に関する報告書 (2002年版)

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/20021003.pdf

    2002年10月3日 ... 第5章 慢性期病院のあり方. 1.慢性期 .... ここで最善の医療とは、(1)患者の心身の
    苦痛を軽減・除去し、健康や機能を維持・回復・. 増進する ...... 床で行われるに過ぎず、
    大部分の病床では一般的な急性期医療・あるいは慢性期医療までもが. 行われて ......
    委 員 安 藤 高 朗 (医療法人社団永生会永生病院理事長・院長). 〃.

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