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ホーム全日病ニュース(2018年)第925回/2018年9月15日号医師の宿日直や自己研鑽の取扱いで論点示す...

医師の宿日直や自己研鑽の取扱いで論点示す

医師の宿日直や自己研鑽の取扱いで論点示す

【厚労省・医師の働き方改革検討会】来年1月までに骨子まとめる

 厚生労働省の医師の働き方改革に関する検討会(岩村正彦座長)は9月3日、年度内のとりまとめに向けて今後の検討の進め方を整理するとともに、宿日直や自己研鑽の取扱いを議論した。厚労省が宿日直や自己研鑽に関する論点を示した。引続き、医師に適用する時間外労働の上限規制や勤務環境改善策の検討を行い、来年1月までに骨子をまとめることを了承した。
 今後の議論の進め方については3点に整理。①今後目指す医療提供の姿(国民の医療のかかり方、タスク・シフティング等の効率化、医療従事者の勤務環境改善等)②医師の特殊性を含む医療の特性③医師の働き方に関する制度上の論点(時間外労働の上限時間数の設定、宿日直や自己研鑽等の取扱い等)である。9~ 12月にこれらの観点で議論を行い、1月までに骨子をまとめる。また、医療者の負担軽減につなげるための国民の医療のかかり方に関しては、別途懇談会を設置する予定だ。

 労働時間規制の対象外となる宿日直
 厚労省が宿日直に関する調査結果を示した。それによると、医師の宿日直には、様々なパターンがある。整理すると、①いわゆる「寝当直」などほぼ診療がない状態②一定の頻度で診療が発生。ただしある程度の仮眠や自己研鑽に充てる等の自由利用が可能な時間がある③日中と同程度に診療が発生するもの─に大別できる。
 宿日直の時間をすべて時間外労働に含めると、支払い義務が生じる割増賃金は過大になる。宿日直に伴う医師の負担感も大きく、健康確保や医療安全のために1人の医師の宿日直を減らすことも課題だ。
 現行の労働基準法では、「監視または断続的労働」に従事する者で、使用者が労働基準監督署長の許可を受ければ、時間外労働規制の適用外となり、手当はあっても、割増賃金は支払われない。医師の宿日直も基準を満たせば、適用外の許可を得ることができる。
 しかし、現状の医師の働き方では、この許可を得るのは難しく、ほとんどが宿日直に該当しない恐れがある。そこで、基準の考え方を維持しつつ、医師の働き方に合わせる形で、基準を見直すことが論点になった。現行の宿日直規定は1949年に出されたもので、医療現場の実態も変わっている。
 厚労省は、宿日直に該当する基準を考える論点として、◇病棟当直で、少数の要注意患者の状態変動について、問診等の診察、看護師等他職種に対する指示、確認を行う◇非輪番日等の外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間で、少数の軽症の外来患者やかかりつけ患者の状態変動について、問診等による診察、看護師等他職種に対する指示、確認を行う─を示した。
 このような業務であれば、時間外労働規制の適用外とする見直しだ。この案に賛意を示す意見が委員から出た。
 一方で、「一律の基準で実施すれば、医師不足の地域では大変なことになる。宿日直の実態を地域・診療科別にもう少しきめ細かく把握することが必要だ。労働基準監督署長が医療の特殊性を理解できるかということも心配だ」との懸念も示された。
 なお、適用外の許可を得ている場合でも、昼間と同様の労働を行った場合は、割増賃金の支払いが必要になる。
 また、基準を見直しても、通常の時間外労働に相当する宿日直も少なくないため、宿日直が明確化されれば、多くの病院で割増賃金が増えると考えられる。厚労省は、賃金支払いの適法性を確保しようとすれば、①医師の給与体系の見直し②診療体制の縮小③賃金原資の確保が選択肢になると指摘。これに対しては、「給与体系の見直しとは、基本給を下げて、その分を割増賃金に回すということか。基本給の引下げは避けるべきだ」との意見が出た。

 時間外労働になる自己研鑽とは?
 自己研鑽については、様々な行為がある中で、時間外労働に該当するものとしないものをどう切り分けるかが論点となった。基本的には、使用者の指揮命令下に置かれており、使用者の明示または黙示の指示があれば、労働時間に当たる。
 厚労省は、時間外労働に該当しない事例として、◇病院外で行われている学会や勉強会で、使用者の指示がなく業務時間外に任意で参加◇使用者の指示がなく、業務時間外に任意で行っている執筆活動─をあげた。
 また、議論の前提として、「将来の医療水準を低下させない観点から、医師が有すべき高い自律性や資質の向上を損なわないことが重要」としている。
 これらの論点に対し、委員からは、「自己研鑽の切り分けは難しい。やはり医師を対象とする新たな裁量労働制の検討が必要だ」、「明らかに自己研鑽とは言えないことで、長時間院内で過ごしている医師もいる。見極めが重要になる」などの意見が出た。

 

全日病ニュース2018年9月15日号 HTML版

 

 

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    2018年8月1日 ... そのほか、◇健康確保策◇自己研鑽宿日直◇院外オンコール待機▽休日、勤務間
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