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厚労省予算は31兆8,956億円で過去最大

厚労省予算は31兆8,956億円で過去最大

【来年度予算概算要求】今後の予算編成で自然増を圧縮

 厚生労働省は8月31日、財務省に対して来年度予算の概算要求を提出した。一般会計は31兆8,956億円で、対前年度比7,694億円増(2.5%増)となり、社会保障費の増加で過去最大の金額となった。大部分を占める社会保障費は29兆8,241億円で、その増加分のいわゆる自然増は6,179億円増(2.1%)となった。2019年度予算では、社会保障の伸びに対する枠は示されていないが、過去の経緯を踏まえ、今後の予算編成で自然増の圧縮が求められる見込みだ。
 社会保障費の内訳は医療が11.7兆円、年金が11.8兆円、介護が3兆円、障害が1.6兆円、その他が1.7兆円である。さらに、医療の内訳をみると、協会けんぽが1.2兆円、国民健康保険が3.4兆円、75歳以上の後期高齢者医療制度が5.2兆円、生活保護の医療扶助など公費負担医療が1.9兆円となっている。
 また、政府は予算のメリハリをつけるため、裁量的経費の削減額の3倍まで要望できる「新しい日本のための優先的課題推進枠」を設けている。厚労省は推進枠に2,425億円を要望した。
 来年10月には、消費税を10%に引き上げることが予定されている。これに伴い政府は、「新しい政策パッケージ」で示された「教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保」のための施策を講じるとしている。その費用は消費税財源で賄うとしており、今後の予算編成過程で検討する。

 3つの重点項目に沿って要求
 厚労省の来年度予算の重点事項は、「人生100年時代を見据えた一億総活躍社会の実現」、「全世代型社会保障の基盤強化」の2つの柱に整理されている。具体的には、①働き方改革・人づくり革命・生産性革命②質が高く効率的な保健・医療・介護の提供③すべての人が安心して暮らせる社会に向けた福祉等の推進─で主要な施策をまとめている。以下で、①②の医療・介護に関連する予算要求項目をみていく。
 ①働き方改革・人づくり革命・生産性革命では、医療分野における生産性向上で今年度の1.9億円を大きく上回る24億円を要求した。ICUを遠隔から集中的に管理するTele-ICU体制の整備や電子処方箋の実証などを進める。介護・障害・保育分野における生産性向上でも74億円を計上した。
 介護施設を整備し、介護離職ゼロの実現に向けた施策として、地域医療介護総合確保基金による介護分を位置付けた。金額は今年度と同様に、483億円である。介護人材の確保・処遇改善では、60億円を要求している。
 ②質が高く効率的な保健・医療・介護の提供では、地域医療構想をはじめとした地域医療確保対策が645億円で最も大きい要求額となっているが、大部分は地域医療介護総合確保基金の要求額である。薬剤師・薬局の機能強化のためのモデル事業も含まれている。
 医師偏在対策は120億円を要求した。先の国会で改正医療法等が成立したことを受け、医師少数区域などで勤務した医師の認定制度開始に向け、全国的な医師の配置調整を行う仕組みや、必要なシステムの構築などに関する調査・検討を行う。新専門医制度については、日本専門医機構の研修プログラムのチェック、都道府県と関係学会との調整の支援などを行うとしている。
 災害医療体制の整備では、災害拠点病院とDMAT体制の強化や、医療施設等の耐震化を進め、災害医療体制の充実を図る。今年度の4.2億円から大幅増の55億円を要求した。災害医療体制は、厚労省の「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」で具体的な議論を進めている。
 介護では、「自立支援・重度化防止に向けた取組みの強化」で207億円、「認知症になってからも安心して暮らし続けられる地域づくり」で112億円を計上した。健康寿命の延伸に向けた予防・健康づくりは63億円。そのほかの健康対策では、受動喫煙対策で47億円、がんゲノム医療で58億円、肝炎対策で35億円、難病対策で11億円がある。
 データヘルス改革の予算は443億円とし、今年度の172億円を大きく上回る予算を要求した。NDBや介護保険総合データベースなど各種データベースの連結や、全国的な保健医療情報データベースの整備に向け実証などを行う。2020年度からの本格運用を目指し、医療保険のオンライン資格確認システムを開発する。
 保健医療分野の研究開発は合計686億円。日本医療研究開発機構(AMED)を中心に、革新的な医療技術を実用化するための研究開発などを進める。AI開発として、重点6領域(ゲノム医療、画像診断支援、診断・治療支援、医薬品開発、介護・認知症、手術支援)を置いた。
 医療機関が外国人患者を受け入れる体制の整備では、19億円を計上した。外国人の相談にワンストップで対応できる体制整備や、医療機関における多言語コミュニケーション対応支援などに取り組む。

 

全日病ニュース2018年9月15日号 HTML版

 

 

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