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ホーム全日病ニュース(2018年)第925回/2018年9月15日号医療介護の連携とリハビリテーション...

医療介護の連携とリハビリテーション

医療介護の連携とリハビリテーション

【診療報酬改定シリーズ 2018年度改定への対応⑧】医療保険・診療報酬委員会 委員 西本育夫

 社会保障制度改革にかかる各法案の成立後、それぞれの地域において地域包括ケアシステムの構築が進められている。
 「医療介護の連携の推進」については、その中心に位置づけられ、病院関係者のみならず世の中に広く知れ渡っている課題だと言える。
 今回の改定は医療と介護の連携について、今まで以上に重点が置かれているように思えるが、医療と介護が交差する部分を中心に整理されているため、片側部分にあたる診療報酬側の内容だけを俯瞰しても、これが「医療と介護の連携について重要点」と理解するのは困難だと思う。
 図1は、2018年3月5日の診療報酬改定説明会の資料だ。「医療と介護の連携の推進」として大きく4項目に整理されている。内容についても広く病院関係者が目にする資料なのでご存じの方も多いであろう。

2018年度診療報酬改定 1-5 医療と介護の連携の促進①

 地域の連携体制がリセットされる
 紙面の関係で全ての項目に触れることはできないが、この4項目で医療全体に影響する最も大きな変更点は介護医療院の創設だ。ご存じのとおり、今回の改定では療養病床削減の仕組みがより強力になり、多くの療養病床が介護医療院への転換を余儀なくされる。療養病床や介護医療院の改定後のポイントなどについては、このシリーズ第4回の田蒔委員の解説を参照して欲しいと思うが、この介護医療院の船出を後押しするような仕組みが診療報酬側にも盛り込まれている。
 例えば、医療入院と介護入所の連携にとって一番大きな影響があるのは退院先の連携施設の見直しだ。従来は7対1病床→地域包括ケア病床→在宅復帰に一定の実績がある介護老人保健施設など、2014年改定からのルールによる連携の流れが定着していたが、今回の改定では地域包括ケア病床の中でも最も病床数の多い、在宅復帰率の要件がある上位点数病床から、介護老人保健施設への退院は対象から外れる。このため事実上連携が困難になった。反対に介護医療院への退院は、地域包括ケア病床に加えて、回復期リハビリテーション病床までも在宅復帰先として位置づけられ、回復期機能を受け持つ多くの病床から連携の食指が動く建付けとなった。
 更に介護医療院への連携病床としては、この2つの病床に加えて一部の例外を除く多くの病床から注ぎ込むことができるよう設えられ、正に「介護医療院スペシャル」状態だ。
 介護医療院の創設にあたり、従来からの連携体制に介護医療院を割り込ませるためにはやむを得ないルールかも知れないが、最初にお伝えしたとおり、既に各地域では介護老人保健施設を含め、それぞれの機能を活かした連携体制ができている。
 今回の改定で、これまでの連携体制にリセットを掛けなければならない地域も多いと想像できる。また、地域内に介護老人保健施設はあっても介護医療院がないなど、連携体制に実質的な支障が生じてしまうケースも多いのではないかと思う。
 その他の在宅復帰率の仕組みなどについてはシリーズ第7回の杉村委員の解説が詳しいので併せて参照してもらいたい。

 維持期・生活期のリハビリテーション
 次にリハビリテーションについては、医療保険による要介護・要支援被保険者に対する維持期・生活期の疾患別リハビリの実施が2019年3月まで延長して認められた。ただし、同年4月以降の算定を認めないことも明示されているため注意が必要だ。
 この点については、医療保険の患者が介護保険に移行後も引き続き同じ病院でリハビリを受けられるようにするために人員配置等の施設基準が緩和された。2019年4月以降も医療機関において要介護・要支援被保険者のリハビリを実施する場合は、今年度中に対応を完了させる必要がある。緩和された大まかな内容などは下表を参照して欲しい。
 また、リハビリの計画書も医療保険と介護保険の双方で使用可能な共通様式が新たに定められ、この様式を使用して医療保険から介護保険のリハビリテーション事業所に情報提供があった場合の点数も新設された。

【通所リハビリテーション施設基準の緩和】※介護予防通所リハビリテーションは含まない

◎診療報酬 2018年2月7日 第389回 中央社会保険医療協議会 総会資料より抜粋(一部加工)

改定前 平成30年度改定後
面積要件 当該保険医療機関が疾患別リハと1時間以上2時間未満の指定通所リハの両方を実施する際には、リハの提供に支障が生じない限り、同一のスペースにおいて行うことも可能。 当該保険医療機関が疾患別リハと指定通所リハの両方を実施する際には、リハの提供に支障が生じない限り、同一のスペースにおいて行うことも可能。
人員配置 ① 疾患別リハの専従の従事者は、疾患別リハの実施時間中は当該リハの提供のみを行う。

② 専従の従事者以外の従事者は、当該医療機関の疾患別リハ実施時間内でも、疾患別リハに従事していない時間に、介護保険のリハに従事することが可能。
① 以下の要件を満たしている場合、疾患別リハの実施時間中であっても、疾患別リハの専従の従事者が介護保険のリハに従事しても差し支えない。
ア、 専従の従事者以外の全ての従事者が介護保険のリハに従事していること。
イ、 専従の従事者が、疾患別リハを提供すべき患者がいない時間帯であること。

② 現行と同様
器具の共有 当該保険医療機関が疾患別リハと1時間以上2時間未満の指定通所リハの両方を実施する際には、必要な機器及び器具の共有が可能。 当該保険医療機関が疾患別リハと指定通所リハの両方を実施する際には、必要な機器及び器具の共有が可能。

◎介護報酬 2018年1月26日 第158回社会保障審議会介護給付費分科会資料より抜粋(一部加工)

改定前 平成30年度改定後
面積要件 介護保険の利用定員と医療保険の患者数の合計数×3㎡以上を満たしていること。 常時、介護保険の利用者数×3㎡以上を満たしていること。
※1時間以上2時間未満の通所リハのみ
人員配置 同一の職種の従業者と交代する場合は、医療保険のリハビリテーションに従事することが可能。 同じ訓練室で実施する場合は、医療保険のリハビリテーションに従事することができる。
※1時間以上2時間未満の通所リハのみ
器具の共有 1時間以上2時間未満の通所リハの場合は、必要な器具の共用が認められる。 サービス提供の時間にかかわらず、医療保険・介護保険のサービスの提供に支障が生じない場合は共用可能。

 必要とされる機能に自ら変化
 今回の改定以降、病院などの医療施設は、一部制限はあっても、介護保険利用の維持期・生活期のリハビリ提供のハードルが下げられるため対応の幅が拡大する。
 反対に、従来の枠組みでは維持期・生活期のリハビリは、地域内のデイケアを提供している介護老人保健施設などと連携していたが、介護医療院の創設に併せて、その流れは先細りするだろう。
 今回の改定の狙いは医療と介護の親和性を高めるためであることは間違いない。しかしながら、従来からの関係にリセットが掛けられ、当面は混沌とした状況がそれぞれの地域で散見されることになると思う。
 各医療機関は、連携地域内の自院の役割を再点検し、必要とされる機能に自ら変化させる努力と勇気が、更に必要になるのではないだろうか。

 

全日病ニュース2018年9月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 在宅復帰率とその他施設との連携|第924回/2018年9月1日号 HTML ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180901/news05.html

    2018年9月1日 ... 全日病ニュース・紙面PDF(2018年9月1日号) PDFリンク ... 改定前の7対1入院基本料
    に相当)については、在宅復帰率から在宅復帰・病床機能連携率に名称の変更が行
    われている。 ... 見直されており、回復期リハビリテーション病棟入院料(以下「回リハ」
    という)や地域包括ケア病棟入院料(以下「地ケア」という)、療養病棟入院 ...

  • [2] 療養病棟は20対1に統一、医療区分2・3は5割以上に|第909回/2018 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180101/news11.html

    2018年1月1日 ... 介護療養病床や医療法施行規則の経過措置が6年間あることを踏まえ、現行の25対1
    と、入院基本料が5%減算される特例 ... 医療・介護連携では、◇介護支援専門員や
    老健施設との情報共有◇介護施設での看取り─などが論点になった。 ... 施設基準で
    求められるリハビリ専門職の常勤要件について、すでに議論した医師や看護師など他の
    職種と同様に、 ... 全日病ニュース2018年1月1日・15日合併号 HTML版.

  • [3] 急性期から回復期・維持期の速やかな連携求める|第888回/2017年2 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170215/news04.html

    2017年2月15日 ... 急性期から回復期・維持期の速やかな連携求める. 全日病ニュース・紙面PDF(2017年
    2月15日号) PDFリンク. 急性期から回復期・ ... 脳卒中の急性期治療終了後の患者像
    は様々で、回復期リハビリテーション病棟の在院日数にばらつきがみられる。また、回復
    期リハ病棟の ... 回復期リハ. ビリテーシ. ョン病院. 療養型病院. 亜急性期病床. 【医療
    療養】. 【介護療養】 . 亜急性期医療. 慢性期医療. 慢性期医療を提供 ...

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