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ホーム全日病ニュース(2018年)第926回/2018年10月1日号医師の宿日直は実態に合わせて基準を見直す...

医師の宿日直は実態に合わせて基準を見直す

医師の宿日直は実態に合わせて基準を見直す

【厚労省・医師の働き方改革検討会】自己研鑽は労働とそれ以外を切り分け

 厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」(岩村正彦座長)は9月19日、宿日直と自己研鑽をテーマに医師の働き方改革の議論を進めた。宿日直では実態に合った基準の見直しが求められたほか、自己研鑽では労働とそうでないものの切り分けが課題となっている。応召義務に関する研究の中間報告も行われた。

 宿日直基準を「現代化」
 医師の宿日直については、次の3つに整理する考えが示されている。①いわゆる「寝当直」など、ほぼ診療がない状態②一定の頻度で診療が発生するが、ある程度の仮眠や自己研鑽に充てる等の自由利用が可能な時間がある③日中と同程度に診療が発生するもの─である。
 このうち、①であれば、現状でも病院の管理者が労働基準監督署長の許可を得ることで、割増賃金を支払う義務のある時間外労働ではなくなる。宿日直に手当てがあるほか、実際に診療があれば、その時間に対しては、割増賃金が支払われる。
 しかし、①以外の場合では、現状で宿日直の許可を得ることは難しい。そこで検討会では、許可の考え方は維持しつつ、現代の医療の実態を踏まえて、許可対象となる業務を例示するなどの見直しを検討している。現行の宿日直基準は1949年に決めたもので、相当時間を経ており、その「現代化」を図るという点では、同日の議論でおいても、概ね委員の共通認識を得た。
 しかし、どのように「現代化」を図るかについては、意見は異なる。許可を与える労働基準監督署長が医療に対する十分な理解を備えているかについても疑問が呈された。さらに、医療者の間でも、病院や診療科によって実態が異なることから、一律な判断は難しく、きめ細かな実態把握が必要との意見が出ている。
 これらの意見を踏まえ、年内の骨子のとりまとめに向け、他の論点を議論した後に、厚労省が具体案を提示することになった。
 一方で、一般の労働者とは異なる働き方改革の規制を検討している中で、「当面の夜間・休日の医療提供体制の維持を理由に、医師について一般則とは異なる特例を設けることは、今回の改正法の趣旨からして困難と考えられる」ことが明確化された。
 また、宿日直前あるいは宿日直後のインターバルの義務化の必要性を主張する意見もあった。一般の労働者に対する働き方改革では、インターバルは努力義務になっている。医師は宿日直を含め、連続勤務が多く、宿日直がいわゆる「寝当直」であっても、疲労感は蓄積されるとの観点から、重要な論点になる方向にある。

 自己研鑽の切り分け困難との意見も
 自己研鑽については、労働とそうでないものに切り分けることが課題となっている。厚労省は前回、「病院外で行われている学会や勉強会で、使用者の指示がなく、業務時間外に任意で参加しているもの」、「使用者の指示がなく、業務時間外に任意で行っている執筆活動」を例示。これらは明らかに労働ではないものとして分類されるが、当てはまらないものをどう整理するかが論点となっている。
 仮に、切り分けることができれば、院内にいても割増賃金の対象にならない時間を労働時間から差し引くなど、管理者の時間管理が必須となる。
 委員からは、「切り分けの基準を設けることができても、運用時に現場で必ず混乱が生じる。Q&Aに応じられる問い合わせ先やガイドラインの整備が不可欠になる」との意見が出た。
 一方、自己研鑽を労働とそうでないものに切り分け、それを管理することは、医師の意欲を減退させる懸念があり、困難であるとの意見も根強い。その場合に、「宿日直と同じように在院時間のバルクで規制をかける案」などが出ている。また、「一括して自己研鑽手当てという形で包括的に評価する案」も提案された。

 応召義務の体系的な整理が必要
 医師の応召義務に関しては、岩田太主任研究者(上智大学教授)が「医療を取り巻く状況の変化等を踏まえた医師法の応召義務の解釈についての研究」の中間報告を行った。
 岩田主任研究者は、医師法第19条に規定する、いわゆる応召義務は、「医師が国に対して負担する公法上の義務であるが、刑事罰は規定されておらず、行政処分の実例も確認されていない。私法上の義務でもなく、医師が患者に対して直接民事上負担する義務ではない」と説明。実態としては、個々の医師の「診療の求めがあれば診療拒否をしてはならない、という職業倫理・規範として機能し、社会的要請や国民の期待を受け止めてきたもの」と整理した。
 その上で、応召義務が「医師の過重労働につながってきた側面があるが、医師には応召義務があるからといって、当然のことながら、際限のない長時間労働を求めていると解することは正当ではない」と強調した。これまでいくつかの裁判事例があるが、いずれも例外的なケースを扱ったものであり、一般に適用する判例にはなっていないとの見解もあわせて示した。
 これらを踏まえ、岩田主任研究者は、応召義務に関し、医師個人が過剰な労働を強いられることのないよう、個別ケースごとの体系的な整理が必要と主張した。

 

全日病ニュース2018年10月1日号 HTML版

 

 

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