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都道府県の医師確保策に向け医師偏在指標示す

都道府県の医師確保策に向け医師偏在指標示す

【厚労省・医師需給分科会】医師少数区域と医師多数区域を設定

 厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会(片峰茂座長)は9月28日、先の国会で成立した改正医療法等を具体化させる議論を始めた。同日は厚労省が、医師偏在指標を提案。医師少数区域や医師多数区域の設定などに用いることを想定している。全日病副会長の神野正博委員は、「ようやく空砲ではなく、実弾を伴った医師偏在対策が講じられる」と歓迎。委員から概ね了解を得た。
 改正医療法等では、「現在・将来人口を踏まえた医療ニーズに基づき、地域ごと、診療科ごと、入院外来ごとの医師の多寡を統一的・客観的に把握できる、医師偏在の度合いを示す医師偏在指標」を導入することを定めている。
 それにより、都道府県内で医師が多い地域と少ない地域を可視化し、都道府県知事が医師偏在の度合いに応じて、「医師少数区域」と「医師多数区域」を指定し、具体的な医師確保対策を講じられるようにする。基本的には、都道府県内で医師多数地域から医師少数地域に医師を動かす対策が検討されることになる。
 現状では、医師偏在を表す指標として、人口10万人対医師数が一般的に用いられている。しかし、医師の性別・年齢分布や診療科などが反映されておらず、医師の偏在を統一的に測る「ものさし」になっていないとの問題があった。医師偏在を地域の実情に合った形で、適切に示す指標が求められていた。
 今回、厚労省が提案した医師偏在指標は、人口10万人対医師数をベースに、地域ごとに性・年齢階級による受療率の違いを調整したもの。現在の医師数を前提に、各種要因を調整した上で、地域ごとに相対的な医師の「多い・少ない」を判断する指標だ。したがって、日本全体でどれだけ医師数が必要かという議論は、医師の働き方改革の議論などを踏まえ、今後改めて実施する医師需給推計の検討の場に委ねられる。
 同日も、理想の医師数を目指して、医師偏在指標を検討すべきとの意見が出たが、それは別の議論に譲り、今回の医師偏在指標においては、現状の医師数を前提とすることで合意を得た。
 一方、医師偏在指標への反映が必要になる要因については、以下のように対応する。
 患者の流出入については、患者住所地を基準に流出入実態を踏まえ、都道府県間調整を行う。これに関して、「訪日外国人が増加している中で、居住していない患者の動向の把握も必要」との意見も出た。また、東京と埼玉、神奈川など夜間人口と昼間人口が大きく異なる地域の調整も行う。
 無医・準無医地区は、そもそも人口が少なく、医師偏在指標では医師少数区域にならない場合がある。このため、法律上、医師の確保を特に図るべきとされている地域については、一定の考え方のもと、医師少数区域に含める。神野委員は、医師少数区域に含める地域を考える上で、「社会的インフラの状況が医療へのアクセスに直結する。実態を把握するため、都道府県から十分な情報を得て検討する必要がある」と述べた。
 地域住民の人口を性・年齢階級別に区分するだけでなく、医師数も、性別・年齢階級別に区分して、平均労働時間の違いを調整する。これにより、性・年齢階級別に労働時間が異なる問題に対処する。入院外来別の医師偏在は今後、外来医療機能の不足・偏在を検討する際に改めて議論する。
 診療科別の医師偏在は、喫緊の対応として先行的に、小児科と産科の指標の考え方を暫定的に提示した。周産期医療と小児医療は、医療計画上、特に政策的な対応が必要とされているにもかかわらず、医師数が相対的に少なく、増加割合も低く、人口当たり医師数の分布が他の診療科と異なることが背景にある。他の診療科と比べ、代表的な指標を作りやすいことも理由だ。
 具体的には、産科では、15~ 49歳人口当たりの分娩数を基準として、指標を作成する。小児科では、15歳未満の人口をもとに指標を作成する。その際、小児科に限らず、内科医や耳鼻咽喉科でも診療があるため、医療需要の一定割合を小児科が対応していると考える。

 

全日病ニュース2018年10月15日号 HTML版

 

 

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