全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2018年)第929回/2018年11月15日号入院料シェアを考慮し補てんのばらつきを改善...

入院料シェアを考慮し補てんのばらつきを改善

入院料シェアを考慮し補てんのばらつきを改善

【中医協・医療機関等の消費税負担分科会】見込み違いは最新データで是正

 中医協の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」(荒井耕分科会長)は10月31日、来年10月の消費税率10%への引上げにより、病院に生じる控除対象外消費税の負担に対する診療報酬の補てんについて改善策の方向性を合意した。厚生労働省が病院全体の補てん不足と病院種別のばらつきを是正するため、病院の収入全体に占める入院料シェアを考慮し、補てん点数を決定するなどの案を提示。全日病会長の猪口雄二委員は、その方向で議論を進めることに賛成した。

課税経費率の見込み違いなどを改善

 診療報酬の補てんによる控除対象外消費税の現行の対応は、まず補てんのための財源を、医科・歯科・調剤の医療費シェア、次に病院と診療所の医療費シェア、その後に病院の入院料間での医療費シェアに応じて配分。その上で、医療機関に生じる控除対象外消費税を入院料種別ごとの課税経費率で把握し、補てん必要額を算出。基本診療料に上乗せした補てん点数に、想定した1年間の点数の算定回数を乗じた収入が、補てん必要額に見合うよう設定している。
 このため、医療費シェアや課税経費率の変化、算定回数の見込み違いが補てん不足やばらつきの要因になる。消費税が5%から8%に上がった2014年度の対応では、病院全体の補てん不足が15%ほどあり、病院種別ごとのばらつきも大きいことが検証で明らかになった。検証の結果、初再診料や入院料の算定回数が見込みより少ないなど、実態と異なったことがわかっている。
 これを改善するには、基本的には、①医療費シェアの変化②課税経費率の変化③算定回数の見込み─をより実態に近づけることで、対応する。
 厚労省は、見込みと実績の誤差を最小化する観点から、直近の通年実績のNDBデータを活用する考えを示した。課税経費率については、直近の医療経済実態調査のデータを使用し、算出区分を見直すなど、いくつかの工夫を施して、正確な把握に努める方針を示している。

入院料シェアが低い病院への対応

 だが、これらとは別に、病院には入院料種別ごとに入院料シェアが異なるという大きな問題がある。実際の補てんが基本診療料など入院料で行われるため、入院料シェアが相対的に低い病院種別では、補てん不足の傾向が生じる。
 例えば、一般病棟入院基本料(7対1)の点数(1,566点)に対する補てん割合は25点で1.6%、精神病棟入院基本料(15対1)の点数(811点)に対する補てん割合は13点で1.6%となり、同じだった。しかし、収入全体に占める入院料のシェアが、7対1の方が低い傾向にあるため、補てん不足が生じやすくなる(点数は当時)。
 今回厚労省は、この問題への対応策を示した。具体的には、入院料種別ごとに、入院基本料、特定入院料それぞれの収入におけるシェアが異なるため、種別ごとのそれぞれの収入におけるシェアを考慮し、消費税負担に見合う補てん割合を設定する。入院基本料と特定入院料の補てん幅の決定方法の詳細などは今後検討する。
 その際に、病院に対する補てんにおける初再診料と入院料の比率を変え、入院料の割合を高める。2014年度改定では、病院に配分される財源の範囲で、まず診療所に乗せた点数と同じ点数を初再診料に乗せ、余った財源を入院料に乗せる手法を用いた。しかし、病院間のばらつきの補てんの要因の一つになっている可能性があるため見直す。ただし、患者の納得感などの理由により、病院と診療所の初再診料は同一とし、点数差は設けない。
 これらを受け、猪口委員は、「今回の案は前回よりも現実に即している。7対1入院基本料を算定するような大型急性期病院は、全体の収入が入院基本料をはるかに超えるため、いくら課税経費率を考慮しても、入院基本料毎に異なる課税経費額を考慮しなければ、補てん不足が生じる」と述べ、見直し案に賛成した。一方で、「個別項目」で対応することには、「精緻化は難しい」と否定的な考えを示した。
 「個別項目」に関して、2014年度改定では、「可能な限りわかりやすい形で上乗せする」との観点から、「基本診療料との関係上、上乗せしなければ不合理になると思われる項目等に補完的に上乗せする」との対応にとどめている。「個別項目」では、「検査」と「手術」が基本診療料以外の診療報酬に占める割合が高い。「検査」の病院ごとのばらつきは小さいが、「手術」は大きい傾向がある。
 厚労省は各病院の「手術」の補てん状況を分析。「手術」の割合と課税経費率に特段の相関関係はなかったが、「手術」と「補てん率」の相関関係では、「緩やかな負の相関関係」がみられた。つまり、手術の割合が高いほど、補てん率が低くなる傾向があった。
 ただ、「手術」に関して、そのようなデータを示したものの、「個別項目」全体としては、「病院ごとにばらつきが出ない個別の点数配点は、現実的に困難であり、かつ、事後的な検証も困難」との見解を厚労省は示した。猪口委員も、「個々の病院のばらつきをなくすことは不可能で、それを解決するには診療報酬以外の対応が必要となる」と述べた。
 一方、支払側の委員は、「『個別項目』では対応しないという結論にはまだしたくない」と発言。それを判断するための詳細なデータの提示を厚労省に求めた。

歯科と調剤の対応を概ね了承
 歯科と調剤の対応では、概ね了承した。歯科は原則として初再診料に配分するとの考えを踏襲する。補てん点数の設定に当たっては、直近の通年実績のNDBデータを使用して、より適切な配点を行う。改定率が決定した後、年明け以降に具体的な点数が明らかになる。調剤も原則として調剤基本料に配分するとの考えを踏襲する。補てん点数の設定に当たっても、歯科と同様の取扱いとする。

 

全日病ニュース2018年11月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 控除対象外消費税の大幅な補てん不足が明らかに|第923回/2018年 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180815/news01.html

    2018年8月15日 ... 厚生労働省は7月25日の中医協・医療機関等における消費税負担に関する分科会(
    荒井耕分科会長)で、控除対象外消費税に対する診療報酬の補てんにおいて、大幅な
    不足があることを明らかにした。これまでは、病院類型によりばらつきは ...

  • [2] 控除対象外消費税問題で税制上の仕組みを提言|第925回/2018年9 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180915/news01.html

    2018年9月15日 ... 控除対象外消費税を診療報酬で補てんする現在の仕組みは、医療機関によって補てん
    額にばらつきが生じるのは避けられず、根本的な解決を図るには、医療に対する消費税
    を課税とし、患者に負担を求めるべきだという意見がある。しかし、 ...

  • [3] 控除対象外消費税問題解消のための新たな税制上の仕組みについての ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20181001/news09.html

    2018年10月1日 ... 控除対象外消費税問題解消のための新たな税制上の仕組みについての提言─消費
    税率10%への引上げに向け ... 診療報酬への補てんについては、消費税率10%への
    引き上げ時に医療機関等種類別の補てんばらつきを丁寧に検証し ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。