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ホーム全日病ニュース(2018年)第929回/2018年11月15日号全日病総合医育成事業をめぐり議論...

全日病総合医育成事業をめぐり議論

全日病総合医育成事業をめぐり議論

【プライマリ・ケア検討委員会】プライマリ・ケア検討委員会 委員長 牧角寛郎

 社会構造の変化と医療の持続可能性への不透明感等により、病院を取り巻く環境は激変しており、地域に密着した病院は、今後、臓器別にとらわれない幅広い診療、多様なアクセスを担保する診療が求められ、患者の生活全体を視野に入れた総合的な病院機能の改善を図る必要がある。こうした課題の解決に取り組む人材として、総合診療専門医が注目を集める一方、その養成制度は2018年度に始まったばかりであり、全国的に行き渡るには相応の時間を要する。こうした時代の変化に対応すべく、当協会では2018年度より「全日病協会病院総合医育成事業」を開始した。
 同事業の開始に伴い、今学会のテーマも「全日本病院協会総合医育成事業について」として、講演が行われた。本事業の運営を主導するプライマリ・ケア検討委員会から、小川聡子副委員長と同委員会の宮地千尋委員が座長を務め、「姉妹」と称しての軽妙な掛け合いを展開した女性座長二人から、本セッションの狙いについて説明があった。
 独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)尾身茂理事長が登壇し、「総合医育成事業への期待」について語られた。医師の絶対数は増加の一途をたどっている一方、その地域差は激しく、地域によっては少数の医師数で多科に渡る診療を行わざるを得ない点を指摘するとともに、医療の質・効率の向上の観点から、地域で働く総合医と病院で働く総合医の必要を訴えた。JCHOでは2017年から総合医の育成のプログラムを策定しており、今年度からは「全日病総合医育成プログラム」との連携がスタート。初年度となる今年度は3名が本プログラムを受講している。

病院に勤務しながらキャリアアップ
 本事業のプロジェクトリーダーを務める井上健一郎委員からは、「全日病総合医育成プログラム」についての概要と実際の状況が説明された。すでに一定のキャリアを持つ医師を主な対象とし、病院に勤務しながら総合医としてのキャリアアップを目指していく。「医療運営コース」2単位、「診療実践コース」22単位、「ノンテクニカルスキルコース」10単位、合計34単位のプログラム構成となっており、期間はおよそ2年程度。修了者には「全日本病院協会認定病院総合医」の認定証を発行する。受講者の平均年齢は52歳、半数程度は病院のトップマネジメントであり、その診療経験は様々であるが、小児の診療経験については、全体の2割程度にとどまっているとの傾向が示された。
 筑波大学の前野哲博教授からは、現在実施されているスクーリングについて説明があった。「プライマリ・ケアの現場で一歩踏み出せること」をコンセプトとし、アクティブラーニングによる実践力向上を通じ、「適切に当直対応をして翌日専門医につなぐ」「典型的なケースをガイドラインに即して治療する」能力の習得を目標としてイメージしている。また前野教授からは他の総合医等の育成プログラムとの比較が示され、本プログラムが総合医を育てるためのスクーリングに特に力を入れている点を強調し、受講者からの好評を得ているとのアンケート結果が示された。
 厚生労働省医政局医事課の加藤琢真医師臨床研修専門官は、医師養成の観点から総合医の必要性を指摘し、今後の施策として卒前卒後の「総合的」教育の必要、総合医に関する病院の理解促進、総合医のキャリアモデルの構築を私案として示した。
 その後パネルディスカッションが行われ、参加者からは、総合医のキャリア形成について質問があがった。井上委員からは本事業を「キャリアアップ」であると考え、総合医が病院に必要な存在であることを、本事業を通じて証明し、病院が今後総合医を受け入れていく環境を醸成する必要を述べた。また、尾身理事長からは、今後若い医師が総合医を目指すために「サクセスストーリー」が必要であるとの意見があがった。
 小川座長は最後に、総合医の必要性と、病院がともに総合医を育てていくことの必要性を述べて、場を閉めた。

 

全日病ニュース2018年11月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 中小病院のあり方に関するプロジェクト委員会報告書

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/199810.pdf

    会、疾病別医療行為検討委員会、医療制度・税制委員会、介護保険プロジェクト委.
    の .... が従来とられてきたが、アクセスを含めたプライマリーケアの充実は我が国の
    医療. の優れ ..... (3)1999年4月より介護サービス実施事業者の指定作業開始される。
    ...... JCAHOの活動状況、審査認定の取扱は今後の方向を検討する上で参考になる。 3

  • [2] 病院のあり方に関する報告書 (2002年版)

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/20021003.pdf

    2002年10月3日 ... 患者の危険の回避や事故防止は、本報告書では. 医療の安全確保 ... 病院のあり方を
    検討し、病院や病院団体の進むべき方向を示すことは全日病の重要な役割で. ある。
    個々の病院は ... 全日病は会員に対してその支援を行う必要があるという認識のもと、
    2001 年、DRG 委員会 ..... 4 JCAHOJoint Commission on Accreditation of
    Healthcare Organizations ..... (2)外来機能のうちプライマリーケアについては病院
    種別に関係なく同様に行われている。 ...... 介護サ−ビス実施事業者の指定作業開始。

  • [3] 病院のあり方に関する報告書 (2011年版)

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/2011_arikata.pdf

    達成するため、本報告書を具体的な活動の基本と位置づけ、各種委員会を中心に種々
    の取. り組みを ... る医療・介護提供体制は既存体系の延長では不可能であり、早急な
    検討課題と考えたから ..... 集約型の事業であり、介護ロボットの出現等に ..... プライマリ
    ケアを担う医師や専門医の資格と ...... 評価の仕組み(JCAHOJoint Commission on.

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