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ホーム全日病ニュース(2018年)第931回/2018年12月15日号医師少数区域の設定や医師確保策を整理...

医師少数区域の設定や医師確保策を整理

医師少数区域の設定や医師確保策を整理

【厚労省・医師需給分科会】地域枠の調査結果も公表

 厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会(片峰茂座長)は11月28日、新たな医師偏在指標により設定する医師少数区域と医師多数区域の関係や、医師偏在是正の手法を整理した。医師多数の都道府県が県内の医師少数区域に医師を派遣する場合、県内で医師を確保し、他の都道府県から引き抜かないようにする。
 都道府県が2020年度から始める医師確保計画においては、医師偏在を解消するため、全国335の二次医療圏のうち、医師が相対的に少ない「医師少数区域」と医師が相対的に多い「医師多数区域」を設定し、医師少数区域に対する医師確保策を図る。同様に、都道府県単位である「医師少数三次医療圏」と「医師多数三次医療圏」も設定する。
 医師の多寡を判断する指標は、これまで用いてきた単純な「人口10万対医師数」が、偏在状況を十分に反映した指標になっていないことから、様々な要素を織り込み、新たに開発した医師偏在指標を用いる。具体的な割合はまだ定まっていないが、医師偏在指標の下位○%を下回れば医師少数区域、上位○%を上回れば医師多数区域となる。それ以外は、医師中程度区域となる。
 医師確保対策の目的は、医師少数区域と医師少数三次医療圏の医師を増やすことにあり、医師の多いところから医師の少ないところに医師を移動させるのが基本だ。その場合に、例えば、医師多数三次医療圏の医師少数区域に、他の都道府県から医師の派遣を募ることのないよう、各区域の場合分けを行う必要が出てくる。同日の検討会では、医師の派遣などにより、医師の確保ができる医療圏・区域を整理した。
 具体的には、医師少数三次医療圏は、医師派遣を他の医師多数三次医療圏に要請できるが、医師多数三次医療圏はできない。医師中程度三次医療圏は、「必要に応じて」できる。同様に、医師少数区域は、他の医師少数区域に医師派遣を要請できるが、医師多数区域はできない。医師中程度区域は、「必要に応じて」できる。ただ、医師多数三次医療圏・区域であっても、個別の医療機関が医師を確保することは妨げない。
 医師不足については、現時点で不足している「短期」と将来的に不足する「長期」の時間軸の違いもあり、それに応じて対策も異なる。短期的には、医師派遣や様々な定着促進策が重要になるが、長期的には、大学医学部に対する地域枠・地元出身者枠など養成段階での対策が重要になるとした。
 また、二次医療圏よりも小さい「医師少数地区」も設定し、医師確保策を図る。離島や山間部のへき地など無医地区、準無医地区に対応するためだ。全日病副会長の神野正博委員は、「医師少数地区は、患者少数地区でもある。医療ニーズが少ないところでは、(医師の派遣だけでなく)診療科の見直しや遠隔医療などもう一工夫ないと、医療機関の診療が成り立たない」との懸念を示した。
 医師確保計画に盛り込む医師偏在対策を実効性あるものにするため、国の支援を含め、都道府県の体制を整える必要がある。都道府県において、具体的な対策は地域医療対策協議会で協議し、案を作成する。案は都道府県医療審議会の意見を聴いた上で決定する。医師確保計画に目標医師数を定め、計画終了時に医師偏在指標の値で達成度を評価する。
 厚労省は、地域住民に対する情報提供の観点から、地域の医師偏在の改善状況を国が可視化し、公表するとの考えも示した。

地域枠は「手挙げ方式」で離脱多い

 厚労省と文部科学省による地域枠の現状の調査結果が示された。地域枠では、特定の地域と診療科の両方で診療義務があるが、2018年度の1,197人の地域枠学生のうち、実際には地域枠とは言えない形での入学が少なくない「手挙げ方式」で選抜された地域枠学生が461人であることがわかった。厚労省は医師不足対策による臨時増員では、「別枠方式」で地域枠の医師を確保するよう、都道府県に10月25日付けで通知している。
 地域枠での選抜では、「別枠方式」と「手挙げ方式」がある。「別枠方式」は、一般枠とは別枠で選抜する方式で、一般枠より前に入試を行う「先行型」と同時に実施する「区別型」がある。「手挙げ方式」は一般枠と共通で選抜するもので、事前に地域枠と一般枠の希望を区別する「事前型」と入学後に地域枠を募集する「事後型」がある。
 2008年度からの臨時増員の通算で、奨学金が貸与されず診療義務が発生しなかった学生は「別枠方式」で5%(291人)、「手挙げ方式」で31%(1,172人)だった。さらに、奨学金を返済し、地域枠から離脱する学生は「別枠方式」で6%(100人)、「手挙げ方式」で16%(152人)と見込まれた。離脱者は特に、「手挙げ方式」の「事後型」で多く、106人と推測される。
 多くの場合、地域枠は一般枠よりも偏差値が低くなるため、大学側には一般枠で選抜したいインセンティブが働く。しかし厚労省は、地域枠の名目で定員を増やし、結果的に、地域枠ではなく、一般枠の定員が増えることは、一連の医師不足対策の趣旨として、不適切との見解を示している。
 奨学金の貸与実績が悪く、地域枠の充足率がゼロ%の大学は、帝京大学(福島)、北里大学、近畿大学(大阪、奈良)、岡山大学、鳥取大学、久留米大学だった。これらの大学は臨時増員が1~5人で少ないが、臨時増員が多く、充足率も低い大学としては、東北大学(充足率52%)、山形大学(同52%)、筑波大学( 同64%)、千葉大学( 同20%)、長崎大学(同57%)がある。

 

全日病ニュース2018年12月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 公益社団法人 全日本病院協会 会長 殿 医政発07 2 5第1 1号 平成3 0年 ...

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2018/180730_1.pdf

    2018年7月25日 ... (1) 医師少数区域等における医療の提供に関する知見を有するために必要な経験を有.
    する医師 ... i 二次医療国及び三次医療圏における医師の確保の方針 ... に関する指標
    を踏まえて定める三次医療圏において確保すべき医師の数の自. 標.

  • [2] 医療法及び医師法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法令の改正 ...

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2018/180726_2.pdf

    2018年7月25日 ... (1) 医師少数区域等における医療の提供に関する知見を有するために必要な経験を有.
    する医師の認定に関する事項 ... ⅲ 厚生労働省令で定める方法により算定された三次
    医療圏における医師の数. に関する指標を踏まえて定める三次医療 ...

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2018年3月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2018/180301.pdf

    2018年3月1日 ... 一昨年の地域医療構想策定に携わり、. 現在、県の第7 ... 厚生労働省の「医師の働き
    方改革に. 関する検討会」( .... 医療圏に1病院が指定されているが、. 間違いなく ..... ①「
    医師少数区域」等における医療の. 確保のため ... 師多数区域」(仮称)を定めることがで.
    きることと ...... 了し、3次募集の手続きに入っている。 2月16日から ...

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