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28時間連続勤務制限、9時間インターバル

28時間連続勤務制限、9時間インターバル

【厚労省・働き方改革検討会】時間外特例上限の医療機関に義務化

 厚生労働省は12月17日の「医師の働き方改革に関する検討会」(岩村正彦座長)に、医師の時間外労働の上限設定の特例で義務化する連続勤務時間制限を28時間、勤務間インターバルを9時間とする案を提示した。病院側の委員からは「義務化されると、地域の病院の診療体制が持つか疑問」との声が上がった。一方、労働組合の委員は、これらの健康確保措置を設けても、特例が現行の長時間労働を放置させることになると反対している。
 厚労省令で定め、2024年度から適用される医師の時間外労働規制における上限時間は、達成を目指すものとして、「脳・心臓疾患の労災認定基準を考慮した水準」を設ける。休日労働込みの時間数として考えると、年間960時間程度となる。これに加え、健康確保措置として、連続勤務時間制限・勤務間インターバルの確保・代償休暇を努力義務とする。
 この水準を満たせない場合の特例として、救急医療などを想定した「地域医療の観点から検討するもの」と研修医などを想定した「医療の質の維持・向上の観点から検討するもの」があり、対象医療機関を指定する。この場合は、より高い上限を設定する代わりに、連続時間制限・勤務間インターバルの確保・代償休暇が義務となる。
 連続勤務時間制限は、米国卒後医学教育認定協議会(ACGME)の例を参考に28時間(24時間+引継ぎ4時間)が提案された。医療法で、病院の管理者は医師に当直させることを義務づけており、医師が当直勤務日に十分な睡眠を確保できないケースがある。その場合でも、勤務後にまとまった休息が取れるようにする。
 勤務間インターバルは、当直と当直明けの日を除き、24時間の中で、9時間程度を超える連続勤務の後の次の勤務までに、9時間のインターバル(休息)を確保できるようにすることを提案した。これは、同検討会でのヒアリングの結果を踏まえ、勤務日において最低限必要な睡眠として、1日6時間を確保できることを基本としたものだ。
 このため、当直明けの日は、28時間連続勤務制限を導入した上で、この後の勤務間インターバルは9時間×2日分の18時間とする。
 ただ、医療現場では、いわゆる「準夜帯」である24時頃までに、特に時間外対応が生じやすく、翌朝は7~8時前後から業務が始まる。厚労省は、こうした実態を踏まえると、勤務間インターバルを導入するには、「かなりの改革が必要」と指摘。具体的な取組みとして、「病棟業務における抜本的な術後管理のタスク・シフティング(特定行為研修修了看護師)、タスク・シェア(他科の医師)」、「事務作業の医師事務作業補助者へのタスク・シフティング」をあげた。
 また、この水準であっても、実際に睡眠が確保され、健康が維持されているかは個人差があることから、追加的健康確保措置として、面接や健康状態の個別的モニタリングによって健康状態を把握し、必要な場合には就業上の措置につなげることを提案した。
 厚労省はこれらの措置を導入することによって、極めて長い時間労働が常態化している医師の労働時間が、時間をかけて、大幅に削減されることを期待する。時間外労働が年間2,400時間を超える医師は4.5%、1,920時間以上は10.5%、1,440時間以上は22.1%、960時間以上は40.5%とされる。これを960時間に近づくよう減らしていくことが、今後の課題となる。
 ただ、地域医療の現状をみると、医師に対する時間外労働規制の施行が2024年度からではあっても、対応が難しい病院が出てくる。社会医療法人ペガサス理事長の馬場武彦委員は、28時間連続勤務制限や9時間インターバルの義務化に対し、地域医療確保の観点から難色を示した上で、経過措置を設けることを求めた。千葉大学医学部附属病院院長の山本修一委員も、「大学病院も回らなくなる」と訴えた。
 一方、「長時間の手術や急患の対応などやむを得ない事情で必要な休息時間を確保できない場合」は、その分を積み立て、別途休暇を取得させる「代償休暇」もあわせて提案されている。これに対し、労働組合の委員は「代償休暇」が実際に使われているかの資料を提示するよう厚労省に求めた。

 

全日病ニュース2019年1月1日・15日合併号 HTML版

 

 

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