全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2019年)第937回/2019年4月1日号植込み型補助人工心臓の療法で実施を見合わせ...

植込み型補助人工心臓の療法で実施を見合わせ

植込み型補助人工心臓の療法で実施を見合わせ

【厚労省・患者申出療養評価会議】患者死亡で因果関係否定できず

 厚生労働省の「患者申出療養評価会議」(福井次矢座長)は3月14日、大阪大学医学部附属病院で実施されていた「耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓による療法」について、患者の死亡例に伴う適切な対応が行われるまで、実施を見合わせるべきとの意見で一致した。大阪大学医学部附属病院は、除外基準の変更などで対応する申請をしていたが、慎重な対応を求める意見が相次いだ。
 同療法は、腹部コネクターを用いる形で承認されている「植込み型補助人工心臓システム」を、耳介後部コネクターで行った場合の安全性を確認するもの。3例中2例で患者が亡くなっており、同療法との因果関係が1例では「否定できない」、1例では「低い」と報告されている。
 大阪大学医学部附属病院は、因果関係が「否定できない」「低い」とされた患者の状態を踏まえ、◇右室機能が重度に低下し、術後右心不全のため退院困難が予測される患者◇1年以内にステロイドを1カ月内服した既往がある、または内服中の患者─を除外基準として追加するとの試験実施計画の変更を申請した。
 しかし、委員からは、「技術の適切性の問題よりも、全身状態が悪化した患者に実施されたことが問題」との意見が出て、除外規定の一部変更では、実施を認めないとの結論になった。
 一方、慶應義塾大学病院で実施されていた難治性天疱瘡に対する「リツキシマブ静脈内投与療法」の試験実施計画の変更は了承された。主な変更内容は、臨床研究保険の補償内容の明記や認定臨床研究審査委員会への移行申請に伴う記載変更など。現在の登録症例は6例で、2022年度までで10例を予定している。
 1人の患者に対して実施されていた「チオテパ静脈内投与、カルボプラチン静脈内投与及びエトポシド静脈内投与並びに自家末梢血幹細胞移植術の併用療法」(名古屋大学医学部附属病院)は、評価結果が示された。19歳以下の再発難治性の髄芽腫へのチオテパを含む大量化学療法で、自己末梢血幹細胞移植100日以内の死亡率を評価項目としている。
 試験結果によると、予期された非重篤な有害事象のみで、重篤な有害事象は認めなかった。ただし、移植後172日で再発しており、有効性は「限定的」と考えられた。安全性に問題はなかったが、今回の1例のみで、「安全性・有効性」を判断するのは不可能と判断された。

がん遺伝子パネル検査への対応議論
 がん遺伝子パネル検査の結果に応じた治療方針について、患者申出療養制度を速やかに利用できる体制整備に向けた議論も行った。
 がん遺伝子パネル検査は現在、2種類の製品が薬事承認されており、先進医療としても2種類の検査が実施されている。患者の遺伝子変異に合わせた薬剤や治療法が適切に選択できることが期待されており、先進医療の適格基準を満たせない場合などに、患者申出療養の申請が行われる可能性がある。厚労省は、そのような可能性に備えた体制整備が必要と指摘した。
 現在、がんゲノム医療中核拠点病院の国立がん研究センター中央病院が研究計画書を作成している。研究計画書は認定臨床研究審査委員会の承認を得た上で、同会議で審議する予定だ。
 2017年調査によると、がん遺伝子パネル検査を行った1万945例のうち、①既承認薬が存在する遺伝子が9%、②既承認薬の適応外使用が候補となる遺伝子が9%、③未承認薬(治験等)が候補となる遺伝子が18%、④臨床的意義が不明な遺伝子が64%だった。①の場合は保険診療となるが、②と③で患者申出療養が選択肢となる。

 

全日病ニュース2019年4月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 第2例目は植込み型補助人工心臓による長期在宅治療|第889回 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170301/news06.html

    2017年3月1日 ... 【患者申出療養評価会議】 大阪大学医学部附属病院が実施. 厚生労働省の患者申出
    療養評価会議(福井次矢座長)は2月6日、制度発足後2例目となる患者申出療養を
    了承した。技術名は「耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓 ...

  • [2] 患者の死亡事例の報告受ける|第916回/2018年5月1日号 HTML版 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180501/news07.html

    2018年5月1日 ... ... た重症心不全患者への「耳介後部コネクターを用いた埋込み型補助人工心臓による
    療法」の死亡を含む3つの事例の報告 ... 大阪大学医学部附属病院が申請して2017年
    4月1日より開始された同補助人工心臓による療法は、これまで3例に ...

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2017年3月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170301.pdf

    2017年3月19日 ... した。技術名は「耳介後部コネクター. を用いた植込み型補助人工心臓による. 療法」。
    心臓移植が必要な重症心不全. 患者であるにも関わらず、心機能以外. の理由で基準を
    満たせない患者が対象. になる。 大阪大学医学部附属病院が実施。

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。