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ホーム全日病ニュース(2019年)第937回/2019年4月1日号地域密着型ヘルスケアシステムを構築し質の高い医療と介護...

地域密着型ヘルスケアシステムを構築し質の高い医療と介護、福祉の総合サービス目指す

地域密着型ヘルスケアシステムを構築し
質の高い医療と介護、福祉の総合サービス目指す

【シリーズ●若手経営者に聞く⑤】医療法人聖峰会 田主丸中央病院 理事長 鬼塚一郎

若手病院経営者の本音を聞くシリーズの第5回は、福岡県久留米市の田主丸中央病院の鬼塚一郎理事長にご登場いただいた。祖父の代から続く、聖峰会の理事長に4年前に就任。地域に根差して医療と介護、福祉の総合サービスを提供している。医療政策や病院経営に対する想いを聞いた。

結核療養所として開設
福祉や介護の施設を整備

―法人の概要を教えてください。
 医療法人聖峰会と社会福祉法人ひじり会の2つの法人があり、聖峰会は田主丸中央病院を中心に老人保健施設やデイケアセンター、訪問看護ステーション、グループホーム、さらに小規模多機能型居宅介護の施設を備え、地域の医療・介護のニーズに応えています。
 田主丸中央病院は、29の診療科に343のベッドを有する地域中核病院です。ほかに福岡市西区に聖峰会マリン病院があります。社会福祉法人ひじり会は、特別養護老人ホームやデイサービスセンター、保育所などを運営しています。2つの法人を合わせて、職員数は約1,200人です。
―法人の歴史を教えてくれますか。
 昭和29年に私の祖父である鬼塚利雄が結核療養所として立ち上げたのが始まりです。結核が国民病として恐れられていた頃ですので、町はずれである現在の地を選んで病院を建てたようです。昭和37年に法人化して、医療法人聖峰会を設立しました。
 昭和49年に当時の院長であった鬼塚澄夫(祖父の弟)が病に倒れたため、久留米大学で心臓外科医をしていた私の父(鬼塚俊一、現在の会長)が呼び戻され、35歳で院長に就任しました。結核患者が減り始めていた時期であり、父は救急患者もしっかり治療できる病院にしようとさまざまな改革に取り組み、病床数も増やしました。その一方で、退院しても自宅で十分なケアを受けられずに、再入院してくる高齢者を見かねて、社会福祉法人ひじり会を設立し、老人福祉や介護の施設を世の中に先駆けて整備してきました。

大学病院から戻って
45歳で院長に就任

― 大学病院から田主丸中央病院に戻ったのは、何歳のときですか。
 平成20年ですから、40歳ですね。久留米大学附属病院の循環器内科に所属していましたが、田主丸中央病院に帰ってきて循環器内科の医長として働き始めました。
―大学病院から地域の病院に来て、とまどいはありませんでしたか。
 医局の先生はみな年長で、私より若い医師は1人だけでした。循環器内科の医長といっても他の先生が忙しければ、消化器疾患から肺炎まで何でも診なければなりません。でも、大学ではあまり関わらなかった疾患を多数診たことはいい経験になりました。率先して仕事をして、無理やりにでも診療の幅を広げた時期だったと思います。
 45歳で院長に就任しましたが、その頃には、それなりに幅広い臨床力と多少のリーダーシップを周囲に認めてもらえたかなと思います。
― 平成27年に48歳で理事長に就任した経緯を教えてください。
 当時、法人の60周年記念事業があって、それを機に父から「理事長も任せる」と言われました。病院の運営だけでもたいへんなのに、法人全体の経営となると「大丈夫だろうか」という気持ちもありましたが、「わからないことは聞きながらやろう。やっているうちに理事長らしい仕事ができるようになるだろう」と考えることにしました。
 その頃、若手病院経営者の会のメンバーと親交があり、若くして病院経営を受け継いだ先生を見ていたので、「決して若すぎるということはない。やってやれないことはない」と思えたこともあります。逆に親が健在な時から、経験を積むほうがリスクを避けることができるとも考えました。

組織の世代交代を図り
人口減少に対応する

― 病院経営における課題をどのように考えていますか。
 課題はたくさんありますが、内部的には世代交代をスムーズに進めることが課題です。理事会のメンバーの多くは父が院長や理事長の時代にその職に就いた人で、すでに60歳を超えていますので、どこかの段階で幹部職員の交代も考えなければいけません。組織の世代交代を図る必要がありますが、いまのところどうにかうまく進んでいると思います。
 また、田主丸町も他の地域と同様、高齢化と過疎化が進んでいるので、人口減少にどう対応するかが問われています。撤退する時が一番難しいといいますが、人口が緩やかに少なくなっていく中で、組織を永続し、どう活性化させていくか悩んでいます。病院としては、規模を縮小する必要があるが、そのことで職員のモチベーションが下がったり、雇用に対する不安を感じることがあるかもしれません。介護や福祉または新たな事業に取り組むことで発展の道を示す必要があり、それが出来ているか自問自答しています。

細かなルールをつくるより
成果を評価する体系に

― 医療政策について感ずることはありますか。
 あまりに細かく、箸の上げ下ろしまで指図しているように感じていて、もう少し自由にやらせてほしいと思います。入院料の人員基準や加算の算定などに細かいルールがありすぎて仕事がお役所的になっている。これでは医療がおもしろくなくなってしまいます。目の前の患者さんや利用者にベストマッチのサービスを提供しようと働いているのだから、もう少し自由にさせてほしい。
 回復期リハ病棟で、FIMによってリハビリの成果を見る手法が導入されていますが、これはいいことだと思います。看護師の人数がどれだけかなどは、どうでもいいことです。細かなルールをつくって、その管理や監視のために大きな労力をかけるより、どれだけの成果を上がられるかに主眼をおいた評価体系にしてほしいですね。

災害に対応できる
体制を整える

― 一昨年(2017年)7月の九州北部豪雨で被害はありませんでしたか。
 あの時の豪雨で大きな被害があった朝倉市は、筑後川をはさんだ対岸でしたから、土嚢を用意したのですが、大きな被害はありませんでした。ただ、大雨の被害は毎年のことで、数年前には駐車場が水没して病院の公用車が使えなくなる損害がありました。
 災害はいつ起きてもおかしくないので、災害時に病院の機能を維持できるように備えを怠らないことが大切です。災害拠点病院に手をあげていて、BCPをつくって災害時に対応できるように体制を整えています。
― 医療の質の向上に熱心に取組んでいますね。
 職員に言っていることは、患者さんは自分の親と思って接してほしいということです。自分の親であったら、こういう治療やケアをするだろうかと常に問いかけて診療してほしい。自信をもって自分の親を入院させられるような高い質を目指さなければいけないと言っています。

独立自尊の精神で
公のために尽くす

― 経営者としてどのような病院を目指していますか。
 大学からこの病院に戻ってきた頃は、日本一、世界一の病院を目指したいと思った時期もありましたが、それは少し違うと考えるようになりました。何をもって日本一というかが難しい。心臓手術の症例数であるとか、有名なドクターがいるなどで、病院をランキング付けすることはできますが、当院のような地域密着型のヘルスケアシステムを数字で評価するのは難しいのではないかと思います。
 結局、病院にかかわった人が、よかったと思ってくれることが重要ではないかと考えるようになりました。患者として入院した人や職員として働く人、業者として取引きした人に、いい病院に入院できたとか、いいところで働けたな、いい取引ができたなと思ってもらえる組織であればそれでいいのではないかと思います。数字で表すことは難しいと思いますが、もし職員の幸福度を測る指標があれば、日本一を目指したいですね。
― 人のかかわりを大切していることがわかりました。職員に対して日頃から求めていることはありますか。
 新入職員への挨拶では、毎年、3つのことを言っています。
 一つは、独立自尊の精神を持ってほしいということです。民間の医療法人であり、自分の食い扶持は自分で稼ぐことが基本です。行政や補助金ばかりに頼るのではなく、誇りを持って仕事をしてほしいと言っています。
 二つ目は、自院の利益だけを求めるのではなく、公のために尽くすことです。「地域のために 地域とともに」を理念としていますが、私たちは地域に支えれる存在ですから、地域への貢献を忘れてはいけません。
 三つ目は、変化を恐れないことです。生き残っていくためには、環境の変化に順応する必要があります。自らの本質を見失わずに変化に柔軟に対応してほしいと言っています。

次世代の担い手を
育ててほしい

― 若手病院経営者の会とのかかわりを教えてください。
 10年ほど前に国際医療福祉大の高橋泰先生に勧められて、若手病院経営者の会の発足にかかわるようになりました。若手病院経営者の会は、東日本と西日本の会がありますが、私は西日本の会の幹事をしています。メーリングリストで連絡を取り合って、年に何回か病院見学会など交流しています。毎回、30 ~ 60人が参加しますね。ここで知り合った人たちは、みな同志だと思っています。純粋な気持ちで、悩みながらも情熱をもって地域の医療を考えている人ばかりです。
― 全日病に対して要望はありますか?
 若手経営者育成事業委員会に参加していますが、全日病という組織が硬直化しないためにも次世代の担い手を育てることが大切であり、この委員会は重要な役割を果たしていると認識しています。ぜひ、この委員会を盛り上げて、これからの医療を担う若手経営者を育ててほしいと思います。

【病院の概要】
所在地 福岡県久留米市田主丸町益生田892
病床数 343床(一般病178床、精神科病93床、療養病床72床)
会 長 鬼塚俊一
理事長・院長 鬼塚一郎
診療科目 一般外科(消化器外科など)、脳神経外科、整形外科、心臓血管外科、歯科・口腔外科、眼科、ペインクリニック、放射線科、精神科、リハビリテーション科、一般内科、呼吸器内科・禁煙外来、消化器内科、循環器内科、腎臓内科・透析内科、糖尿病・内分泌内科、血液内科、脳神経内科、リウマチ・膠原病科、泌尿器科、皮膚科、形成外科、もの忘れ外来

 

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全日病サイト内の関連情報
  • [1] 実施機関一覧表 (公益社団法人 全日本病院協会)

    https://www.ajha.or.jp/hms/tokuteikenshin/2018/pdf/ichiran_kenho_h30.pdf

    0110219789 公益社団法人北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院. 007-8505 .....
    0210210639 一般財団法人医療と育成のための研究所清明会 鳴海病院健康管理
    センター. 036-8183 ...... 1312715522 公益財団法人結核予防会 新山手病院. 189-
    0021 ...... 4012710077 医療法人聖峰会 田主丸中央病院 地域保健センター. 839-
    1213 ...

  • [2] ÿþ“−ı[ÅubŒ2 0 1 0 0 3 . xls

    https://www.ajha.or.jp/about_us/project/hospital_list/pdf/100714_list.pdf

    2010年3月3日 ... 病院名. 病院住所. 医療法人重仁会 大谷地病院. 北海道札幌市厚別区大谷地東5-7-
    10. 医療法人臨生会 吉田病院. 北海道名寄市 ..... 財団法人結核予防会 複十字病院.
    東京都清瀬市 ...... 医療法人聖峰会 田主丸中央病院. 福岡県久留米市 ...

  • [3] 実施機関一覧表(公益社団法人 全日本病院協会)

    https://www.ajha.or.jp/hms/tokuteikenshin/2016/pdf/ichiran_h28.pdf

    060-0061 北海道札幌市中央区南1条西13-317-1. 011-271-6050. ○ ...
    0110219789. 公益社団法人北海道勤労者医療協会勤医協中央. 病院. 007-8505
    北海道札幌市東区東苗穂5条1-9-1. 011-782-9124. ○. ○ ...... 公益財団法人結核
    予防会複十字病院. 204-8522 東京都 ...... 4012710077. 医療法人聖峰会田主丸中央
    病院地域保健セン.

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