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医師の働き方改革をめぐる法的規制と今後の課題示す

医師の働き方改革をめぐる法的規制と今後の課題示す

【支部長・副支部長会(特別講演)】厚労省担当官が報告書の内容を説明

 3月30日の臨時総会終了後の支部長・副支部長会では、医師の働き方改革について、厚生労働省の乗越徹哉氏(医政局看護課看護職員確保対策官、医師・看護師等働き方改革推進官)の特別講演があった。医師の働き方改革の報告書は3月28日にまとまったばかり(1面記事参照)。乗越氏は冒頭、「(1,860時間という特例水準の賛否などで)本当に合意できるかが危ぶまれる厳しい状況もあった。最後は各委員が立場を超え、勤務医の勤務環境改善に向けて、まとまることができた」と述べた。
 医師の時間外労働時間の上限については、「最終的には、年間960時間を目指すのが大原則」と強調。1,860時間の特例水準が認められる医療機関についても、外形的な医療機能だけで決まるのではなく、実態として長時間労働があることを確認しなければならないとした。1,860時間は、約2万人の医師がそれを超える時間を現状で働いている水準であることから、今後の5年間でそれをなくしていくことは、「非常に大変な事業」とも指摘した。
 今後、特定の医療機関は医師労働時間短縮計画を立て、PDCA サイクルを回しながら、法適用までの改善を目指すが、都道府県の勤務環境改善支援センターなどが、必要な支援を行っていくとしている。
 1,860時間を導き出した医師の実態調査は、2016年度に行われたもの。今後の医療提供体制、医師偏在対策、勤務環境改善策によって時間外労働の実態も変化することが見込まれることから、医師の労働時間を把握するための調査を適宜行う方針も示した。
 医療機関に対する注文も述べた。医師の働き方改革に関する検討会がまとめた「緊急的な取組」に関する2018年9~ 10月の調査で、「36協定等の自己点検」を行っていない医療機関が26.7%あり、その34.5%が「36協定を締結しておらず、締結の必要もない」と回答している。
 これに対し、「法定労働時間を超える労働が全くないとは考えにくい」と述べ、36協定を結ばずに時間外労働をさせることは違法と指摘するとともに、「今回の改革は管理者が労務管理をきちんとすることが前提」と強調した。その上で、4月以降に改めて調査を実施し、実態の把握に努める方針を示した。
 医師の労働時間を把握する場合に、「研鑽」と「宿日直」の解釈が重要になる。乗越氏は、「使用者の指揮命令下に置かれている時間が労働時間という定義に従って判断する必要がある」とした上で、基本的な考えを説明した。
 宿日直については、1949年に定めた古い規定を「現代化」し、より実態に合ったものに変更する。時間外労働ではなく、宿日直として許可するに当たっては、「特殊の措置を必要としない軽度の、または短時間の業務」が何であるかを明確化するとした。
 研鑽については、「診療ガイドラインや新しい治療法等の勉強」、「学会・院内勉強会等への参加や準備、専門医の取得・更新等」、「当直シフト外で時間外に待機し、診療や見学を行う」などを例示し、労働時間に当たらないものとみなす手続きを定めるとしている。具体的には、研鑽を行うことを上司に申告し、確認を得る。その場合に、院内にいても、通常診療と明確に切り分けるため、白衣を着ないなどの対応が必要になると説明した。
 なお、猪口会長が研鑽と宿日直の明確な基準をいつ公表するかを質問したが、乗越氏は、「まさに今、整理している段階で、できるだけ早く示したい」と回答するにとどめた。
 最後に、今回の働き方改革は、地域医療構想の実現と医師偏在対策とあわせた三位一体の改革であると指摘。これらの改革が進まないと、医師の働き方改革は実現しないと強調した。

 

全日病ニュース2019年4月15日号 HTML版

 

 

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  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2019年4月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/190415.pdf

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