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初診対面なしで緊急避妊薬のオンライン処方認める

初診対面なしで緊急避妊薬のオンライン処方認める

【厚労省・オンライン診療指針見直し検討会】3カ月後の受診などの要件設ける

 厚生労働省のオンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会(山本隆一座長)は3月29日、緊急避妊薬を一定の条件の下で、オンライン診療の初診対面診療原則の例外として認めることを了承した。オンライン診療だけで緊急避妊薬を入手できることには、様々なリスクがある中で、性犯罪が疑われる事例で、緊急避妊薬を求める女性に対応することが必要との意見で一致した。
 初診の対面診療なしのオンライン診療だけで、緊急避妊薬の処方を認めることをめぐっては、前回も議論したが、リスクと必要性の両方の観点から意見があり、産婦人科医など専門家の意見をきいた上で、改めて議論することになっていた。今回、厚労省が専門家の意見を踏まえ、考え方を整理した。
 日本の人工妊娠中絶は2017年度で年間16万4,621人。避妊の手段の一つである緊急避妊薬は処方薬であり、スイッチOTC化も検討されたが、見送られている。一方で、転売による違法な手段による入手が横行している。
 緊急避妊薬は性交後72時間以内に服用する必要があるが、地域によってはアクセスが難しい。性犯罪であれば、被害者が受診を避けることもある。
 一方で、懸念事項としては、◇容易に緊急避妊薬が入手可能になり、適切な避妊法が行われなくなる◇使用者が緊急避妊薬の十分な知識を持っているか疑問◇犯罪被害が疑われる場合は、逆に十分な対応ができなくなる◇転売等による組織的犯罪に使用される恐れがある─が想定される。
 このため、初診対面診療の原則の例外として、緊急避妊薬を認める上で、以下の対応を図る。
 十分な知識を持った医師が処方し、3カ月後の産婦人科受診の約束を取り付ける。1回分のみの処方を徹底し、薬局では薬剤師の前で内服することを推奨する。繰り返し処方を求める利用者には、他の避妊法の紹介や産婦人科受診勧奨を行う。性犯罪の可能性がある場合は、警察署への相談を促す。未成年の場合は、児童相談所に通報する。
 なお、オンライン診療は対面診療が原則。対面なしの診療が行えるものとして、禁煙外来のみ例示されている。

「D to P with D, N」を整理
 オンライン診療における「D to Pwith D」と「D to P with N」(D はドクター、Pはペイシェント、Nはナース)の考え方を整理した。
 「D to P with D」で例示されたのは、術者が手術ロボットと情報通信機器を使って、手術室の遠隔地から患者をリアルタイムで手術する技術だ。日本外科学会の袴田健一氏は、◇すでに日本に手術ロボットが300台以上配備され、5G通信技術の整備で、遠隔手術操作の遅延が解消できる◇オンライン手術は、遠隔診療の理念に合致し、D to Pに属する診療行為であり、ガイドラインに合致する◇質の高い医療の均てん化に寄与する◇関連分野の情報開発を促進する─と説明した。
 これを踏まえ厚労省は、一定の要件で、オンライン診療での外科手術を認めることを提案した。一定の要件としては、以下をあげた。
 適用対象は、遠隔にいる医師でないと実施が困難な手術で、その医師の下に、患者を搬送することが困難である場合とする。情報通信機器は、重大な遅延等が生じない環境を整え、事前に確認する。一時的に通信に不具合が生じる場合に備え、手術の継続が可能な体制を組む。
 ただ、委員からは、未実施の技術であり、山本座長も通信設備の安定性に懸念を示すなど、慎重な意見が相次いだ。詳細な規定を設けることについては、厚労省が改めて整理する。
 また、情報通信機器を用いた遠隔からの高度な専門性を持つ医師による診察・診断についても、手術と同様に、一定の条件を整理した。
 「D to P with N」では、オンライン診療時に、訪問看護の看護師が患者の側にいて、医師は診療の補助行為を看護師に指示し、点滴や注射などを行う状況が想定されている。このような場合の取扱いも、医師による初診対面原則などガイドラインで定めたルールに則った診療を行うべきと整理している。また、医師と看護師の所属機関が異なる場合は、医師と看護師が患者の病状の情報を共有していくことが望ましいとした。

 

全日病ニュース2019年4月15日号 HTML版

 

 

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