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2020年度改定に向け第1ラウンドの議論を開始

2020年度改定に向け第1ラウンドの議論を開始

【中医協総会】「乳幼児期~学童期・思春期」と「周産期」をテーマ

 中医協総会(田辺国昭会長)は4月10日、2020年度診療報酬改定に向けた第1ラウンドの議論を開始した。年代別・世代別の課題をとり上げ、この日は、「乳幼児期~学童期・思春期」と「周産期」をテーマとした。0~ 19歳の受診理由でアレルギー関連疾患が多いことや、発達障害を中心とした精神疾患の受診の急増を踏まえ、かかりつけ医機能の評価を検討することに、多くの委員が賛同した。周産期では、1月に凍結された「妊婦加算」に関して議論があった。
 「乳幼児期~学童期・思春期」の年齢ごとに最多の受診理由(2017年調査)をみると、0歳で予防接種(12.4万人)、1~4歳で喘息(20.7万人)、5~9歳で喘息(15.0万人)、10 ~ 14歳でアレルギー性鼻炎(8.1万人)、15~ 19歳でざ瘡(アクネ)(4.8万人)となっている。
 上位はアレルギー関連疾患が多い。0歳は4位にアトピー性皮膚炎、1~4歳は1位の喘息、5位のアトピー性皮膚炎、5~9歳は1位の喘息、6位のアトピー性皮膚炎、10~ 14歳は1位のアレルギー性鼻炎、3位の喘息、15 ~ 19歳は5位のアレルギー性鼻炎、6位のアトピー性皮膚炎が登場する。
 乳児期のアトピー性皮膚炎が原因で、皮膚によるバリア機能が低下し、後年、食物アレルギーや気管支喘息などを発症するリスクが増加する考え方をアレルギーマーチという。進行を予防するには、早期から介入し、乳児期から幼児・学童期に至るまでの継続的な管理が重要になる。診療報酬では、小児かかりつけ診療料で、アトピー性皮膚炎など慢性疾患のかかりつけ医による継続的な管理を評価しているが、対象は未就学児である。
 20歳未満の疾患では、精神疾患患者の動向も示された。統合失調症やてんかんなど従来からの疾患の患者数の増減は大きくないのに対し、発達障害を中心に「その他の精神および行動の障害」の受診が最近6年間(2011~ 2017年)で倍増している。小児の精神疾患に関連する診療報酬の算定回数も増加傾向にあり、年齢が上がるに従い、通院・在宅精神療法の算定回数が急増する。
 厚生労働省はこれらを踏まえ、特定の疾患が入院から外来を主体とした医療に変化する中で、継続的な管理が必要な疾患の入院・外来のあり方を論点とした。小児期から成人期への移行が円滑に行われる体制も課題とした。医療的ケア児の学校との連携、障害福祉サービスとの関係の整理なども、引続きの課題としている。
 全日病会長の猪口雄二委員は、「小児期からの患者は、成人期になっても小児期からのかかりつけ医がずっと診ている場合がある」と述べ、円滑な移行を支援する必要性を強調した。また、「その他の精神および行動の障害」が最近5年程で倍増したことに対し、詳細な資料を求めるとともに、「その後は中高年までうつ病が1番多くなる。小児期だけでなく、その後の年代との関連も示してほしい」と求めた。
 他の委員からも、小児期のかかりつけ医によるアレルギー関連疾患の早期介入と継続的な管理、成人期への円滑な移行、発達障害を中心とした「その他の精神および行動の障害」への対応を必要とする意見が多かった。ただ、支払側の委員は、「診療報酬の評価は、補助金など他の制度で対応できることとの関係を整理し、メリハリをつける必要がある」と釘をさした。
妊婦加算に関し診療・支払側が意見
 周産期については、妊産婦の高齢化により、糖尿病など妊娠していなくても発症する偶発合併症が増えていることを踏まえた対応が課題とされた。その際に、精神疾患との合併も少なくないことが指摘された。近年の改定では、入院医療におけるハイリスクな妊婦を対象とした診療報酬の充実を図ってきた経緯がある。
 今回、厚労省は、ハイリスクな妊婦とともに、外来での対応が中心となる基礎疾患のある患者への対応、歯科健診や薬の相談など、妊婦を取り巻く健康上の不安などの問題を支援する体制整備を論点とした。
 一方、2018年度改定で、妊娠の継続や胎児に配慮した適切な診療を評価する観点で新設した妊婦加算は今年1月、SNSなどで広がった批判を受け、政治決断により1月から凍結されている。
 これを受け、現在、厚労省の「妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会」が、妊産婦が安心できる医療提供体制の充実や健康管理の推進を含めた妊産婦に対する保健・医療体制を検討している。検討会は6月頃に検討結果をまとめ、中医協に報告。中医協で改めて診療報酬での評価を検討することになっている。
 妊婦加算に関しては、支払側委員が「患者の視点が欠けていたために、凍結された。このことを重く受け止め、自動的に加算されるのではなく、患者の納得感のあるものにしなければならない」と述べた。診療側の委員からは、「妊婦加算の評価の方向性は間違っていない。凍結されたことは重く受け止めなければならないが、診療報酬で医療技術を評価する以上、患者側に負担が生じることに変わりはない」との意見が出た。

在宅自己注射の対象薬剤を追加
 在宅自己注射の対象薬剤として、「ヒドロモルフォン塩酸塩製剤」(販売名:ナルベイン注2㎎、ナルベイン注20㎎)と「デュピルマブ(遺伝子組換え)製剤」( 販売名: デュピクセント皮下注300mgシリンジ)の追加を了承した。「ヒドロモルフォン塩酸塩製剤」は、在宅悪性腫瘍等患者指導管理料と在宅悪性腫瘍患者共同指導管理料の対象薬剤、「デュピルマブ(遺伝子組換え)製剤」は、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤となっている。
 「ヒドロモルフォン塩酸塩製剤」の効能・効果は、中等度から高度の疼痛を伴う各がんにおける鎮痛。「デュピルマブ(遺伝子組換え)製剤」の効能・効果は、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎と気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症または難治の患者に限る)である。
 また、2018年1月に薬事承認された完全ヒト型可溶性TNF α /LTαレセプター製剤である「エタネルセプト(遺伝子組換え)[エタネルセプト後続2]」は、先行バイオ医薬品「エタネルセプト(遺伝子組換え)」が在宅自己注射指導管理料の対象薬剤となっている。特段の問題はないと考えられるため、[エタネルセプト後続2]についても、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤とすることを了承した。

 

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