全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2019年)第940回/2019年5月15日号地域医療構想、働き方改革、偏在対策の三位一体...

地域医療構想、働き方改革、偏在対策の三位一体

地域医療構想、働き方改革、偏在対策の三位一体

【社保審・医療部会】2040年を展望し医療提供体制を改革

 社会保障審議会・医療部会(永井良三部会長)は4月24日、医政局の検討会が最近まとめた報告書などをめぐり議論を行った。厚生労働省は、①地域医療構想の実現②医師・医療従事者の働き方改革③医師偏在対策を三位一体の改革と位置づけ、医療需要が急激に増大する2025年を経て、支え手不足が深刻な人口減少社会への対応が求められる2040年を展望した医療提供体制改革を進める方針を明確にした。
 同日は、①地域医療構想に関するワーキンググループがまとめた地域医療構想推進のための「具体的対応方針の検証に向けた議論の整理(たたき台)」②医師の働き方改革に関する検討会の報告書③医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会がまとめた「第4次中間取りまとめ」が報告された。2040年を展望し、2025年までにこれらを三位一体で推進するとした。
 見取り図はできたものの、これらを実現するには病院を中心とする関係者の多大な労力と意識改革が求められる。行政の体制整備も課題だ。
 委員からは、「地域医療構想と働き方改革と医師偏在対策が相互に関連し、多元連立方程式を解くような状況だ。しかも状況は地域ごとに異なる。これまでにない取組みだ」と実現の難しさが指摘された。また、「地域に派遣できる厚労省の担当官の数も限られており、基本的には、都道府県が担わなければならない。その人材はあるのか」との質問があった。厚労省は、都道府県向けの研修会などを開催し、人材育成に努めるとともに、厚労省として適宜関与していくと回答した。
 地域医療構想を推進するための具体的な対応方針の「議論の整理」に関しては、急性期を担う病院が多い公立・公的病院の再編・統合を先行して進める方針に対し、ある委員が「違和感がある」と述べた。その上で、「回復期・慢性期を担う民間病院の再編・統合の議論が全く進んでいない。運営主体ではなく、医療機能に応じて議論を進めるべきであり、バランスがおかしいと感じる」と主張した。
 これに対して、病院側の委員からは、「公立・公的病院と民間病院が、同じ機能で同じ実績であっても、公立病院などは赤字が補助金等で補てんされる。それを同列で比べるのはおかしい。公立・公的病院の機能の重点化の議論を先行させるのは当たり前」との趣旨の反論が相次いだ。
 厚労省も、「公立・公的病院でなければ担えない分野に重点化が図られているかを確認する」との方針を改めて強調した。その上で、急性期で公民の役割分担が確認された後に、地域に応じた医療提供体制を実現するため、民間病院同士が競合する回復期や慢性期の役割分担の議論につなげていくとの考えを示した。
 医師偏在対策に関しては、厚労省が新たな医師偏在指標で推計した医師多数三次医療圏に対する不満が出た。例えば、都道府県で1位の東京都は医師が突出して多いが、16位の滋賀県は医師多数三次医療圏であっても、全国平均とほとんど差がない水準となっている。このため、「滋賀県が医師多数と言われると違和感がある。数字が独り歩きすると、混乱を招く」と、厚労省に誤解を招かない説明を行うことが求められた。

身寄りがない人への医療でGL作成
 同日の医療部会で、「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」を了承した。医療機関で働く職員を対象に、身寄りがない人が入院する場合の医療機関の対応などをまとめた。
 身寄りがない人とは、①家族や親類への連絡がつかない状況にある人②家族の支援が得られない人も含む。身寄りがない人の入院は、医療費や医療行為の意思決定の問題で医療機関に不安がある。ガイドラインの目的は、身寄りがない場合でも患者に必要な医療が提供される環境を作ることであり、成年後見人の具体的な役割に関しても、整理している。
 医療機関の不安に応える形で、①緊急の連絡先②入院計画書③入院中の必要な物品の準備④入院費等⑤退院支援に関することへの対応を示した。成年後見制度を利用している場合には、医療費の支払いや本人意思の尊重などに関して、医療機関が成年後見人に相談できることを期待し、成年後見人に求める役割を列挙した。
 全日病会長の猪口雄二委員は、「成年後見人はこれまで財産管理の役割を主に担ってきた。これからは本人の意思を尊重した人生の最終段階の医療行為を決める際にも、相談できる成年後見人になってもらえるよう、議論を深めていくべきだ」と述べた。

 

全日病ニュース2019年5月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。