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ホーム全日病ニュース(2019年)第940回/2019年5月15日号青年期~中年期、高齢期、人生の最終段階の課題を議論...

青年期~中年期、高齢期、人生の最終段階の課題を議論

青年期~中年期、高齢期、人生の最終段階の課題を議論

【中医協総会】関連する診療報酬項目で意見の応酬

 中医協総会(田辺国昭会長)は4月24日、2020年度診療報酬改定に向け年代別・世代別の課題で2回目の議論を行った。前回は0~ 19歳までだったが、今回は「青年期~中年期(20 ~ 30代、40~ 60代)」、「高齢期」、「人生の最終段階」に分けてテーマを設定した。
 議論は多岐に及んだが、診療報酬の具体的な項目では、ニコチン依存症管理料やオンライン診療関連、生活習慣病管理料、ACPの普及に向けた診療報酬での評価などで意見が出た。
 「青年期~中年期」では、生活習慣病に対する早期かつ継続的な管理や、治療と仕事の両立のための産業保健との連携などを論点とした。
 生活習慣病のリスクである喫煙については、喫煙率が男女とも低下傾向にある。厚生労働省がニコチン依存症管理料の算定回数の最近の低下が、喫煙率の低下と関連があると説明すると、診療側・支払側の双方から異論が出た。特に、支払側の委員は、「ニコチン依存症管理料を算定する医療を受けても、脱落者が多いので、算定が伸びないのだと思う。同点数は前回改定では見直しがなかった。2020年度改定では、(脱落者が減るよう成果報酬など)要件の見直しを検討したい」と述べた。
 生活習慣病をめぐり、2020年度改定で導入したオンライン診療関連の診療報酬の要件では、診療側・支払側の間で意見の応酬があった。
 支払側は、「オンライン診療は前回、かなり厳しい要件が課された。働き盛りで通院が難しい患者に対して、早期かつ継続的な管理を行うため、要件の緩和が必要」と主張した。これに対し診療側の委員は「医療機関へのアクセスが難しい患者は別だが、利便性だけを強調して要件緩和するのは問題。まずは対面診療と同等であることの確認が必要だ」と慎重な対応を求めた。
 生活習慣病管理料に関しては、算定回数が微減傾向にあることに対し、診療側の委員が「要件が厳しすぎるのではないか」と問いかけたのに対し、支払側の委員は「緩めるのではなく、むしろ、一定の成果に対し、報酬を設けるアウトカム評価を導入すべき」と主張した。
 治療と仕事の両立のための産業保健と連携した取組みでは、生活習慣病だけでなく、精神疾患や女性特有の疾患、がんなどを含めた対応を論点とした。
 日本の労働人口の約3人に1人が何らかの疾病を抱えながら働いている。メンタルヘルス対策や第3期がん対策推進基本計画でも治療と仕事の両立を目指す状況にある。一方で、産業医の専任義務のない事業所は54.5%で、そのうち産業医を選任している事業場は約3~4割と報告された。これらを踏まえた診療報酬の対応が求められた。

地域差や世帯構造踏まえた高齢者対応
 「高齢期」では、フレイルや認知症など高齢期の特性に応じた取組みや口腔機能管理の推進、ポリファーマシー対策などを論点とした。
 高齢化が進展する中で、高齢化の状況は地域差が大きいことや、1人暮らしの増加など世帯構造が変化していることを踏まえた対応の必要性が、厚労省から指摘された。在宅医療では、在宅療養支援診療所が近年横ばいになる一方で、在宅療養支援病院は増加傾向にあることが示された。
 全日病会長の猪口雄二委員は、「居宅系施設への訪問診療が増えている。訪問先に応じた在宅医療のあり方やその評価をもう一度整理すべき」と提案した。また、「2020年度改定は医療・介護同時改定ではないが、訪問看護ステーションからの理学療法士等の訪問と、訪問リハビリテーションの整理も必要だ」と述べた。
 「人生の最終段階」では、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の普及状況を踏まえた人生の最終段階の医療での患者の意思決定支援や、多職種による医療・ケアを論点とした。ACPについては、医療・介護従事者で「よく知っている」との回答は、医師が22.4%、看護師が19.7%、介護職員が7.6%にとどまっている。
 猪口委員は、「ACPの概念は広く、在宅医療や入院など様々な機会を通じて、人生の最終段階の医療を考え、信頼できる人と共有する取組みとしている。これを広げるために診療報酬でどう評価するのがよいか。臨床現場でDNR(do not resuscitate; 組成処置拒否)という事が行われるが、ACPは人生の最終段階の医療を、もう少し具体的に話し合う取組みにつなげるものにしていく必要がある」と述べた。

がん遺伝子パネル検査の要件決める
 同日の中医協総会では、近く保険収載される予定の「がん遺伝子パネル検査」について、検査を実施する医療機関は患者の診療情報をC-CAT(がんゲノム情報管理センター)に提出することなどを算定要件とすることを了承した。また、パネル検査機器をコンパニオン検査(特定の医薬品の適応判定に用いる検査)として実施した場合には、パネル検査としての算定はできないことも決めた。
 がんパネル検査とは、がん組織からがん関連遺伝子領域を濃縮し、DNAシークエンサーにより塩基配列を決定。データベース情報と照合し、がん関連遺伝子の異常を検出することで、その異常に応じた治療法を選択できる。2018年12月に2製品(NCCオンコパネルとFoundationOne CDx)が薬事承認された。また、がんゲノム医療中核拠点病院は2019年4月時点で、全国11カ所、がんゲノム医療連携病院は156カ所となっている。
 がんパネル検査で治療に直接つながる遺伝子情報の発見はまだ限定的。今後、C-CATにデータが収集・分析されることで、新たな治療法などが期待される。また、C-CATへのデータ提出の際には、患者の同意を得るほか、検査結果を患者に返却する。

 

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