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ホーム全日病ニュース(2019年)第940回/2019年5月15日号医師の働き方改革を踏まえ救急医療のあり方を議論...

医師の働き方改革を踏まえ救急医療のあり方を議論

医師の働き方改革を踏まえ救急医療のあり方を議論

【厚労省・救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会】データ統合も課題

 厚生労働省は4月25日の救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会(遠藤久夫座長)に、医師の働き方改革に関する検討会報告書など最近の医療提供体制改革の現状を報告。今後の救急医療のあり方の議論を促した。委員からは、救急救命士の活用などタスクシフティングの推進や救急医療に対応できる医師の裾野を広げるべきとの意見が出た。また、厚労省は、救急医療の質を評価するデータベース作りに向け、医療機関と消防のデータ統合を課題とした。
 日本救急医学会によると、救急医の総労働時間は院内・院外を合わせて、月333時間。時間外労働時間は年間2,000時間を超える水準だ。医師の働き方改革を実現する上で、救急医療のあり方が重要課題の一つとなる。
 2018年4月の日本救急医学会の医師の働き方改革に関する特別委員会の中間報告では、今後の対策として、5点を提言。①救急医個人と管理者が労務管理義務を負う②救急医学会は労務管理に介入する③在院中の自己研鑽時間を設定する④タスクシフティングの推進⑤不要不急の救急医療の制限─をあげている。タスクシフティングの推進では、「救急救命士資格者の雇用促進」をあげた。
 これに関して、日本医療法人協会会長の加納繁照委員が、「検討会として、救急救命士の活用を提言できるのか」と質問。厚労省は、「方向性を示すことはできると考えている」と回答した。
 4月8日に日本医師会がまとめた緊急調査の結果も報告された。それによると、救急部門の医師について、今後5年間で時間外労働の上限の一般則である年間960時間を達成できると回答した3次救急医療機関は4割、2次救急医療機関(救急車千台以上)は5割弱、救急車千台未満では7割にとどまることがわかった。ただ、今後5年間で1,860時間以内に抑えられるかとの回答でも、「割合があまり変わっていないのはなぜか」との質問があり、日医の担当者は精査が必要と述べた。
 委員からは、「大学病院などから医師の引上げがあれば、地域の二次救急は支えられず、その結果、患者が集中する三次救急ももたない。救急医や総合診療専門医だけでなく、すべての医師が総がかりで救急医療に対応しなければならない」といった意見が出た。
 厚労省は、救急医療の質を評価するデータベース作りに向けた論点を提示した。各機関にデータベースがありながら、連結されておらず、救急医療の質の評価が十分にできない現状にあることから、質の評価のために、どの項目を用いるかを検討し、それを統合データベースで収集する方針を示した。
 同日は、大阪府救急医療搬送支援・情報収集・集計分析システム(ORION)が紹介された。消防隊員が活用するスマートフォンのアプリケーションの導入により、いわゆる「たらい回し」が減少したことなどが報告された。

 

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