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ホーム全日病ニュース(2019年)第940回/2019年5月15日号健康寿命は2040年までに3年の延伸を目指す...

健康寿命は2040年までに3年の延伸を目指す

健康寿命は2040年までに3年の延伸を目指す

【厚労省・健康寿命のあり方に関する有識者研究会】

 厚生労働省は3月28日、「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」の報告書を公表し、健康寿命の定義や政策指標としての妥当性について整理するとともに、健康寿命延伸の目標として、「2040年までに男女ともに3年以上延伸する」ことを打ち出した。この目標が達成されると、健康寿命は男女ともに75歳以上となる。

2040年を展望した
社会保障改革の課題の一つ
 厚労省は昨年5月、2040年を展望した社会保障改革の課題を示し、2025年以降は現役世代の急減という新たな局面に対応する必要があり、国民的な議論が必要であると指摘。社会保障の担い手が減っていく状況に対応するため、健康寿命の延伸と医療・介護サービスの生産性向上の2つを政策課題としてあげた。10月には「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」(本部長=根本匠厚生労働大臣)を設置し、部局横断的な政策課題についてプロジェクトチームを設けて検討に着手した。
 「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」は、健康寿命の定義(指標)と延伸の目標について検討するため、同改革本部の「健康寿命延伸タスクフォース」の下に設置された。公衆衛生の研究者など7名で構成され、座長は辻一郎・東北大大学院教授、座長代理は西村周三・医療経済研究機構所長が務めた。昨年12月から非公開で5回の会合を重ね、報告書をまとめた。報告書は、夏を目途に策定する「健康寿命延伸プラン」に活用される予定だ。
 健康指標延伸の目標は、2012年に策定された「健康日本21(第2次)」で設定されている。その算出に当たっては、3年に一度の国民生活基礎調査のデータが使われている。調査票の「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」の質問に対する「ない」の回答を日常生活に制限なしと定め、そこから「日常生活に制限のない期間の平均」を算出し、健康寿命を求めている。
 報告書は、こうした現在の健康寿命の指標は身体的な要素にとどまらず、精神的・社会的要素を幅広く包含しているとして、「健康」の状態を表す指標として妥当との判断を示した。
 ただし、国民生活基礎調査による指標は3年に一度の算出であり、政策に用いる指標としては、毎年・地域ごとに算出できる補完的指標を活用するべきであると指摘。要介護度を活用した指標「日常生活動作が自立している期間の平均」(要介護2以上になるまでの期間)を補完的に利用する考えを示した。
 また、2つの指標の取扱いに混乱を生じないように、報告書は指標の見方・使い方をまとめてQ&Aを付記した。

2040年までに健康寿命を3年伸ばす

 延伸目標については、2016年を起点として、2040年までに健康寿命を男女とも3年以上延伸し、75歳以上とすることを提案した。
 これは、2040年までに平均寿命が2016年比で男性は2.29年、女性は2.50年延伸すると推計されていることを踏まえ、健康寿命の伸びが平均寿命の伸びを上回ることを目指したもの。健康日本21では、平均寿命との差を縮小することを目標としているが、絶対値の目標で示す方がわかりやすいと考えた。2016年の健康寿命は男性72.14年、女性は74.79年であり、2040年までの具体的な目標では男性75.14年以上、女性77.79年以上となる。2040年に目標が達成されれば、平均寿命と健康寿命の差の短縮も図られるとしている。
 2016年の平均寿命は男性では80.98年で、健康寿命との格差は8.84年ある。また女性は87.14年であり、健康寿命との格差は12.35年ある。

 

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