全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2019年)第941回/2019年6月1日号CAR-T細胞療法のキムリアの価格は3,349万円...

CAR-T細胞療法のキムリアの価格は3,349万円

CAR-T細胞療法のキムリアの価格は3,349万円

【中医協総会】ピーク時患者数は216人で72億円にとどまる

 中医協総会(田辺国昭会長)は5月15日、白血病などの治療に効果のある再生医療等製品として、「キムリア点滴静注」(ノバルティスファーマ)の薬価収載を承認した。CAR-T細胞療法という新たな治療法で、患者の血液を採取し、T細胞の遺伝子を改変。再び、点滴で静脈内に投与する。算定価格は3,349万3,407円で過去最高。ただ、ピーク時の年間患者数は216人で、販売金額は72億円にとどまると予測している。
 成分名は「チサゲンレクルユーセル」、効能・効果は「再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病」、「再発又は難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫」、薬理作用は「CAR導入T細胞依存性細胞傷害作用」である。保険収載予定日は5月22日とした。
 3歳~ 21歳以下のB細胞性急性リンパ芽球性白血病患者を対象とした治験では、全寛解率で82%を得ている。他の病態や患者では治療効果は落ちる。B細胞性急性リンパ芽球性白血病の患者の場合、25歳以下に限定するなど、投与対象は、最適使用推進ガイドラインで細かく規定している。
 薬価は原価計算方式で算定し、過去最高額の3,349万3,407円となった。ただ、B細胞性急性リンパ芽球性白血病での米国の価格(AWP)は6,270万円、英国(NHS)の価格は4,117万円であるなど、他国よりは低い。
 キムリア点滴静注は再生医療等製品であり、患者の血液を採取し、遺伝子を改変し、投与するという一連の技術を伴う。このため、薬価以外に診療報酬の手術の技術料を準用し、あわせて算定することになる。具体的には、造血幹細胞採取(1万7,440点)、点滴注射等、増血幹細胞移植(3万850点)を算定できる。
 最適使用推進ガイドラインと保険適用上の留意事項通知も了承した。製品の特徴や臨床成績をはじめ、施設や投与対象となる患者、投与に際して留意すべき事項などを定めている。
 委員からは、高い治療効果のある再生医療等製品の登場を歓迎する一方で、類似の高額な治療法が次々に保険収載されることによる医療保険財政への影響を懸念する意見が出た。特に、支払側の委員からは、原価計算方式による価格設定において、企業の原価の開示が不十分であることに不満が示され、今後の薬価制度見直しの議論で、原価計算方式の見直しが求められた。
 今回、初めての適用となる費用対効果評価の本格導入の対象品目として、効果的に制度が機能することの期待も示された。

大病院の定額負担やかかりつけ医機能次期改定に向けたテーマ幅広く議論
 同日の総会では、2020年度診療報酬改定に向けた第1ラウンドの議論として、①患者・国民から見た医療②かかりつけ医機能③患者に必要な情報や相談支援─をテーマとした。紹介状なしの大病院受診時の定額負担やかかりつけ医機能の評価、患者への情報提供の際の医療者の負担軽減などで、具体的な意見が出た。
 「患者・国民から見た医療」では、日本の医療に「満足」との回答が外来患者の約5~6割、入院患者の約6割と高く、近年も増加傾向にあることが示された(受療行動調査)。一方で、国民1人当たりの医療費負担は「重い」が約7割。重さを感じる点では、「保険料」が6割で最も高く、次いで「医療費そのもの」(54%)、「自己負担費用」(43%)だった。
 一方、高齢化が進展しているにもかかわらず、病院の受診率は低下傾向にある。初診料の算定回数をみると、診療所が病院に比べて多く、病院の割合は減少傾向にある。再診料・外来診療料の算定回数は全体として減少傾向にあり、病院の占める割合も減少傾向にある。長期投与の増加による受診減など様々な理由が考えられるが、外来機能の分化を政策的に進めてきた影響もありそうだ。
 2018年度改定では、紹介状なしで受診すると、定額負担を医療費とは別に徴収することを義務とする対象病院を拡大した。定額負担の最低金額は初診が5千円(歯科3千円)、再診が2,500円(1,500円)。対象病院は2018年度改定で特定機能病院と許可病床400床以上の地域医療支援病院となった。一般病床200床以上の病院も、選定療養として特別の料金を徴収できる。
 厚生労働省は、2018年度改定で拡大対象になった病院が義務化後に、初診患者における紹介状なしの患者で4.4ポイントの低下があったとのデータを示し、一定の効果があったことを示した。
 ただ、支払側の委員は取組みが不十分と指摘。「200床以上の地域医療支援病院であれば、定額負担の対象にすべき」と主張した。
 「かかりつけ医」と「かかりつけ医機能」については、2013年8月の日本医師会・四病院団体協議会の提言で、そのあり方が謳われ、一定程度、定着するに至った。提言では、かかりつけ医を「何でも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときは専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義した。今回、厚労省が紹介した「患者がかかりつけ医に求める役割」をみても、その役割は概ね一致している。
 しかし、診療側の委員は現行の診療報酬では、かかりつけ医の評価が不十分と指摘した。
 一方、支払側の委員は、かかりつけ医機能を評価する観点で、2018年度改定で導入した機能強化加算に対し、「大病院ではなく、まずはかかりつけ医に誘導する手段としての機能強化加算は、(患者負担が増えるため)外来機能分化に逆向きの効果になっている。要件の見直しが必要だ」と述べた。
 患者に必要な情報や相談支援では、文書による交付・説明を要件とする診療報酬項目が示された。これに関しては、診療側の委員から、「文書の提供が求められる診療報酬は多い。業務の効率化が求められる中で、電子カルテシステムを使っても、患者・家族のサインをもらうには紙に出力しなければならない。負担感が大きく、改善してほしい」との要望があった。
 これに対し厚労省は、文書が提供されたことをチェックする監査を含め、一連の業務を電子的な手段で完結できるかを検討するとの考えを示している。

病床数が要件となる項目の整理や病院薬剤師の評価を猪口会長が要望

 全日病会長の猪口雄二委員はこれらの論点に対し、3点を指摘した。
 はじめに、「(地域包括ケア病棟入院料の病棟制限に該当する病床数など)病床数が要件に含まれる診療報酬項目が多くあるが、様々な病床のある大病院や、精神病床のある一般病院がある。基準に『許可病床』と『一般病床』が混在すると、わかりにくく、許可病床だけで決めるのは、無理があると思うので、整理が必要」と述べた。
 次に、在宅療養支援診療所が伸び悩んでいることを指摘。「機能強化も謳われるが、在宅医療を診療所と病院が連携して支えるため、もう少し緩やかな連携を評価してほしい」と、要件の緩和を要望した。
 最後に、病院で働く薬剤師の役割への期待が高まる一方で、「医療機関の薬剤師業務が十分評価されておらず、医療機関の薬剤師業務の総数が薬局の薬剤師の総数と比較して伸びていない」との医薬分業の今後のあり方に関する厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会の報告書の指摘に賛同。診療報酬での評価を求めた。

 

全日病ニュース2019年6月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] チサゲンレクルユーセル製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に ...

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2019/190522_2.pdf

    2019年5月21日 ... チサゲンレクルユーセル製剤「キムリア点滴静注」については、「チサゲンレクルユーセ.
    ルの最適 ... 発又は難治性の CD19 陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病及び
    びまん性大細 .... 効能又は効果:腫瘍特異的 T 細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出
    症候群 ... 体重 50 kg 以下の場合には、CAR 発現生 T 細胞として 0.2×.

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。