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全地域医療支援病院に医師派遣機能を求めることに異論

全地域医療支援病院に医師派遣機能を求めることに異論

【厚労省・特定機能及び地域医療支援病院検討会】議論の整理案示される

 厚生労働省は6月6日、「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」(遠藤久夫座長)に、議論の整理案を示した。しかし、特定機能病院についても地域医療支援病院についても整理案には様々な異論があり、まとまらなかった。特に、すべての地域医療支援病院に医師派遣機能を求めることに反対が相次いだ。医師少数区域などで勤務した医師だけが管理者になれる地域医療支援病院を一部とするか、全部とするかで意見が分かれている。
 2018年に成立した改正医療法等で、医師少数区域などで勤務した医師を厚労大臣が認定し、この認定を受けた医師であることを一定の管理者の要件にすることを決めた。管理者要件の対象となる病院は、医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会の第4次中間取りまとめで、「地域医療支援病院のうち医師派遣・環境整備機能を有する病院」としていた。しかし、厚労省は地域医療支援病院の要件を変更し、すべての地域医療支援病院を対象病院とすることを提案している。
 地域医療支援病院の要件見直しは、医師需給分科会の第2次中間取りまとめで、地域医療支援病院に医師少数区域などを支援する機能が求められていると整理したことを踏まえている。
 現状でも、7割程度の地域医療支援病院が医師派遣などを実施しているという。具体的には、73.7%が「巡回診療の実施」、「医師派遣機能(代診医の派遣を含む)の実施」、「総合診療の部門を持つ」のいずれかを満たしていた。
 また、医師派遣を支える医療機関に対する経済的インセンティブとして、「医師を送り出す医療機関等、認定医師によって質の高いプライマリ・ケア等が提供される医療機関等、認定制度の実効性を高める医療機関」については、税制・補助金・診療報酬上の評価を検討すべきとの考えも示していた。
 現在、地域医療支援病院は診療報酬で患者の入院初日に1,000点を加算できる。その代わりに様々な機能が求められるが、認定要件がより厳しくなれば、補助金等の優遇がある公立・公的病院より民間病院が厳しくなる。地域医療支援病院の認定要件を変更すれば、認定病院の数が増減すると想定され、診療報酬にも大きな影響を与える。
 このため、委員からは、「地域医療支援病院が4機能(①紹介患者への医療提供②医療機器の共同利用③救急医療④医療従事者への研修)をすべて満たす必要があるのか疑問。地域医療支援病院は一定の役割を終えたので、廃止し、4つの機能は個別に診療報酬で評価したほうがよい」との意見も出た。
 厚労省は今回、地域医療支援病院の新たな要件として次の3つを示した。◇医師少数区域等における巡回診療の実施◇医師少数区域等の医療機関への医師派遣機能(代診医の派遣を含む)の実施◇総合診療の部門を持ち、プライマリ・ケアの研修・指導機能を持つ─である。
 この提案に対して、委員から異論が出た。すべての地域医療支援病院に医師派遣機能などを追加することについては、「二桁に近い地域医療支援病院のある医師多数区域がある一方で、地域医療支援病院がひとつもない医師少数区域がある。また、地域医療支援病院でない病院が医師派遣機能を担っている地域もある。地域によって事情が異なり、一律に要件を追加することには反対」といった意見が出た。
 一律に要件を設ければ、その地域が医師少数区域でない場合に、他の地域に医師を派遣しなければならなくなる。全日病副会長の中村康彦委員は、「民間の一般社団法人の地域医療支援病院の立場としては、地域を越えて医師を派遣しなければならないというのは、厳しい」と訴えた。これに対し厚労省は、3つの要件について、地域の実情に応じて、要件を変更できるようにする選択肢があるとの見方を示した。
 地域医療支援病院に対しては、かかりつけ医などを支援する要件も加える方針が示されている。都道府県知事により、地域の実情に応じて追加できる要件との位置づけだ。具体的には、地域医療構想調整会議で地域医療支援病院の機能を協議し、都道府県医療審議会を経て、その機能の実施を求める。

特定機能病院の第三者評価でも異論
 特定機能病院に対する第三者の評価のあり方についても、厚労省が、方向性を示した。しかし、様々な意見が出て、まとまらなかった。
 特定機能病院の要件見直しの議論では、ガバナンスや医療安全に関し、第三者機関の評価を受けることを必須とする方針。だが、「受審すること」を要件とするか、「(第三者評価の)認定を受けること」を要件とするかで意見が分かれている。今回、厚労省は「受審すること」を要件とすることを提案した。
 仮に、「認定」を要件にすると、第三者評価の有無が承認要件の可否に直接影響する。国は実施機関を定め、厳しく監督する必要がある。厚労省は、病院が医療の質向上のため、独自に第三者評価に取り組むことが望ましいとの観点を含め、「受審」を要件とし、複数の実施機関から、病院が主体的に選択することが望ましいとの考えを示した。
 第三者評価で基準に満たないと指摘された事項は、改善することを「努力義務」にする。しかし、「努力義務」では不十分とする意見が相次いだ。

 

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