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緊急避妊薬は原則対面診療。オンラインは例外

緊急避妊薬は原則対面診療。オンラインは例外

【厚労省・オンライン診療指針見直し検討会】対人恐怖がある場合等に限る

 厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(山本隆一座長)は5月31日、オンライン診療で緊急避妊を行う場合の要件などを大筋で了承した。対面診療を基本とし、オンライン診療は「地理的な要因のほか、性犯罪による対人恐怖がある場合」に限る。まずは地域の産婦人科を受診することを求めることにした。安易な緊急避妊薬の入手につながらないよう体制を整える。ただ、対象を広げるべきとの意見もあり、調整する。
 同検討会は、政府の規制改革推進会議などから寄せられるオンライン診療の様々な要件緩和の要望を検討するなど、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の見直しを検討している。
 オンライン診療は初診対面診療が原則だが、オンライン診療だけで完結できる事例の要望が出ている。具体的には、◇男性型脱毛症(AGA)◇勃起不全症(ED)◇季節性アレルギー性鼻炎◇性感染症◇緊急避妊薬が検討対象となった。これまでの議論で、緊急避妊薬以外は初診対面原則の例外とは認められず、見送りが決まっている。
 一方、緊急避妊薬は認める方向で議論が進んだ。予期せぬ妊娠を防ぎたい女性に対応することと、安易な避妊薬の入手につながらない体制整備を図るため、その条件を詰めていた。
 今回、厚労省はこれまでの議論を踏まえ、緊急避妊薬の適切な服用に向けた体制を整理するとともに、オンライン診療における対応を整理した。
 緊急避妊薬の入手については、まずは「地域の産婦人科医を受診すること」を基本とした。インターネットや自治体を通じて、対面診療可能な医療機関を紹介し、受診では産婦人科医や研修を受けたかかりつけ医などが対応する。
 例外として、オンライン診療の対象となるのは、「近くに受診可能な医療機関がない場合(地理的な要件のほか、性犯罪による対人恐怖がある場合)」とした。その場合でも、様々な要件を設ける。また、内服後3週間後には産婦人科を受診してもらい、オンライン診療で完結させない。受診しない事例も想定されるが、その事例を含め、医療機関には当面数年間の全例のフォローアップを求める。
 具体的な要件・取組みでは、◇処方する医師を産婦人科医師と研修受講医師に限定◇研修受講者を厚労省ホームページで公表◇薬剤師の前での一錠のみの内服等ルール整備◇インターネットパトロール等を通じた不適切広告への指導◇薬剤師に対する産婦人科研修強化◇臨床研修医の研修項目に追加─を明示した。
 厚労省の提案に対し、NPO法人COMLの山口育子委員は、「例外とする条件に、精神的な負担がある場合を入れて、もう少しハードルを下げてほしい。対面受診に抵抗感のある場合の対応が必要」と述べた。
 ただ、ハードルを下げることについては、慎重な意見が多かった。オンライン診療を実施している医師は、「診療であることに変わりはなく、オンライン診療であれば、精神的負担が軽減するということはないと思う」と指摘。その上で、「オンライン診療が有効なのはアクセスの容易さであるが、処方箋を郵送し、在庫がある薬局に行くまでの時間を考えれば、対面診療と比べ、時間が短縮されるとはいえない」と説明した。
 日本産婦人科医会の参考人は、「産婦人科は最近女性医師が増えている。特に、お産ではなく、緊急避妊薬に対応する婦人科で増加傾向にある。同じ女性であれば、精神的な負担も軽減されるのではないか」と述べた。また、「オンライン診療だから、24時間夜中でもアクセスできるというのは幻想」と産科医療の現状を訴えた。

 

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