全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2019年)第949回/2019年10月1日号医師の働き方改革をテーマに経営セミナー開く

医師の働き方改革をテーマに経営セミナー開く

医師の働き方改革をテーマに経営セミナー開く

宿日直基準の見直し・医師の研鑽の取扱いを解説

 全日病は9月6日、『医師の働き方改革への対応』をテーマに「2025年に生き残るための経営セミナー」を開き、厚生労働省の担当官から宿日直基準の見直しや医師の研鑽の取扱いについて説明を受けたほか、民間病院における働き方改革の事例紹介を行った。また、猪口会長が、タスクシフト・タスクシェアリングに関して四病協が提出した要望について報告した(3面参照)。
 医師の働き方改革に関する検討会が3月末に報告書をまとめ、2024年度から適用される時間外労働の上限規制および健康確保措置の方向性を示した。また、7月1日には宿日直基準や医師の研鑽の取扱いの通知が示された。
 セミナーでは、厚労省労働基準局労働条件政策課の安里賀奈子・医療労働企画官が医師の働き方改革の動向について講演。「労働力人口の減少により、他業種との間で働き手の獲得競争になる。医療を未来につなげるためにも勤務環境の改善に取り組む必要がある」と強調した。
 2024年4月から医師に適用される時間外労働の上限には3種類の水準がある。診療従事勤務医に適用されるA水準は、一般労働者と同等水準の年960時間/月100時間が上限となる。一方、2024年の段階ですべての医師がA水準で働くとすると、1万人が不足すると推計されるため、2035年までの暫定措置として、1,860時間を上限とするB水準が設定された。B水準は、追加的健康確保措置(連続勤務時間制限、勤務間インターバル、代償休息)が前提となる。また、技術を習得するため、一定期間集中して働く必要がある場合としてC水準(1,860時間が上限)が設定された。各医療機関は、2024年4月に上限規制が適用されるまでの5年間で自らの状況を分析して労働時間の短縮に取り組む必要がある。

宿日直基準の例示を見直す
 医師の働き方改革に関する検討会の議論を踏まえて、宿日直基準の通知を見直し、7月1日付で発出された。宿日直許可は、労働密度がまばらであり、労働時間規制を適用しなくても労働者保護に欠けることのない一定の断続的労働として労働基準監督署の許可を受けた場合に労働時間規制の適用除外とする取扱い。通知は、従来の許可基準を変更するものではないが、近年の医療現場の実態を踏まえて、許可対象となる業務の例示を見直した。例えば、病棟当直においいて、何人かの要注意の患者がいて、具合が悪くなった場合に看護師に指示を出すような業務の場合は宿日直として認められる。
 また、診療科を限定したり、病棟を限定して宿日直許可をとることが可能となり、許可が取りやすくなった。時間帯を限定することも可能で、例えば午後11時以降に患者がほとんど来ない場合は11時以降で宿日直許可を取ることができる。

研鑽に関するルールをつくる
 医師の研鑽の取扱いを示した通知も7月1日に発出されている。自由な意思に基づき、上司の指示なく行う研鑽は労働時間に当たらないと考えられるが、個々の医師が行う研鑽が労働であるかどうかは、医師の経験などを踏まえて上司が業務上必須と考えるかどうかによる。これを労基署が判断することはできないため、研鑽が労働時間に該当するかどうかのルールを病院で決め、ルールに基づいて上司がチェックし、記録として残しておくことが求められる。
 また、通知では、研鑽の類型をあげて考え方を示している。例えば、「手技を向上させるための手術の見学」は、業務上必須ではない見学を上司の明示・黙示による指示なく行う場合、一般的に労働時間に該当しない。ただし、見学中に診療を行った場合は労働時間に該当する。また、見学中に診療を行うことが慣習化、常態化している場合は、見学の時間すべてが労働時間に該当する。
 事例紹介では、HITO病院の石川賀代理事長がiPhoneを活用した情報共有により業務効率を高めた取組みを報告したほか、平成立石病院の大澤秀一院長が、救急科と救急救命士科を設けたことにより、救急業務の負担を軽減した取組みを報告した。

 

全日病ニュース2019年10月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 医師の宿日直は実態に合わせて基準を見直す|第926回/2018年10月 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20181001/news11.html

    2018年10月1日 ... 医師宿日直は実態に合わせて基準を見直す. 【厚労省・医師働き方改革検討会】
    自己研鑽は労働とそれ以外を切り分け. 厚生労働省の「医師働き方改革に関する検討
    会」(岩村正彦座長)は9月19日、宿日直と自己研鑽をテーマに医師 ...

  • [2] 医師の宿日直や自己研鑽の取扱いで論点示す|第925回/2018年9月 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180915/news02.html

    2018年9月15日 ... 厚生労働省の医師働き方改革に関する検討会(岩村正彦座長)は9月3日、年度内の
    とりまとめに向けて今後の検討 ... 厚労省は、宿日直に該当する基準を考える論点として
    、◇病棟当直で、少数の要注意患者の状態変動について、問診等 ...

  • [3] 「医師等の宿日直許可基準」と「医師の研鑽」で通知|第944回/2019年 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190715/news07.html

    2019年7月15日 ... 医師等の宿日直許可基準」と「医師の研鑽」で通知. 【資料】. 厚生労働省は7月1日、「
    医師働き方改革に関する検討会報告書」を踏まえ、「医師等の宿日直許可基準」と「
    医師の研鑽」 に関する通知を発出した。なお、両通知の趣旨を説明する ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。