全日病ニュース

全世代型社会保障検討会議に日医の意見を反映

【特別講演１】横倉義武　日本医師会会長

　医療費など社会保障費が増加していることから、政府は社会保障の給付と負担を議論する方針を示している。医療費のせいで国が滅びるという医療費亡国の論調に乗って、給付抑制や保険外しの主張も一部にある。日本医師会は医療の質を低下させる安易な給付抑制や保険外しには反対であり、与党に対しては、高齢者への大きな負担増は、自民党が下野するきっかけを作った後期高齢者医療制度の「姥捨て山」批判を再燃させると主張している。
　制度の持続可能性を考える上で、将来深刻なのは、税や社会保険料を負担する現役世代の減少だが、支え手を増やすことができれば、問題解決につながる。それには健康寿命の延伸が必要だ。この20年間でかつての75歳の運動能力などは10歳若返っており、高齢になっても、社会参加できる明るい健康長寿社会の実現が、社会保障制度の持続可能性の維持にも重要になる。
　そのためには、すべての国民がかかりつけ医を持ち、かかりつけ医は診断・治療だけでなく、病気を予防し、病気になっても生活を支える機能を果たさなければならない。
　また、地域医療構想調整会議の場を活用した外来医療機能の偏在の把握は、開業制限にならないよう、あくまで地域の実情に応じて、決めるべきである。
　医師偏在対策については、様々な対策を講じて是正を図るべきだが、2023年以降の医学部入学定員の臨時定員増分の取扱いは、今後の医師偏在対策や、ようやく医療現場に出てきた臨時定員増で入学した地域枠医師の動向をみてから、判断すべきである。現状の医師不足をみて、医師の総数が足りないといって、臨時増員分の取扱いを決めれば、将来、禍根を残すことになる。
　医師の働き方に対しては、「国民にとって安全な医療を守るため、医師によるメディカルコントロール（医療統括）の下で業務を行う」ことが日医の基本的な考え方だ。新たな職種の創設ではなく、すでに認められている業務の周知の徹底や、それらが実践されていない場合の着実な検証を求めている。法令改正や現行法解釈の変更による業務拡大をするのであれば、適切なプロセスを経て行うべきである。
　政府は９月20日に、全世代型社会保障検討会議の初会合を開いた。しかし、この会議には医療関係者が構成員に入っておらず、強い不満がある。与党の意見をきく機会を設けるとしているので、その際に、日医の考えがしっかりと反映されるよう、与党に対して日医の意見を伝える予定である。