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ホーム全日病ニュース(2019年)第950回/2019年10月15日号外国人に魅力ある医療介護現場をどう構築するか

外国人に魅力ある医療介護現場をどう構築するか

外国人に魅力ある医療介護現場をどう構築するか

【市民公開講座】人手不足に対応するため制度を活用

 学会2日目の市民公開講座では、医療・介護分野における外国人労働者の問題をテーマに、4人の演者が講演した後、ディスカッションを行った。
 全日病の山本登常任理事は、2025年に介護職員が34万人不足するとの推計を示し、国内における人材確保が難しく、外国人人材が期待されている現状を説明した。一方で、日本以外にも高齢化の進展や人材不足に直面している国々は多数あり、「人材獲得競争の様相を呈しているのが現実」と指摘。「前例のない施策に踏み切る発想の転換が必要になる」と述べた。
 また、在留資格「介護」の道が開かれたことから、「その子孫を含め将来的な永住者として迎え入れるための社会的基盤の整備にも着手する必要がある」と強調した。必ずしも順風満帆ではない全日病の外国人材受入事業についても、課題の解決策を引続き考えていくとの姿勢を示した。
 さわらびグループのCEOである山本左近氏は、今年度から外国人の介護人材事業モデルとして同グループの介護福祉系専門学校で留学生の受入れを開始したことを説明。「質の高い介護福祉士を輩出することが目的」と述べ、介護留学生の奨学金事業や特定技能の教育、外国人向け国家試験対策講座の事業を展開する方針を示した。
 衆議院議員である全日病の安藤高夫副会長は、現行制度の課題を説明。特定技能(介護)について、特に期待が大きいと指摘した。
 EPA看護師候補者の国家試験不合格者の特定技能介護への移行については、「何とかなりそうな状況だ。厚生労働省も検討している」と述べた。
 医療法人偕行会の在宅医療事業部事業部長の城良治氏は、「グローバル介護士育成プログラム」の取組みを発表した。「自ら海外に行くことで現地の環境を体験し、学ぶ場を見て人々と触れ合い、最終的に介護の技術指導を実践する」と述べ、昨年からフィリピンとインドネシアで技術指導を実施していると説明した。外国人スタッフは職員1,586人のうち56人だが、2020年には全体の5.5%になると予測した。

言葉が優先か、ケアが優先か
 討議では、外国人人材の日本語能力が論点になった。座長の医療法人偕行会理事長の川原弘久氏は、「言葉を優先するか、ボディケアを優先するか。私はドライに割り切り、日本語は来てから覚えてもらえればいいと思っている」と問題提起した。
 山本登氏は「言葉がわからなくて一番困るのは同僚で、最低限のコミュニケーション能力は必要。N4ぎりぎりで来られたら現場が困る」と述べた。N4は、基本的な日本語を理解できるレベル。レベルはN1~N5まであり、数字が小さくなるほど難しい。
 山本左近氏も「職場だけでなく、地域で暮らすためにも、日本語でコミュニケーションできることは、とても大事だ」と述べた。
 安藤氏は、「国会議員の間でも二つに割れる。最近は、『まず来てもらって、後から語学はがんばればいい』という意見も多い。一方、看護師は医療安全の点からの考慮が必要。いずれにしろ大切なことは、現場のチームで教える仕組みをつくることだ」と述べた。

 

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    日本にきてくれる ... 山本左近(さわらび会統括本部長兼副理事長)

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