全日病ニュース

今こそ目指せ、介護医療院

【介護医療院協議会】介護医療院協議会議長　　土屋繁之

　介護医療院が創設され、１年半が過ぎた。令和１年6月30日における介護医療院開設数は223施設、14,444療養床と報告されている。内訳は介護医療院Ⅰ型が146施設、Ⅱ型が75施設であり、介護療養病床からの移行が最も多く91施設、9,594療養床、介護療養型老人保健施設からが56施設、2,215療養床、医療療養病床ⅠまたはⅡが43施設、1,433療養床となっている。この数字をどう評価するかはそれぞれの地域、医療機関によって違うであろう。しかし制度上廃止されている介護療養病床、経営・運営が厳しい経過措置型医療療養病床を持つ我々は移行施設を適切かつ迅速に決める必要がある。今年の当協議会企画は制度の狭間にある施設の目指す施設として介護医療院が持つ意味を実際に運用されている介護医療院の実態を提示して頂き検討した。
　まず厚生労働省老健局老人保健課長眞鍋馨氏に創設された介護医療院の経緯と意義、そして将来展望を含めてまとめて頂いた。地域医療構想が進むなか、地域包括ケアにおける在宅施設としての介護医療院は医学的管理がなされ、看取り・ターミネルケアにも適切な対応がなされる長期療養施設・生活施設として第7期、第8期医療計画においても推進事業と捉えられており、介護医療院への移行支援は今後も継続される予定にある。
　次いで転換型老健140床を一気に介護医療院へ移行し、今後も介護療養病床を介護医療院へ移行予定である医療法人社団和恵会湖東病院理事長猿原大和氏に決断に至ったいきさつ、また実際に開設してのご苦労をお話し頂いた。
　介護医療院へ入居し自分の生活空間でのんびりお過ごし頂くことは長期療養施設としては理想的である。しかし予想以上に医療度・介護度が高い方が多く、多職種にわたるマンパワーを確保することが難しく、今後そのマンパワーに見合う報酬が設定されかどうかは大きな課題となりそうである。
　次いで医療法人慈繁会土屋病院事務長の本郷俊之氏は99床という小規模病院で地域包括ケア病床、Ⅰ型医療療養病床を有するなか介護医療院を新設し、病床運営のなかで介護医療院が果たす役割を話して頂いた。地域包括ケア病床の在院日数、在宅復帰率を見据え、患者に適切な療養環境を選択するために細かい患者評価を医師、看護師、ケアマネージャーなど多職種で行っている。しかし思うように有効な病床稼働に繫がらない厳しさも提示頂いた。
　最後に医療法人弘生会本庄内科病院理事長・院長の本庄弘次氏に地域医療に密着した医療・介護を行うに当たって介護医療院のあるべき姿をお話し頂いた。医師と患者の信頼関係は常に同じ空間で育まれることが理想的であり、医療・介護と繋いできた患者の看取りを最後まで行える介護医療院は地域から信頼される施設になりうる可能性がある。さらに在宅にあり十分な介護サービスを受けることが難しい方がサルコペニアやフレイルに陥り寝たきり状態となることは少なくない。介護医療院では、手厚い看護・介護・リハビリテーションそして栄養管理ができるので、そのような在宅弱者を支援できる。我々が地域の人々に貢献できる施設として活用できるよう介護医療院を制度として充実させて頂きたいという本庄氏の熱い想いが伺われた。
　当協議会企画が開催された時間帯には「官民格差徹底討論‼」と題しての学会企画が同時開催されていた。苦戦が予想されたが、思いのほか聴衆に恵まれた。介護医療院という新たな施設の地域包括ケアシステムにおける役割とそのあり方に、多くの医療関係者が興味を持っていると思われた。
　介護医療院に関しては多くの議論があるが今こそ移行に向けて決断の時期であり、自院と地域を結ぶ究極の在宅施設となり得る介護医療院にじっくり取り組まれてはいかがでしょうか。ご参加頂いた多くの皆さまに心より感謝申し上げます。有難うございました。