全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2020年)第955回/2020年2月1日号支払側が基準値35%を主張、診療側は猛反発

支払側が基準値35%を主張、診療側は猛反発

支払側が基準値35%を主張、診療側は猛反発

【中医協総会】「重症度、医療・看護必要度」の見直し

 厚生労働省は1月15日の中医協総会(田辺国昭会長)に、2020年度診療報酬改定における「重症度、医療・看護必要度」の項目見直しを反映させた基準値の変化を示すシミュレーション結果を公表した。結果を踏まえ、支払側委員は急性期一般入院料1の「必要度Ⅰ」の基準値を「30%以上」から「35%以上」に引き上げることを提案。これに対し診療側は猛反発。全日病会長の猪口雄二委員は、「データでみて8割近くの病院が達成できなくなる数字だ。現実的な基準値を設定しないと現場の急性期医療が崩壊する」と訴えた。
 基準値を設定する材料となるのが、厚労省が同日示したシミュレーション結果だ(下表を参照)。まず、急性期一般入院料1の「重症度、医療・看護必要度Ⅰ」(以下、「必要度Ⅰ」)からみていく。
 調査対象病院の該当患者割合が低い病院から順番に並べ、10、25、50パーセンタイル値を出した。前回改定での公益裁定で決まった水準でもある25パーセンタイル値をみると、「必要度Ⅰ 」の場合、現状の項目の割合は33.5%、項目見直しの条件をすべて適用すると30.3%となった。その差は3.2ポイントで、項目見直しが、基準値を満たすのが厳しくなる方向に作用することがわかった。単純に考えると、基準値「30%以上」で、4分の1の病院が基準値を満たせなくなる水準だ。
 猪口委員は、前回改定時に29.8%だった25パーセントタイル値が今回33.5%まで上昇したことについても、「約1万床が転換し、病床稼働率も上がっている。急性期病院の努力の結果だ」と説明。さらなる基準値の引上げが与える影響の大きさを強調した。
 シミュレーションの条件とした項目見直しは多岐にわたる、中医協総会でほぼ合意が得られており、これらの条件は今回改定で実施される見込みだ。具体的には、◇基準②(B14またはB15に該当、かつA得点以上かつB得点3点以上)を除外(注射剤を除く)◇A項目で「免疫抑制剤の管理」を除外◇C項目で入院実施割合が90%以上の手術(2万点以上)と検査を追加◇C項目で実際の平均在院日数を踏まえ、評価対象日数を増やす。
 また、内科の技術を評価する観点では、「必要度Ⅱ」において、入院日に「救急医療管理加算1・2」「夜間休日救急搬送医学管理料」を算定した患者をA得点2点(5日間)として追加した。「必要度Ⅰ」では、A項目の「救急搬送後の入院」について、現行の「2日間」から「5日間」の評価に変更した。
 この中で、基準値に最も大きな影響を与えたと考えられるのが、基準② の除外だ。シミュレーションで基準②の除外のみ適用だと、必要度Ⅰの25パーセンタイル値の該当患者割合が26.6%まで落ちる。基準②は2020年度診療報酬改定で、認知症やせん妄の患者に労力がかかるとして、より評価することになった。
 しかし、中医協の議論で、「急性期医療の指標」としての妥当性や基準設定上の適切性が疑問視され、今回見直しの対象となった。ただ、基準②削除の影響は、特に規模の小さい急性期病院で影響が大きいと懸念され、B14とB15の項目は残すとともに、認知症とせん妄への対応は、別の診療報酬項目でも評価することになっている。

急性期入院料4は見直しの影響大
 次に、急性期一般入院料1の「必要度Ⅱ」をみると、25パーセントタイル値で現状の29.9%と、項目見直し適用の29.7%であまり違わない。他の入院料でも同様の傾向にある。「必要度Ⅰ」も「必要度Ⅱ」も項目見直し後は30%に近い数字になったが、データ収集や負担軽減の観点から、「必要度Ⅱ」に誘導する狙いがあり、基準値に差を設けることが必要との意見が出た。
 急性期一般入院料4は、項目見直しの影響が大きく出た。「必要度Ⅰ」の25パーセンタイル値を現状と項目見直し後で比べると、31.2%と22.9%であり、8.3ポイントもの差が出た。今回の項目見直しが、手術など外科的治療の医療がより評価される傾向にあり、急性期医療の実態の違いが、数字の差となって出たと考えられる。厚労省は、基準値について、入院料1~3と入院料4以下を同じ考えで設定することはできないとの考えを示している。
 「重症度、医療・看護必要度」の基準値は、前回改定でも診療側と支払側で意見が対立し、公益裁定となっている。今回も意見の隔たりが大きく、終盤まで結論が持ち越されそうだ。
 支払側委員は、急性期入院料1を減らし、入院料2、3へ誘導する目的を含め、「高い目標を設定すべき」(幸野庄司委員・健康保険組合連合会)として、「35%以上」を主張した。しかし、猪口委員は、「決められた数字を満たさないと入院料を算定できない基準値という考え方ではなく、目標値といった考え方を導入すべき」と主張した。

 

全日病ニュース2020年2月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 中医協総会> 定額負担求める大病院を200床以上に拡大

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20200101/news09.html

    2020年1月1日 ... 公益社団法人全日本病院協会(全日病):All Japan Hospital Association(AJHA) ·
    アクセス; | ログイン; | ... 中医協総会(田辺国昭会長)は12月11日、大病院受診時の
    定額負担やオンライン診療料等、機能強化加算など外来医療をテーマに議論を行った。
    紹介状なしの受診で初診は最低5千円の定額負担がかかる大病院を拡大することを
    了承した。機能強化加算 ... 全日本病院協会の猪口雄二委員は、「地方の地域医療
    支援病院には地域密着型の医療を提供している病院がある。救急搬送など定額 ...

  • [2] 加藤厚労相に2018年度診療報酬改定を答申|第911回/2018年2月15 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180215/news01.html

    2018年2月15日 ... 中医協総会(田辺国昭会長)は2月7日、2018年度診療報酬改定の内容を了承し、加藤
    勝信厚生労働大臣に答申した。今回の改定 ... 答申後の会見で中医協委員猪口雄二
    ・全日病会長は「急性期入院料の大幅な組み換えや、超高齢化社会の進展、若年層の
    減少を視点に置いた改定となった」と述べた。 入院基本料 ... 公益委員裁定によって
    決着がついたが、両者の言い分を踏まえ、「30%」という水準になった。

  • [3] 機能強化加算の趣旨を患者に説明|第952回/2019年11月15日号 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20191115/news02.html

    2019年11月15日 ... 中医協総会(田辺国昭会長)は10月30日、かかりつけ医機能などをテーマに議論した。
    初診料に加算できる機能強化 ... 全日病会長の猪口雄二委員は、「2018年度改定で
    基準が一般病床から許可病床になった。許可病床であることにより、 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。