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ホーム全日病ニュース(2020年)第955回/2020年2月1日号年内の議論を整理し、残された課題を整理

年内の議論を整理し、残された課題を整理

年内の議論を整理し、残された課題を整理

【厚労省・医師の働き方改革推進検討会】とりまとめに向け議論続ける

 厚生労働省の医師の働き方改革の推進に関する検討会(遠藤久夫座長)は12月26日、報告書のとりまとめに向けた前回までの議論を整理した。同検討会は、年内のとりまとめを目指していたが、医療団体から地域医療への懸念が示されていることから、関係者の納得を得るため、「丁寧な議論」(厚労省)を進める。同日は、厚労省がこれまでの合意事項と残された課題を示した。医師の働き方や労働時間の実態調査を改めて行う予定も示された。
 一方で、2024年度の時間外労働規制の施行までに、暫定特例水準の1,860時間を現状で超えている医師の労働時間を減らし、暫定特例水準の対象病院もできるだけ少なくするため、総合的な対策を早急に進める必要がある。法改正を伴う事項については、1月からの通常国会に法案を提出する意向を厚労省は示しており、国会日程をにらみながら、同検討会での合意形成を進める考えだ。
 同日の「これまでの議論のまとめ」では、合意事項と今後の課題が示された。法改正を伴う事項は、概ね了解が得られているが、追加的健康確保措置や医師労働時間短縮計画、評価機能の枠組みなどで、地域医療に与える影響の把握と対応を含め、詰めるべき事項は少なくない。「これまでの議論のまとめ」のポイントを確認していく。.

B水準とC水準の詳細示す
 暫定特例水準(B水準)と集中的技能向上水準(C水準)の対象病院の指定期間は3年になった。都道府県が指定するが、国も技術的助言を行う。
 B水準の指定要件は、
 ◇地域医療の観点で必須の機能を果たしている(後述)
 ◇年間960時間超えの36協定を締結している(都道府県医療審議会から意見聴取)
 ◇地域の医療提供体制との整合性がある(都道府県医療審議会に報告)
 ◇医師労働時間短縮計画を策定している(毎年、都道府県に提出)
 ◇評価機能による評価を受審する(3年に1回)
 ◇追加的健康確保措置の実施体制を整備している(都道府県が毎年、立入検査)
 ◇労働関係法令の重大かつ悪質な違反がない(過去1年以内に労働時間や賃金の支払いに関する労働法令の違反について送検・公表がない)
 をすべて満たす必要がある。
 「地域医療の観点で必須の機能」としては、①三次救急②二次救急かつ「年間救急車受入台数千台以上または年間での夜間・休日・時間外入院件数500件以上」かつ「医療計画における5疾病5事業」の役割を担う③在宅医療で特に積極的な役割を担う④公共性と不確実性が強く働くものとして、都道府県知事が地域医療の確保のために必要と認められる─が示されている。
 ④については、精神科や小児の救急が例示されており、今後具体的な要件を検討する。
 また、高度ながん治療や移植医療など極めて高度な手術を担う病院も対象となる。
 C -1水準は、「地域医療の観点で必須の機能を果たしている」ではなく、「都道府県知事の指定する臨床研修プログラムまたは日本専門医機構が認定する専門研修プログラム/カリキュラム」で研修を実施することが求められる。基幹型臨床研修病院は、協力型臨床研修病院の研修も、とりまとめて指定申請する。
 C-1水準は、「暫定特例水準」ではなく、恒久的な位置づけだが、「研修の効率化」が期待される。それは、単に労働時間を短くすることではなく、労働時間に対して最大の研修効果を上げることを目指すとともに、適正な労務管理を実施するとしている。「研修の効率化」を客観的に評価する仕組みを来年度の研究班で議論する。
 C-2水準は、厚生労働大臣の公示する分野の医師の育成が可能」である体制が求められる。新たな審査組織が、教育研修環境と高度特定技能育成計画の内容を確認する。学術団体に委託する審査組織の組織・体制は引続きの検討事項。運営費や手数料も2021年度までに検討する。

兼業医師の労働時間通算地域医療への影響も考慮
 追加的健康確保措置については、特に、複数医療機関に勤務する医師への取扱いが検討会で議論になった。労働時間は、他の労働者と同じ規則が適用され、「自己申告等」により副業・兼業先の労働時間を把握し、通算する。複数医療機関に勤務する医師への面接指導は、B・C水準対象医療機関など一つの医療機関が実施すればよいことになった。どの医療機関が実施するかは、ガイドラインで示される。
 また、「副業・兼業先の労働時間を把握し、通算することによる医師や医療機関、地域の医療提供体制への影響も考慮した対応が必要となる」ことも附記された。
 追加的健康確保措置における連続勤務時間制限・勤務間インターバル・代償休暇の運用については、詳細な資料が示された。面接指導や健診項目などは、研究班が今年度末までに検討し、ガイドラインを示すとしている。
 医師労働時間短縮計画は、策定対象医療機関に2024年度から義務化されるが、B・C水準候補医療機関は、2021年度から策定する。必須記載内容は、◇時間外・休日労働時間数の今後5年間の目標と実績◇労務管理の実施状況(追加的健康確保措置含む)◇マネジメント研修の実施─。医療機関の状況に応じて、意識改革/啓発やタスク・シェア/シフト、医師の業務の見直し、勤務環境改善を求める。記載内容などのガイドラインは、2020年度早期に公表される。
 医師労働時間短縮計画は2022年度以降、「評価機能」の新たな仕組みと組織により、評価される。厚労省は、評価者養成のための講習を2021年度から実施する。評価業務は1医療機関に対し、医療職1名・社会保険労務士1名の2名体制。評価の決定は、地域医療構想アドバイザーも参画した会議で決定する。2022年度にすべてのB・C水準候補医療機関に書面評価を実施。2023年度には、書面評価で評価が低かった医療機関に対し、訪問調査を行う。
 組織体制については、評価機能を担う法人を指定するとともに、地方にブロック単位の事務局機能を置く。中央は、講習業務などを担い、地方事務局が訪問評価を担う。評価業務の中立性を担保するため、第三者委員会を設置する。評価に当たっては、地域医療構想アドバイザーの意見をきく。今後、具体的な法人を念頭に置いた組織体制や実施体制を引続き検討する。評価基準などは、今年度の研究班の研究結果をもとに作成。組織の運営費とそれを賄うため、受審する病院が支払う手数料の設定も課題として残る。

 

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