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ホーム全日病ニュース(2020年)第955回/2020年2月1日号優先順位の高い医療職の業務に絞り議論進める

優先順位の高い医療職の業務に絞り議論進める

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【厚労省・タスク・シフト等推進検討会】法令改正が必要なものを整理

 厚生労働省の「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」(永井良三座長)は12月25日、医師から他業種へのタスク・シフト等を進めるための議論を進めた。厚労省は法律改正が必要な事項について、1月からの通常国会に法案を提出することを想定し、次回はさらに優先順位を絞った資料を提示し、とりまとめを急ぐ考えを示した。
 医師の労働時間短縮を目指すタスク・シフト等では、現行制度でも可能だが、それが明確でなく、現場で普及していないものと、法令改正が必要なものがある。現行制度で可能であるものは、今後内容を整理した上で、通知などで明確化し、普及を促すとしている。同日は、関係団体ヒアリングで提案のあった業務のうち、実現可能性が高く、法令改正が必要な業務を中心に議論した。
 厚労省が、実現可能性が高い業務を判断する3要件の該当状況を示す資料を提示した。

業種ごとに具体的な業務を例示
 3要件は、①原則として各資格法の資格の定義とそれに付随する行為の範囲内である②その職種が担っていた従来の業務の技術的基盤の上にある隣接業務である③教育カリキュラムや卒後研修などによって安全性を担保できる─である。これらを満たす業務は、技術的にも体制的にも困難が少なく、安全性も担保できるため、タスク・シフト等の実現可能性が高く、法令改正する優先順位が高いと考えられる。
 3要件をすべて満たす業務と、期待される労働時間短縮効果をみてみると、次のような業務がある。
 診療放射線技師は、省令事項として、「RI検査医薬品注入後の抜針および止血」(労働時間短縮効果・月1.5時間)、法律事項として、「RI核種の投与」(同・月3.5時間)、「病院または診療以外の場所における超音波検査」(効果は不明)などがある。
 なお、「X線検診車で胃がん検診ならびに乳がん検診の撮影についての包括指示での撮影」は、省令事項で安全性に関する要件に該当しないが、労働時間短縮効果では、月160時間であり、最も効果が大きい。ただ、医師がX線検診車に同乗しなくて済む時間がそのまま効果となっており、過重労働の勤務医の負担軽減という観点で、効果が最も大きいと判断されるわけではない。
 臨床検査技師は、省令事項として、「術中モニタリングに係る電極装着、検査装置の操作」(同・月1.9時間)、政令事項として、「救急現場における採血のための末梢動脈路の確保(ヘパリンロックを除く)」(同・月33.0時間)、「救急現場における採血のための抹消静脈路の確保後、ヘパリンロックをする行為」(同・月33.0時間)、「子宮頸がん検査のための細胞診用の検体採取」(同・月7.6時間)」、法律事項として、「造影超音波検査の超音波造影剤の投与(ソナゾイド等静脈から超音波造影剤を注入)」(同・月0.2時間)などがある。
 臨床工学技士は、政令事項として、「血液浄化装置の先端部(穿刺針)のバスキュラーアクセスへの穿刺および抜去」(同・月1.5時間~ 5.0時間)、法律事項として、「心・血管カテーテル治療時に身体への電気的負荷等をかける装置のスイッチを押下げする行為」(同・月10.4時間)、「人工呼吸器等の生命維持管理装置を装着している患者に対する輸液ポンプによる中心静脈カテーテル等からの薬剤投与」(同・月0.9時間)などがある。
 救急救命士については、「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」で検討中であり、そちらで取扱いを議論している。
 資料では、法律事項として、「(院内での)静脈路確保の実施」(同・月0.4時間)、「(院内での)縫合を除く創傷処置」(同・月2.2時間)、「(医療機関内で)救急救命処置の範囲に示される33項目の実施」(同・月33.0時間)、「(院内での)心肺蘇生」(同・月1.1時間)、「(院内での)医師による緊急処置の一部介助」(効果は不明)、「(院内での)一部の緊急薬剤の投与」(効果は不明)、「(院内での)病歴聴取、バイタルサイン測定、トリアージ」(同・月0.8時間)などがあることを示した。
 今後、さらに優先順位を絞る上で、委員からは「時間外労働が年間2千時間を超える医師の業務を減らすことを優先的に考えるべきだ」(裵英洙委員・ハイズ株式会社代表取締役)との意見が出た。
 また、臨床工学技士による「人工呼吸が施行されている患者に対する鎮静薬の投与量の調整」(同・月3.0時間)は、厚労省の資料では3要件のいずれにも該当しないが、埼玉県済生会川口総合病院副院長の根岸千晴委員は、「病院によっては実現可能」と強調した。
 全日病会長の猪口雄二委員も、現時点で3要件に該当しないものであっても、現場の状況を把握するなど、引続き検討し、「タスク・シフト等を進めるために、抑制的になるのではなく、積極的な議論を行うべきだ」と述べた。

 

全日病ニュース2020年2月1日号 HTML版

 

 

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    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/other/160205_1.pdf

    本手順書集にまとめた手順書はあくまで一例であり、これらを参考に、各医療現場
    ... そこで、本事業では、特定行為研修省令で定められた手順書の記載事項を踏まえて
    、統 ... 心静脈に挿入されているカテーテルを引き抜き、止血するとともに、全長.

  • [2] 届畠嵯邑 - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2018/181108_5.pdf

    2018年10月30日 ... 一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省. 令(
    平成30年厚生労働省令第93 ... 適用せず、なお従前のによ. ること。 1.微生物学的
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  • [3] 医療機関、衛生検査所等における検体検査に関する疑義解釈資料

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2018/181210_3.pdf

    2018年11月29日 ... の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令(平成 30年厚生労働省令. 第
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