全日病ニュース

受診時定額負担の拡大方針に多くの懸念示される

【厚労省・医療部会】夏の最終報告までに社保審医療部会・医療保険部会で議論

　社会保障審議会医療部会（永井良三部会長）は１月20日、政府の全世代型社会保障検討会議の中間報告を受けて、外来機能の明確化とかかりつけ医機能の強化について議論を開始した。中間報告が示した、200床以上の一般病院にまで紹介状なしの受診時定額負担を拡大する方向について、多数の委員が懸念を示した。
　全世代型社会保障検討会議は12月20日にまとめた中間報告で、医療提供体制の改革の方向を示している。そのうち、「外来機能の明確化」と「かかりつけ医機能の強化」について、同会議で最終報告に向けて検討するとともに、社会保障審議会等でも検討し、夏までに成案を得るとのスケジュールとなっている。
　これを受け厚生労働省は、外来機能の明確化とかかりつけ医機能の強化について、社会保障審議会医療部会と医療保険部会で議論する方針を示した。中間報告で示された、医療提供に関する他の項目は、他の会議体で議論を続ける。
　中間報告では、大病院と中小病院・診療所の外来における機能分化とかかりつけ医の普及を推進するため、他医療機関からの紹介のない患者の大病院外来受診時の定額負担の仕組みを大幅に拡充し、200床以上の一般病院にまで対象を広げる方向を示している。
　これについて、田中滋部会長代理は、「定額負担の拡大は、患者を大病院・中規模病院に行きにくくさせるもの。医療部会ではむしろかかりつけ医機能を強化するにはどうすべきかを議論すべき」と述べた。
　全日病副会長の織田正道参考人は、「200床の病院の多くは『中小病院』に入り、地域でかかりつけ医機能を果たしている病院も少なくない」と指摘。定額負担の対象病院は、病床数のみでなく、地域で果たしている機能を考慮すべきと主張した。
　日本病院会会長の相澤孝夫委員は、全世代型社会保障検討会議が患者集中を防ぐべきとした「大病院」の定義は明確ではないと問題視し、「日本の病院機能をきちんと議論したうえで、外来機能を議論すべき」と要望した。
　国立病院機構理事長の楠岡英雄委員は、外来とかかりつけ医の機能をデータに基づいて議論し、定額負担の病院を拡大した際の患者の受療行動のシミュレーションを行うよう求めた。
　日本赤十字社医療センターの木戸道子委員は、現行の選定療養の制度で、定額負担をしてでも病院に通い続けたいと言う患者がいることから、「医療提供側の都合ではなく、患者がメリットを感じられるように外来機能を明確化すべき」と主張した。