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ホーム全日病ニュース(2020年)第957回/2020年2月15日号急性期一般入院料1の「必要度Ⅰ」の基準値は31%以上に

急性期一般入院料1の「必要度Ⅰ」の基準値は31%以上に

急性期一般入院料1の「必要度Ⅰ」の基準値は31%以上に

【中医協総会】診療・支払側の意見の隔たり大きく公益裁定

 中医協総会(田辺国昭会長)は1月29日、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度Ⅰ・Ⅱ」(以下、「必要度Ⅰ・Ⅱ」)の基準値をめぐり、診療側と支払側の主張の隔たりが大きいことから、公益裁定により、項目見直し後の基準値を決定した。急性期一般入院料1の「必要度Ⅰ」の基準値は「31%以上」となった。支払側は「35%以上」、診療側は「27%以上または28%以上」を主張し、その中間を取る形となった。
 現行の「必要度Ⅰ」の基準値は「30%以上」。対象病棟の入院患者に対し毎日測定し、直近3カ月の該当患者の平均を算出している。今回改定では、該当患者の評価項目・判定基準を大きく見直すため、基準値の変化だけをみても、厳しくなるのか緩くなるのかはわからない。厚生労働省は前回改定時と同様、シミュレーションでパーセンタイル値による患者分布を示し、参考とした。例えば、25パーセンタイル値をみると、現行の評価項目・判定基準では33.5%だが、見直し後は30.3%に下がる。項目見直しにより、基準値を満たすのが難しい方向に働くことがわかった。単純に考えると、現行の「30%以上」のままだと、4分の1の病棟が基準を満たせなくなる水準だ。
 このような厳しい評価項目・判定基準の見直しであるにもかかわらず、支払側は、「高い球を投げているつもりはない」(幸野庄司委員・健康保険組合連合会理事)とした上で、「35%以上」を主張した。幸野委員は、「7対1看護配置の急性期一般入院料1は急性期医療の象徴にみえる。しかし、前回改定は患者の状態像に見合った医療資源投入量にするために、10対1の入院料2~7を設けた。現状では移行は進んでいない。入院料2、3への移行を促し、メリハリのある基準値とするため、35%以上とすべきだ」と述べた。
 これに対し、日本医師会の松本吉郎委員は、「前回改定後7カ月で7対1病床は約1万床減った。改定の影響だけでなく、人口構造の変化により、自然に急性期病床は減っており、診療報酬が先走って厳格化するのは、地域にとって悪影響が大きい。最近の改定では毎回、『必要度』の項目見直しや基準値の引上げを行っており、朝令暮改で現場は混乱している。項目見直しによる患者分布をみれば、『35%以上』は75パーセンタイル値を超える水準だ」と述べ、反対した。
 その上で、全日病会長の猪口雄二委員が、「基準値の変更が病院に与える影響は極めて大きく、急性期一般入院料1は『27%以上または28%以上』を主張する。項目見直しの影響が大きい急性期一般入院料4は、『18%以上または19%以上』とし、200床未満の病院に十分配慮すべき。『必要度Ⅱ』は『必要度Ⅰ』より2%程度低い基準値とする必要がある」と述べた。また、「入院基本料の変更は病院にとって死活問題。効率的で安定的な運営を行うためにも、激変は避けるべきだ」と訴えた。
 しかし、議論は平行線をたどり、歩み寄りがなかったため、公益裁定となった。公益裁定により、「入院料Ⅰ」の基準値は「31%以上」となった(下表参照)。田辺会長は、「シミュレーションによると、項目見直しの影響は、特に急性期一般入院料4で大きく、基準値を現行の水準とした場合、相当数の病院が施設基準を満たせなくなることが想定される」と指摘。「急性期一般入院料4を22%とし、そこから一定の間隔をおいて急性期一般入院料1~3を設定し、入院料1は31%とする。また、『必要度Ⅱ』の基準値については、病院の実態や、『必要度Ⅱ』の活用をさらに推進していく観点も踏まえ、『必要度Ⅰ』の基準値よりも低くなるよう一定の差を設ける」と説明した。
 許可病床数200床未満の病院に対しては、前回と同様、経過措置が必要としている。

評価項目・判定基準を大きく見直し基準②廃止は新加算で一定程度対応
 今回、評価項目・判定基準を大きく見直すことになった。まず、判定基準において、いわゆる基準②(B14「診療・療養上の指示が通じる」またはB15「危険行動」に該当する患者であって、A得点1点以上かつB得点3点以上)を廃止する。基準②は前回改定で、認知症やせん妄の患者に手間がかかることを評価したもの。しかし、急性期医療としての指標の妥当性と基準としての適切性が疑問視され、議論により、廃止されることになった。ただ、B14とB15の項目自体は残るほか、別途、認知症とせん妄の評価を手厚くする。
 認知症については、新たに認知症ケア加算2を設け、3段階の評価体系となる。加算2では、専任の常勤医師が参加する認知症ケアチームの設置は求めず、認知症看護の研修を受けた専任の常勤看護師によるケアの把握などを要件とする。点数は加算1が160点、加算2が100点、加算3が40点(14日以内)と、それぞれ見直した。せん妄については、せん妄ハイリスク患者ケア加算(入院中1回100点)を新設する。入院早期にせん妄のリスク要因をスクリーニングして、ハイリスク患者に対し非薬物療法を中心とした、せん妄対策を行うことを新たに評価する。
 基準②の廃止以外では、◇A項目から「免疫抑制剤の管理」を除外(注射剤を除く)◇C項目に、入院実施割合が90%以上の手術(2万点以上のものに限る)および検査を追加◇C項目の評価対象日数を拡大─を行うことになっている。
 また、「必要度Ⅰ」のA項目「救急搬送後の入院」は、評価期間を入院後5日間に見直す。「必要度Ⅱ」は、入院日に救急医療管理加算1・2または夜間休日救急搬送医学管理料を算定する患者をA得点2点(5日間)の対象とする。救急医療の評価は、手術など外科系の医療に対する評価が目立つ中で、内科系の技術を評価するために導入するもの。それでも、基準②の廃止の影響とともに、病院が提供する急性期医療の内容によって、今回の評価項目・判定基準の影響が偏る可能性がある。
 そのほか、「重症度、医療・看護必要度」をめぐる見直しでは、許可病床数400床以上の病院は「必要度Ⅱ」を用いることを要件とすることや、B項目の評価方法の組換えにより、「根拠となる記録」を不要とすることなどの見直しが実施される。

 

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  • [1] 支払側が基準値35%を主張、診療側は猛反発|第955回/2020年2月 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20200201/news03.html

    2020年2月1日 ... 厚生労働省は1月15日の中医協総会(田辺国昭会長)に、2020年度診療報酬改定
    における「重症度、医療・看護必要 ... 前回改定での公益裁定で決まった水準でもある25
    パーセンタイル値をみると、「必要度Ⅰ 」の場合、現状の項目の割合 ... 支払側委員は、
    急性期入院料1を減らし、入院料2、3へ誘導する目的を含め、「高い目標を設定すべき」
    幸野庄司委員・健康保険組合連合会)として、「35%以上」を主張した。

  • [2] 2020.2.1 No.956 - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200201.pdf

    2020年2月1日 ... 中医協総会(田辺国昭会長)は1月 ... 健康保険組合連合会の幸野庄司委員が、 ...
    全日病会長の. 猪口雄二委員は、「データでみて8割. 近くの病院が達成できなくなる
    数字だ。 現実的な基準値を設定 ... パーセンタイル値をみると、「必要度.

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