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ホーム全日病ニュース(2020年)第957回/2020年2月15日号地域医療体制確保加算を新設するなど医師の働き方改革に手厚く対応

地域医療体制確保加算を新設するなど医師の働き方改革に手厚く対応

地域医療体制確保加算を新設するなど医師の働き方改革に手厚く対応

【2020年度診療報酬改定】主要な個別改定項目を概観する

 中医協総会(田辺国昭会長)は2月7日、2020年度診療報酬改定を加藤勝信厚生労働大臣に答申した。今後、告示・通知の発出など行政手続きが進む予定だ。以下で、入院医療の項目を中心に、主要な改定内容を概観していく。

今回の重要課題は働き方改革対応
 今回改定の目玉となったのが、医師の働き方改革への対応だ。2024年度から医師に対する時間外労働規制が適用される。時間外労働の上限は年間960時間以内。ただし、追加的健康確保措置を実施することなどを条件に暫定特例水準(年間1,860時間以内)も認められる。直接の対応関係ではないが、この暫定特例水準を適用する病院を想定し、改定率の別枠で0.08%分(公費126億円)をあてるのが、「地域医療体制確保加算」(入院初日520点)だ。
 年間2,000件の救急搬送の実績がある病院が対象で、勤務医負担軽減の体制を求める。責任者を指名し、委員会を設置。勤務医負担軽減等の計画で、以下の事項の記載を求める。◇連続当直を行わない勤務体制◇勤務間インターバル◇交替勤務制・複数主治医制─など。時間外労働規制の暫定特例水準の病院が作成する医師労働時間短縮計画が策定されれば、一致させる。
 一方、暫定特例水準で「地域医療体制加算」の要件を満たせない病院は、2020年度予算で増額する医療介護総合確保基金で支援するとの考えを厚生労働省は示している。
 1月31日の中医協総会で、日本医師会の松本吉郎委員が、「年間2,000件以上の救急搬送だと公立・公的病院が多い。要件を満たさない病院は、医療介護総合確保基金を使えるというが、基金は都道府県によるばらつきがあり、未執行額も多い」と指摘した。これに対し、厚労省は「来年度は、地方負担分について地方交付税を措置するので、未執行額は減ると考える。客観的な要件を設定し、民間を含め対応できるようにする」と説明した。
 現状で長時間労働の勤務医が働いているものの、2024年度までにはすべての医師が年間960時間以内を満たすことを目指す病院などを想定し、今回手厚く対応したのが、主にタスクシフト等を評価した「医師事務作業補助体制加算」や看護職員・看護補助者の配置に関する加算だ。多くの病院がこれらの加算を算定し、勤務医の負担軽減が進むことを目指す。
 また、麻酔科領域では、適切な研修(特定行為研修)を修了した看護師が麻酔の一部の行為を実施することを、「麻酔管理料(Ⅱ)」で評価する。「病棟薬剤業務実施加算」は、ハイケアユニット入院医療管理料の対象病棟を広げた上で、評価を引き上げている。
 医師などの常勤配置や専従要件は緩和する。診療報酬に関わる会議や研修、記録、事務も効率化・合理化し、負担軽減を図るなど、前回改定に引き続き幅広く見直した。例えば、カンファレンスは対面でなくても、ICTの活用を認める。

地ケア病棟は偏った使い方を適正化
 2018年度で体系を再編成した入院料は、患者の病態に見合った医療資源投入が行われることを目指した設定を推し進める方向で手直しを行った。その中で、地域包括ケア病棟入院料等に対しては、広範な見直しが実施される。
 まずは、専らポストアキュートの機能で地域包括ケア病棟を活用している大病院への適正化がある。来年度から許可病床数が400床以上の病院は、地域包括ケア病棟入院料を届け出られないようになる。すでに届け出ている400床以上の病院では、同一病院の一般病棟から転棟した患者が6割以上の場合は、入院料を1割減額する。
 DPC対象病院が地域包括ケア病棟を持っている場合に、DPC /PDPSの入院期間がⅠからⅡに移る段階で、多くの診断群分類で点数が地域包括ケア病棟の方が高くなるために、転棟時期が歪められてしまう問題に対しては、対策を講じる。具体的には、同一病院でDPC対象病院から地域包括ケア病棟に転棟した場合は、診断群分類点数表に定められた入院日Ⅱまでの間、診断群分類点数表で算定する。
 地域包括ケアの実績に関する施設基準も各要件を見直す。
 「地域包括ケア病棟入院料1」の場合、入院患者に占める自宅等からの割合を「1割以上」から「1割5分以上」に引き上げる。自宅等からの緊急患者の受入人数は3カ月で「3人以上」を「6人以上」に引き上げる。訪問看護ステーションの基準は療養費の算定を3カ月で「500回」から「300回」に引き下げ、病院と「同一の敷地内」から「併設」に広げる。
 また、入退院支援と地域連携業務を担う部署の設置が要件となった。リハビリの実施割合が低いことに対しては、患者の入棟時に測定したADLスコアの結果等を参考にリハビリの必要性を判断することを求める。
 回復期リハビリテーション病棟入院料では、2018年度改定で導入したFIM(日常生活機能評価または機能的自立度評価法)によるアウトカム指標であるリハビリの改善度の実績指数は、現場のFIMの実態をふまえ、引き上げる。入院料1は「37」を「40」、入院料3は「30」を「35」とする。
 療養病棟入院基本料において、1割減算の経過措置(看護配置20対1を満たせない等)は延長した上で、減算措置は10%から15%に拡大する。看護配置25対1を満たせない2割減算の経過措置は来年度から廃止する。
 漫然としたカテーテルの留置を行っている療養病棟が少なくないと指摘された中心静脈栄養は、感染症の発生状況を把握することや患者・家族への情報提供を要件とする。同様の問題が指摘されていた尿道カテーテルに対しては、排尿ケアチームの設置などを求める「排尿自立支援加算」(週1回200点)を新設し、現行の排尿自立指導料は外来排尿自立指導料に変更するなど、排尿ケアの充実を目指す。
 紹介状なしで大病院を受診した場合の定額負担は、現在は、特定機能病院と400床以上の地域医療支援病院だが、200床以上の地域医療支援病院に拡大する。
 「データ提出加算」は、「データ提出加算」が要件となる入院料を、許可病床200床未満の回復期リハビリテーション病棟入院料5・6と療養病棟入院基本料を算定する病棟にまで拡大する。一定の経過措置は設ける。「提出データ評価加算」は、許可病床数200床未満の病院に限り算定可能とする。未コード化傷病名の割合の基準は引き上げ、厳格化する。

救急医療管理加算の評価を引上げ
 「救急医療管理加算」は、「1」を900点から950点、「2」を300点から350点に引き上げる。「2」において、算定対象となる状態に、新たに「コ」(その他の重症な状態)を設ける。
 また、今後、救急医療管理加算を大きく見直す可能性を含め、算定患者の実態把握を行うため、以下について診療報酬明細書への摘要欄への記載を求める。①入院時にア~コまでのどの状態に該当するか②今後示す重症度に係る指標による入院時の測定結果③入院後3日以内に実施した検査、画像診断、処置または手術の主要なもの─。
 「超急性期脳卒中加算」は、学会の指針の改訂や安全性等の向上を踏まえ、要件を緩和する。一方、点数は入院初日1万2,000点から1万800点に引き下げる。要件緩和では、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師の常時配置を削除する。「脳血管造影」の体制を「一般血液検査および凝固学検査並びに心電図検査」とする。
 「入院時支援加算」(入院中1回200点)は、病院職員との情報共有や患者・家族への説明などを現行の項目をすべて行った場合の加算を「1」とし、従来の要件の加算を「2」とする。「1」の点数は230点になった。

機能強化加算は院内掲示の項目増
 2018年度改定で導入し、支払側が、患者の納得が得られない算定があるとして、見直しを強く求めていた「機能強化加算」は、一定の見直しを行う。「機能強化加算」は、かかりつけ医機能を評価する診療報酬を届け出ている医療機関が、専門医療機関への受診の要否の判断を含め、初診時の診療機能を評価したもので、地域包括診療加算・診療料などを届け出ている病院が算定できる。
 支払側は、「機能強化加算」の趣旨を書面で患者に説明することを提案していたが、診療側は「様々な加算がある中で、機能強化加算だけを説明するのは不合理」と反対していた。
 その結果、「機能強化加算」の説明は求めず、地域におけるかかりつけ医機能として掲示する事項を追加することになった。医療機能情報提供制度を利用して、かかりつけ医機能を検索できることも伝える。掲示内容は、書面にして患者が持ち帰れるよう医療機関内の見えやすい場所に置き、患者から求めがあれば、交付することを要件に加える。
 昨年1月から根本匠厚生労働大臣の決断で凍結されていた妊婦加算は廃止となり、代わりに「診療情報提供料(Ⅲ)」が新設された。妊婦に限らず、紹介先の医療機関が紹介元に文書で診療情報を提供した場合を評価する。
 対象患者として、①地域包括診療加算・診療料、小児かかりつけ診療料、在宅時医学総合管理料等を届け出ている医療機関からの紹介患者②産科・産婦人科からの紹介患者③別の医療機関から地域包括診療加算・診療料などを届け出ている医療機関への紹介患者─をあげた。
 依存症に対する治療の評価では、「依存症集団療法」において、ギャンブル依存症を新たに加える。「ニコチン依存症管理料」は2回目から4回目に情報通信機器を用いた診療でも算定できるようにする。また、加熱式たばこの喫煙者も対象となる。

 

全日病ニュース2020年2月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 診療報酬算定事務の効率化・合理化で対応方針示す - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/171015.pdf

    2017年12月13日 ... 会(田辺国昭会長)に、診療報酬の算. 定における事務の効率化・ ... 全日病会長の猪口
    雄二委員は、. 「最近のレセコンは漢字 ... 発出することを求めた。 医師の働き方規制
    による ... 厚労省は、地域枠医師の別枠は. 地域の状況に応じ、慎重に ...

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2018年12月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2018/181215.pdf

    2018年12月15日 ... 地域枠での選抜では、「別枠方式」と. 「手挙げ方式」がある。「別枠方式」は、. 一般枠と
    別枠で選抜する方式で、一. 般枠より前に入試を ... 田辺国昭会長)に、今年9月分の
    医. 薬品価格調査と特定 ... を発出するなど地域における医療体制.

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2017年3月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170301.pdf

    2017年3月19日 ... 中医協(田辺国昭会長)は2月8日. に総会を開き、次期診療報酬改定に向 ... かに通知
    発出する」と明記している。 しかし厚労省は、「初診料」は遠隔診療 ... は、医師
    については別枠で検討するよ. う求める考えだ。 現行の労働基準法は1日8 ...

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