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ホーム全日病ニュース(2020年)第958回/2020年3月1日号2020年度改定の答申受け、日医・四病協が会見

2020年度改定の答申受け、日医・四病協が会見

2020年度改定の答申受け、日医・四病協が会見

【診療報酬改定】猪口会長「効率的な病院運営に向け一定の対応図られる」

 中医協(田辺国昭会長)は2月7日に総会を開き、前号既報のとおり、2020年度診療報酬改定を加藤勝信厚生労働大臣に答申した。答申を受け、厚生労働省は4月の実施に向け、3月上旬に告示・通知等を発出するべく準備を進めている。今号では、2月7日の中医協総会と、同日行われた日本医師会・四病院団体協議会、支払側委員の会見の模様を伝える。
 中医協は2月7日、答申内容を了承。田辺会長が小島敏文厚生労働大臣政務官に答申書を手渡した。小島厚労政務官は、「2020年度改定は、医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進が重点課題となった。医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進や効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上も図った。20項目の附帯意見についても、真摯に対応する。今後とも国民皆保険を堅持し、質が高く効率的な医療提供体制に向けて、検討してほしい」と述べた。
 答申に際し、診療側と支払側がそれぞれ総括的な発言を行った。
 診療側を代表し、日本医師会常任理事の松本吉郎委員は、「医師等の働き方改革に対しては、診療報酬の0.08%分の特例的な対応と医療介護総合確保基金の増額があり、評価している。基金の取扱いでは、民間医療機関を含め、地域医療で特別な役割を果たしている医療機関に、確実に支援が行われるよう求める。医療従事者に対する負担軽減策は引き続き検討していく必要がある」と強調した。
 入院医療に関しては、「地域包括ケア病棟の見直しで、大病院とそれ以外の病院に鮮明な形で線が引かれるなど、大病院には急性期医療をしっかりとやってもらうというメッセージが込められている」と指摘。さらに、政府の全世代型社会保障検討会議の中間報告を念頭に、「今後、外来医療の分化が議論されるが、かかりつけ医機能の評価をあわせて議論していくべきだ」と述べた。
 支払側を代表し、健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員は、医師等の働き方改革や医療機能の分化・強化、連携の推進に幅広く対応したことを踏まえ、「全体として、一歩前進する改定になった」と評価した。一方で、2018年度改定で導入した初診料の加算である「機能強化加算」の見直しは「半歩前進」と述べ、加算の趣旨を患者に伝えるなど当初の意見が反映されなかったことに不満をにじませた。
 また、医師等の働き方改革への対応で新設した「地域医療体制確保加算」など勤務医の負担を軽減する計画の策定が求められる診療報酬項目に対しては、「労働時間短縮のアウトカムを含め、計画の進捗を検証する」ことを今後の課題とした。

「うまく財源を割り振った」と評価
 日医・四病協の会見では、全日病の猪口雄二会長が、中医協委員としての立場を踏まえ、改定内容の評価を行った。本体改定率がプラス0.55%と2018年度改定と同水準だった今回改定について、「全体として、うまく財源が割り振られたのではないか」と述べた。
 医師等の働き方改革への対応では、2024年度の医師の時間外労働規制の施行を見据えた対応だけでなく、人口減少が進み、働き手不足が深刻になる中で、看護師や薬剤師の配置を評価する診療報酬項目の人員配置基準の緩和などが幅広く実施されたことを、あわせて評価した。「まだまだ動いてみなければわからない部分も多いが、医療の質を担保しつつ、各病院がそれぞれ工夫して効率的な運営を考えられる体制が一定程度できた」と述べた。
 入院医療に関しては、地域包括ケア病棟の見直しに言及。「考え方は整理されてきたと思う。だが、大病院の地域包括ケア病棟の取扱いについて、今回の見直しでよかったのかは今後検証する必要がある」と述べた。その上で、「高齢者の生活を支える地域密着型の病院が担うべきで、中核病院ではない。ポストアキュートだけの役割だと回復期リハビリテーション病棟と何が違うんだという話になる。地域密着型病院がある程度の救急医療も担い、地域で完結できる医療を目指すことが望ましい」と、本来的な役割を強調した。

都会の病院で救急の取り合いを懸念
 日本医師会の横倉義武会長は、かかりつけ医機能の推進として、「地域包括診療加算」に、複数の医療機関の連携で24時間対応を行うことを認める「時間外対応加算3」の届出を施設基準に加えたことを評価した。小児かかりつけ診療料の算定対象を「3歳未満」から「6歳未満」に拡大したこともあげた。妊婦加算を廃止し、妊婦に限らず診療情報の提供を評価する「診療情報提供料(Ⅲ)」を新設したことも今回改定の成果とした。
 急性期一般入院料1の「重症度、医療・看護必要度Ⅰ」の基準値が「30%以上」から「31%以上」になったことには、「厳しい水準」と述べた。「改定のたびに評価項目・判定基準が変わり、現場は苦慮している。どの入院料を選択しても、病院が安定して経営できる診療報酬が必要だ」と訴えた。
 日本病院会の相澤孝夫会長は、今回の医師等の働き方改革への対応が、「地域の救急医療で大きな役割を果たしている病院の医療の継続に役立つことを願う」と述べた。全世代型社会保障検討会議の中間報告が、200床以上の一般病院にまで受診時定額負担を拡大することを盛り込んだことも踏まえ、「全体を見渡して、病院の機能分化を考える視点が強まっていると感じる」と述べ、改革の方向性に警戒感を示した。
 日本精神科病院協会の山崎學会長は、医療費の財源確保をめぐり、「薬価財源だけを充てる習慣がついてしまった。財政中立でこちらを減らして、あちらを増やすというやり方が続いている。新規の財源を充てるべきだ」と訴えた。また、介護報酬の処遇改善加算が手当てされたことで、「医療から介護に介護人材が流出している」と危機感を表明。「介護保険で補てんするなら、医療保険でも補てんするべき」と主張した。
 入院時食事療養費が「人件費や委託費が高騰しているにもかかわらず、25年間据え置かれ、食費にかかるコストが病院経営を圧迫している」ことも指摘し、次期改定での引上げを求めた。
 日本医療法人協会の加納繁照会長は、年間2千件以上の救急搬送を要件に新設された「地域医療体制確保加算」などを念頭に、救急医療を担う病院が競合する大都市で、「病院間で救急の取り合い」が起きることに懸念を示した。「救急車は自治体が運営しており、中核的な救急医療の多くを自治体病院が担っている」と不安も示した。
 二次救急に対しては、夜間休日救急搬送医学管理料の救急搬送看護体制加算の見直しなどをあげ、一定の配慮が行われたことを評価した。「超高齢社会で高齢者の二次救急を担う病院の役割が大きくなっている。脳卒中や心不全、肺炎、骨折が代表的で、特に都会では、民間主体でできると思う」と主張し、救急医療の体制が確保できる診療報酬の必要性を強調した。

看護必要度は実質「4%」の厳格化
 支払側委員の会見では、健保連の幸野理事が、急性期一般入院料1の「重症度、医療・看護必要度Ⅰ」の基準値が「31%以上」になったことについて、「わずか『1%』の引上げだが、評価項目・判定基準を、基準値が下振れする方向で見直しているので、実質的には「4%程度の厳格化だ」と指摘。「今後、病床転換が進むことを期待する」と述べた。

 

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